第12話 悪い女


それから大滝さんは

彼女の事を話てくれた。


3年前に大学時代の

バイト先の居酒屋で出会ったらしい。


年齢は大滝さんの5つ年上で

お店の常連さんだったその彼女とは

少しずつ話すようになって

付き合うことになったと言う。


「すごく好きだった

彼女の家族にも挨拶に行ってて

この人と結婚すると思ってた…」


そう話す大滝さん。


けれど、大滝さんが就職して

会えない日が増えると

彼女は変わり出してしまったらしい。


「連絡をしても返事はなくて

返事があったと思ったら

男と2人で出かけてくる…とか」


不審に思った大滝さんは

彼女と会った時に

携帯電話を見てしまったらしい。

当時はまだセキュリティー意識も低い

時代で、ロックはかかっておらず

すぐにホーム画面が表示された。


そこにはメッセージの通知がいくつかあり

1つを開くと

ホテルへ行く約束があったと言う。


それは1人ではなく

メッセージのほとんどは

数人の男性でどれも同じような

内容だったらしい。


大滝さんはそのまま

メッセージの内容を彼女に問い詰めたが

彼女は泣いてこう言った。


〝寂しかった。

自分を必要としてくれるから

ホテルは行ったけど

それだけの関係で

好きなのは健大だけ〟と。


大滝さんは、ショックだったけれど

それ以上に俺がこの人をどうにかしなきゃ

いけないと思ったらしい。


それから大滝さんは

彼女の携帯電話から

男の連絡先を全て消して

彼女との時間をできるだけ作った。


色々あったらしいが

それから彼女の様子は戻っていき

2人の仲は上手くいっていた。


けれど、大滝さんが

この店舗へ移動すると

2人の時間はまたすれ違い

また連絡が少しずつ減っていったらしい。


「俺あんなに頑張たけど

あいつまた怪しくて…

わざと男の影があるような写真送ってきたり

なんかすげぇ苛立ちもあって…



そういう時

大津さんいつも笑って話てくれてさ

正直すごい癒されてて…


あの時は

キスしたいって思ったんだ。

ごめん…」


大滝さんの目は

赤く、滲んでいる気がした。





「ならいいじゃないですか」


大滝さんの手の上に

自分の手を重ねた


「大丈夫です。

同じになればいいんです。」


私は悪い女。




その日私たちは

ホテルで朝まで一緒に過ごした。



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