第17話 目を背けていた気持ち


「ごめん、やっぱり彼女を

大切にしたい」


大滝さんからそう言われた。


それから

これまでにあった事を話してくれた。


大滝さんはもう呆れて

彼女と連絡とらない日々が

続いていたらしい。


けれどこのままではいけないと思い

〝大事な話があるから

時間を作って欲しい〟

と連絡をした。


それが、

「彼女と別れると思う」と

話してくれた時だった。


けれど、何回連絡しても

全く会おうとしないので

LINEで〝別れよう〟

と告げたと言う。

それでも既読にはなったが返事は無かった。

こう言う別れなのだろうと思い

そのまま終わったものだと思ったらしい。


その後、私とデートの約束をした。


「けれどあの日

大津さんとわかれた後…

彼女の親から着信が入っていたんだ…」


かけ直すと

〝娘は

大量の睡眠薬を飲んで病院へ運ばれた。

すまん、健大くん。

娘のところに戻ってきてくれ〟と


その足で、大滝さんは

病院へ向かった。

命に別条はないが

夜間の為

彼女には会うことはできなかった。

それからご両親と話をしたそうだ。


〝知ってるだろうが

あの子は弱いところがある

健大くんが居れば大丈夫だと

安心していたんだ

今回の事も健大くんとの別れを感じて

目を背けたかったみたいなんだ

どうか側にいてやってくれかいか〟


そうお義父さんに言われたと言う。


「俺、そう言う崩れそうなのを

守ってやらなきゃと思っていたし

結婚も考えて彼女の両親とも

付き合っていた

そう覚悟を決めていたはずなのに…


俺が悪かったんだ。


あれからで色々考えた


やっぱり彼女とは

濃い時間を過ごしたし情がある。


まだ多分…好きなんだと思う。」


「大津さん…本当にごめん」



どうして…


いや、わかっていた。

いつかこんな曖昧な関係

すぐ終わっちゃうこと。


大滝さんとの関係を始めてから

私は幸せだった。

好きで好きで楽しくて

だから、時より見せる表情に

気づかない様にしていた。


私がしている事はいい事じゃない

けれど顔も名前も知らない

好きな人の彼女。

罪悪感は感じない。


でも大滝さんは違う。

私の〝楽しかった〟とは

きっと違った。

真面目な性格で優しいひと。

だからこそ好きのに…


悩んだ結果、

選んだのは私じゃなかった。

どうしようもない

けれど涙が溢れて止まらなかった。


「私が彼女がいてもいい…

と言ってもですか」


そう泣きながら聞く。


「ごめんもうできない」


私は大滝さんの腕の裾をぎゅっと

握って、ただただ泣いた。


分かりました。なんて言えなくて

この手を放せなくて

「いやです…好きです…」

と繰り返す私。


応えてあげることのできない

私のわがままに

大滝さんは言葉を返し続けた。


気づくと朝日が登っていた。

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