第27話 ぬいぐるみたちの楽園生活

 さて、ぴっちぃたちは、ネプチュン鳥語を習得したぺんのおかげで、ネプチュン鳥のみなさんと仲良くなり、楽しく過ごしていた。


 ここでは、かっぱっぱやぺんにもネプチュン鳥の姿が見える。ネプチュン鳥は、海外に出た場合のみ、子どもには見えないようにプログラミングされているのだ。

 半透明で、図鑑にも載っていないファジーな鳥を見た子どもたちから、

『あれはなんという鳥か?』

 と尋ねられたら、先生が困るからである。


 ネプチュン鳥語は、ぺんはもうペラペラだし、ぴっちぃ、かっぱっぱ、もーににも、少し聴き取れるようになり、カタコトの単語くらいなら発音もできるようになってきた。


 見晴らしのよい丘の上の素敵な場所を教えてもらい、テントを張ってキャンプ生活を楽しんでいる。


 村長のポセドンさんは毎朝、丘の上まで日課のお散歩に来る。そしてぴっちぃたちに声をかけ、おにぎりなどを差し入れしてくれる。

 午前一〇時になると、役所の環境部の職員さんがビイル薔薇畑の見回りに来る。

 アロマ課長のフレグリャさんも時々やって来て、おまんじゅうを差し入れてくれたりする。


 数日経つと、裏の巣の親子も帰ってきて合流した。

 ぺんはヒナちゃんが赤ちゃんの頃の姿を見たこともないし、ヒナちゃんももうだいぶ大きくなっていたけれど、一目見てすぐにわかった。半透明だけど。


 さっそくみんなでオニごっこ。

 ヒナちゃんも生まれて初めて広い広いビイル薔薇畑を駆け回り、大喜びだ。


 ヒナちゃんの母さん鳥さんは、いいことを思いついた。

「ねえ、ぺんちゃんたち。ママへのお土産にビイル薔薇精油を買って帰るのなら、ついでにお花も摘んでいけばいいわ。生花は日持ちしないから、ドライフラワーにすればいいのよ。天然の香り成分がたっぷり含まれていて、いいポプリになるわ」

 うん。それはいい考えだ。ご近所のネプチュン鳥さんたちも、特にいい香りの花を見繕って選んでくれて、ドライフラワー作りに協力してくれた。


 ぴっちぃはなんとなく、

〈こういう幸せも、イヤシノタマノカケラの位相のひとつかもしれない〉

 と思う。

 物質である場合も、ない場合もあるイヤシノタマノカケラだ。非物質的要素の場合は、何らかのしるしにして持ち帰れば、Damin-Gutara-Syndrome患者のイヤシノタマに適合するものであれば、それでもきっと役に立つはずだ。



 ある日、ぺんはヒナちゃんと遊んでいるとき、ネプチュン鳥のおばさんたちの立ち話をふと耳にする。

「アルチュンドリャのなんとか」

 って聞こえたから、おばさんたちに、

「何のお話ですか?」

 と尋ねてみた。

 アロマ課長のフレグリャさんが話していた、あのバラ中社長の名前だ。


 おばさんたちが噂していたのは、アルチュンドリャ社長の実家の問題だった。

 社長の弟が重病で危篤らしいというのだ。

 お医者さんは両親に、

『会わせたい人がいたら会わせてあげてください』

 と告げたという。もう助からないという意味だ。

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