第23話
奏空は黒岩選手とノックを始めた。まずは、クリアをやり始めたっぽい。
「じゃあ、私たちも同じことをやっていこっか」
「はい!」
ということで、私は白木選手とノックを始める。私たちのコートにも奏空と同じような360度全方向からフォームを見れるようにカメラが設置されている。
「クリアっていうのは多分、聖女様の奏空ちゃん?くん?にどういうのか教えてもらってるかな?」
ネットの向こうから、白木選手が質問してきた。
「はい!一応、奏空から教えてもらいました」
「それじゃあ、奏空ちゃんからはフォームはお墨付きをもらってたと聞いてたけど、私も一応確認をしたいから、見せてもらっていい?」
「わかりました!」
と、白木選手からのお願いを了解し、素振りをし始める。
白木選手もネットの下をくぐり、こちらのコートに来て、私のフォームを見てくれている。
「うん、やっぱり、奏空ちゃんの目に狂いはないね。全然ノープロブレム!」
「本当ですか!一流の選手に言われると、自信つきそうです!」
「ということで、私たちもノックを始めようかな、フォームを素振りのままキレイな感じでお願い!」
とネットをくぐって、向こうのコートに行き、シャトルをとり、ノックを上げ始める。
スカッ
「あれ?」
私も空振り…?
「あー、やっぱりそうかもなって思ってたんだよね」
と、笑いながら、ノックをやめて、また、ネットの下をくぐり、
「琉愛ちゃん、バドミントンやったことある?」
「はい、一応…」
「それって、体育とか?」
「そうですね、あとは、奏空が遊びで何回か外で遊んでくれた感じです」
「となると、やっぱり競技ではマジでやったことはない感じだよね」
「そんな感じですね…」
と聞くと、少しこちらの顔色をうかがいながら、そして、神妙な面持ちで、
「あのね、琉愛ちゃん、こう、初心者にこういうのを言うのはダメなのかもしれないけど…」
「はい…」
「競技と遊びは全く違うってことを早めに認識しないといけないかも…」
それって…、バドミントンを舐めるな?ってこと?
などと思っていると、白木選手は続けて
「あのね、競技と遊びってどう認識できるかなっていつも思ってたんだけど、ようやく最近分かってきてね?」
「…はい?」
「遊びは温泉卓球、競技はガチ卓球ってな感じなの」
「…なるほど」
「体育とかのバドミントンって、なんとか相手のコートに返そう!だから、甘い球でもいい!点が入るのは相手がミスした時だけ!っていう感覚ない?」
「たしかにそうですね。ラリーが続けられればいいかなとか思っちゃいます」
「だけど、ガチの卓球とかはさ、相手が嫌なところに打つ!とか、スマッシュで決めきる!とか色々やってるでしょ?」
「プロの選手とか、部活やってる感じの人はそうですね…」
「てな感じで、バドミントンも、他のと同じで、嫌なところに打つとか、スマッシュで決めきる!とか色々あるの!」
「なるほど…」
「んで、琉愛ちゃんのフォームの話に戻るんだけど、フォームはとってもキレイ、何の文句も言いようがないぐらい」
「…ありがとうございます?」
「でもね、そのフォームを意識しすぎちゃって、打つ高さの認識がされきれてない感じなの」
「…それってつまり、奏空と同じ感じなんですか?」
「半分正解、半分間違いってな感じかな。ちょっとこれ見てくれる?」
と、端末を見せる白木選手。その端末を見ると、さっきの空振りの私が映ってる。恥ずかしい…。
「んで、シャトルの打つところなんだけど、はい、ここ」
と、その振ってる瞬間のところで映像は止められる。それを見ると
「全然高さがあってない…」
「そう、さっき、遊びと競技の違いを話したでしょ?あれ、これにも通じるのがあって」
と、端末を置き、ちょっと離れててと言う白木選手。私が離れると、白木選手は
「競技のシャトルの打ち方って、クリアの場合は自分の“真上”で打つ感じなの」
と解説をし始めた。
「だから、琉愛ちゃん、私と同じぐらいの身長だから、多分私と同じぐらいの高さで打てると思うんだけど。とりあえず、ここら辺ってのは自分で後々打っていく内に覚えると思うからいいんだけど。ここまでOK?」
「はい、大丈夫です!」
と返事すると、続けて
「うん、でもね、遊びのバドミントンって、私がさっき上げたような、後ろまで落ちてこないような球ってなかなかなかったでしょ?」
「…確かに、そうです!」
「となると、大体、高くても浅い球か、低くてライナー性で飛んでくるか、ヘアピンとかの前に落ちてくる球のどれかだったと思うんだ!」
「…はい」
「だからね?体の“前”で打つことが多かったんだと思う!」
となると、遊びのバドミントンって全然違うものってこと…?
「それって、やっぱり違うんですか?」
「いや?“前”で打つのもあるよ?例えば、って言われても一つしかなくて、ドライブって奏空ちゃんから聞いた?」
「はい、一応聞きました」
「そのドライブってのが一応“前”で打つってな感じなの、まあ、後でノックというか基礎打ちっていうやつをやるから、その時にやるね」
「わかりました」
「んでね、琉愛ちゃんは、そっちの方に慣れちゃってて、さっきも言った通り、上に打つのに慣れてないから、空振しちゃったんだと思う」
「それって慣れることって大丈夫ですか…?」
それだけが不安なのだ。奏空はあの状態。奏空が打てる状態になっても、身長は私の方が上、バドミントンは身長がものを言う競技。だから、私が足を引っ張るなんてことはいけない。だから、だからこそ、奏空よりも早く打てるようにならないと…
「多分、奏空ちゃんよりかは早く打てるようになるよ?琉愛ちゃん」
「えっ?」
えっ?私声出てた?
「私、なんか言っちゃってました?」
「いや?多分、琉愛ちゃん、奏空ちゃんのことを考えてそうだから、そんなこと考えてそうだなって思ってさ」
と、白木選手がなんか悪い顔で私を見ながら、言ってくる。
…なんか、色々とバレそうな感じが…
とか思ってると、白木選手がまたネットをくぐり、
「それじゃあ、慣れるまでは打てなくてもいいから、そのフォームを崩さないまま、どこらへんで打てるのか、考えながら、んで、覚えながら、打ってこ!」
「はい!」
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