第7話 学校の怪談の正体はだいたい利害関係とか背景とかがあるんじゃね?

 とりあえず今、俺はかなりのピンチにいる。最初からクライマックスである。どうしてこうなったのだろうね……


 〜(話は朝に巻きもどる……)〜


 いつも通り、俺は朝起きて自分の顔を見た。女の子になってた訳でもないし、代わり映えもしないけど相も変わらず女の子になってるらしい。夢ではないようだ。かなしい。

 朝起きて、飯食って着替える。お袋がどこから仕入れて来たのかセーラー服を準備して待ってたけど、ガン無視して学ランに身を包む。サラシを巻いてるので学ランは長ランに変形させたい気持ちでいっぱいだ。ジョジョ見てたらそういう気持ちになるわ。長ラン、カッケェよな〜


「んじゃ、いってきます。」

「いってらっしゃーい!」


……………………


 つーわけで学校に来たので、仙石の元に向かう。朝はだいたい読書ラノベSNSTwitter創作活動をしてるのでアイツは模範的陰キャである。陽キャはイヤホン無しで音楽聴いたり大声で笑ってたりする。マジで喧騒って感じ。


「アイツが女の子になったって本当!?嘘じゃないの!?」


 ってあれ?仙石がなんかキツそうな女子に話しかけられてるじゃん、珍しいな。


「本当だよ。残念ながら……ね、っとご本人様の登場だな。」

「朝から何の話だ?」

「あ、アンタには関係ないわよ!」


 キツそうな女子ってあー、彩璃織音いろりおとねか……俺の幼なじみで幼稚園から小学校低学年の頃は仲良く遊んでたりしたんだけど、クラスが別れたりしたらなんか俺に対する当たりがキツくなったりして今じゃあまり仲良くない感じ、嫌われてんじゃないかな。織音って真面目な奴だし。スラッとした体型でポニテが似合う美少女なんだけど、キツい顔しかしてないから怖い。親同士は相変らず仲良くしてるっぽいけどな。


「織音ちゃんがお前のこと気にしてたっぽいぞ。」

「あ?なんでまた?」

「昨日野球部が遠征だったせいでマネージャーとして休みだったろ?それで。」

「別にアンタの事気になってたわけじゃないわよ!ウチの前の席のダメな阿呆がどうなったのかな〜って思って話を聞いてただけよ!」

「それって気になってたと言えるのでは????そして、その前のダメな阿呆が俺なんだが????これで満足????」

「うっさい!」

「うげ……っ!」


 織音は俺に腹パンをかますと小走りで去っていく。目尻が少し光ってたように見えたけど、泣きたいのは俺の方。クリーンヒットで吐きそう。なんなんだよ。意味わからんわ……やれやれ。


「んで、絵の件どうなった?」

「あーあ、……何とかなったわ、ほいこれ。……あと正直お前どうかと思うぞ。」

「何の話だ?」

「べつに〜、とりあえず見ろよ。かなり見た目通りでいい感じだと思うぞ。」


 んー?なるほど、これは……めっちゃ可愛いな、美少女じゃん。泣きぼくろが良い感じ、あー!これが俺なのバグでしょ可愛すぎる。俺が認識出来ない男の姿に見えるのマジで悔やまれるわ〜ちゃんとTSしたかったわ……


「これが俺……信じらんねぇや……」

「まぁそうだろうなぁ……とりま強く生きて?」


 はぁー、なんか美少女すぎてちょっとショックだわ、席に戻るか……

 仙石に礼を伝えると席に戻る。不機嫌そうにこっちを睨む織音にビビりながらラノベを読む。なんで怒ってるんだろ……泣きそうにも見えるけど……乙女心織音心はわかんねーや。背中にビシビシ刺さる視線に辛くなりながら本に没頭することにする。


 ……………………


 んー、気づいたら授業中だけどなんでだ?あー、ラノベ読んでたらもう授業始まってたのか、草

 うん、草じゃないな。国語だから先生、特になんも言ってこねんだよな……休み時間吹き飛ばしちまったわ。んー、朝からトイレ行ってないからちょっと催してるかも?まぁ我慢出来るか……


 ……………………


 ふー、授業おわ〜、とりあえずトイレ行っちゃいますかぁ〜

仙石を伝統芸能連れションに誘おうとして気づく、俺はどっちのトイレに行けばいいんだ?まぁ、男として普通に男子トイレ行くか……

 仙石には振られたトイレ別に行きたくないらしいので1人でトイレに行くと男子トイレのドアを開ける。

うわ、みんなめっちゃ見てくるやん、ガン見じゃん見世物じゃねぇんだぞ。なんか死ぬほど居心地悪いわ。やっぱ無理かぁ……

さっき見た絵が頭にぎる。あの美少女が男子トイレに来たら見るわな。しゃーねーし、女子トイレ……いや……入りたくねぇ……でも漏らすよりはマシか。

しぶしぶ女子トイレのドアを開けると個室は埋まってた。マジ?女子トイレっていつも混んでるん?んー……もうすぐ授業で時間無いし戻るしかないか……あと1時間くらいなら我慢出来るだろ。

そう思い、俺はトイレを後にした。多分これが全ての間違いだったのだ。


 ……………………


「キャー!へんたい!!!!!女子トイレに来んなー!!!!!」

「いや、俺は女だがー!?!?」


 2時限目は耐えられたのでとりあえず早めにトイレに行ったら、女子共が中身は男の俺を女子トイレから追い出しやがった。理不尽である。いや俺だって女子トイレ行きたくねぇわ!!!!仕方ないので人気の少ないトイレ、旧校舎2階の女子トイレに向かうことにした。人気無さすぎて高校生にもなって心霊スポット学校の怪談の舞台として扱われてるくらいだ。きょうび小学生でもそんな怪談を作らないと思う。


 ガラガラッ!


「「んちゅ……っ、れろっ……んっ……ごく……っ……ぷはぁ……」」


 ドアを開けて、トイレに飛び込んだらなんか女子生徒2人がイチャイチャ百合でキスしてたんだが????眼福ではあるけどそうでは無い。誰も使わなすぎて旧校舎のトイレびっくりするほど綺麗だけどトイレで百合をしないで欲しい。俺は緊急事態なのだ。しかし、物凄く甘い匂いのするトイレ(消臭剤とかではなく百合百合イチャイチャラブラブ的な空気の匂い)の雰囲気とビックリして唾液の橋を架けながらもこっちを見る2人(しかも結構可愛い)に気分が押し負けた。


「し、失礼しましたっ!!!!」


 ガラガラピシャッ!


 一言謝罪の意を示すとつい脱兎し教室に逃げてしまう。あとから聞いた事によると旧校舎2階の女子トイレの怪談はどうもあの二人のカップルが流してたようで、あそこのトイレは怪談による人払いと事情を知ってる人もわざわざ近づかないというダブルの効果で人気が無かったそうな。後日トイレの怪談百合するイチャイチャ部屋は舞台が旧校舎の空き教室に変更されていた。おそらくそういう事だろう。


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