百二十度

 午前四時を回った。


 長雨が控えめに窓を叩く。


 大きく一度、ため息。目薬を左右に一滴。欠伸を噛み殺して、机へ向き直る。


 部屋は煌々と明るく、男が昨晩から堕ちていないという事実を、無機質に照らしていた。


 空はまだ白む気配はなく、水に濡れた闇をぶっきらぼうに差し出す。しかし、男はそれを歓迎するように、もう一度欠伸を殺した。


「まだ朝になってもらっちゃ困る」


 誰に聞かせるでもなくつぶやく。テスト終わりの明日を夢見て。

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