第4話 気づけばここから捻れはじめていた

「初めまして、おおたき けんです。」


「初めまして、大津です。」


私も少しきごちなく挨拶を交わした。


大滝さんの放つ空気は穏やかで

人見知りの私でも目を見ることができた。


それと少し赤味がかった額が

無性に心をくすぐった。


大滝さんは、入社1年目の社員さんらしい。

新しい店長は別の人で

30代後半の社交性のある明るいタイプ。

前店長と入れ替わりで

どうやら社員が2人きたらしい。

スパルタ店長しか知らなかった

私にはどちらも未知の大人ひとだった。


それからの店の雰囲気は

いい意味でガラリと変わった。

みんなも解放されたかのように

パートさん達もより明るくなって

夜番メンバーの雰囲気も

柔らかくなっていた。


気づくと私のバイトイヤイヤ病は

すっかり消え去っていて

むしろ働くのが楽しかった。

ただ、働くことが楽しくて…

バイトを始めて1年半が過ぎた頃には

私の貯金通帳には

「1,000,000」が印字されていた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る