第3話 ハルくん
誕生日の前日。
今年八歳になろうとしている小学生のハルとその弟君が
ほんのりお皿に残った野菜に真剣な表情を向けていた。
「ヒロ。ちゃんと食べなきゃダメ。 」
「でも、おなかにいれたくないんだもん。もう食べられない。 」
「これはお母さんが山盛りで作ってくれたんだよ。
よく観察して、それから“かんじゅ”して食べないとだめ。 」
「もう、おなかにいれられない。。。 」
台所で調理器具を洗い物を終え、
2人の会話を聞きながら食卓の席に座りながらお母さんが会話に加わる。
「んー・・それは、お母さんが、一生懸命作ったから、と言いたいのかな? 」
「そう!それ!ほら、ヒロ、一生懸命なんだよ、お母さん 」
「あー・・・言う順番でずいぶん違う雰囲気だけど・・・観察するの?
お母さんの作ったおかず。観察より食べて欲しいんだけど。
「食べてお母さんに観察するの! 」
「あぁ・・・それは感謝。かんしゃ だね。 」
「あ。そうか。‥ほら、ヒロ。感謝するの! ちゃんと食べて。ね」
「あと、もう一つの かんじゅ ってどういう意味かな」
「かんじゅなんていってないよ 」
「感謝して、それからかんじゅして食べるって…」
「言ってない。」
「・・・・・あ、そう・・
お母さん聞き違えちゃったかなぁ。」
「お母さん。」
「ん?」
「ありがと 。」
「あ。どうも。 」
お箸をにぎりながら、ハルくんと母の会話をじっときいていた弟くんが、
母に向き直りながらいつもと同じ真剣な眼差しを向ける。
「おかあさん。」
「ん? なぁに?ヒロたん。」
「かんしゃ って、何? 」
「・・・。」
「かんしゃ って……何?」
「……全部食べてくださいね。」
「はーい。 」
満足げにうなずくハルくん。
「お母さん。」
「ん?なーに?ハル。」
「大好き。」
「あ、ありがとう。」
自他共に、強く強く認めるマザコンのハルくんは、
家でも、外出先でも、学校で友達の前でも、先生の前でも
変わらず会話の締めは母への愛情表現でいっぱいだ。
母は思う。
家族愛の育て方………どこで間違えたかなぁ……?
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