第22話 その テ でいこう!
何気なく言った言葉に、ぴっちぃが反応した。
「そうだ! それでいこう! ネプチュン鳥さんから、ツメの垢を分けてもらうんだよ!」
みんなは膝を叩いて立ち上がった。
ぺんが起きるのを待って、みんなはあらためてカロンへ赴き、
「折り入ってお願いがあるのですが・・」
と、ネプチュン鳥さんにこの旨打診してみる。
「あーら、そんなのお安いご用よ。ツメの垢でよければいくらでもお分けするわよ」
快諾してくれた。よかったぁ。
奥さんは家族三羽のツメの垢を集めてくれた。
ご主人はなんと、裏の巣を構成している小枝を分けてくれるという。
「え? いいんですか? そんな大事なもの」
ぺんが恐縮していると、ご主人は、
「なあに、たったこれぐらい構わんさ」
奥さんは、
「風通しもよくなるし、ちょうどいいわ」
と言いながら、巣の奥にある、あの虹色の光源に最も近い小枝を何本か抜いてくれる。
どちらも、ぺんには全然見えないけど・・・。
石さんは、これくらいなら協力してあげようということで、もらったツメの垢と巣の小枝を運ぶのにちょうどいい形と大きさのプレート状の石を
「あとで元の場所に戻しといてくれればいいよ」
とのこと。
かっぱっぱはプレート石を大事に大事に家まで運んだ。
かっぱっぱにも石しか見えないけど・・・。
母さんは、ネプチュン鳥のツメの垢と裏の巣の小枝を混ぜて石臼で挽いて粉末にし、それを土瓶で煮詰めて煎じ薬を作り、小さなビンに入れてくれた。
裏の巣のエネルギーどころか、裏の巣そのものまで分けてもらっちゃった。
こうして、ぴっちぃたちのドワフプルトでの任務も無事完了。
「坊やたち、旅してるんだったら、今度うちの自宅へもいらっしゃいよ。ヒナちゃんが飛べるようになったら、私たちも帰るから」
「おう、そうだ。ぜひ来るといい。風光明媚ないいところだぞ。その名もずばり〈ネプチュン鳥島〉だ。名所は一面のビイル薔薇畑だ」
「ありがとうございます。ぜひお訪ねしたいと思います!」
もーにの地図にもさっそく、ネプチュン鳥島への道案内図が顕われている。
ウースは今後のために、自ら作文したセリフを、ぺんにネプチュン鳥語で読み上げてもらい、ICレコーダーに録音しておいた。
『ネプチュン鳥のご家族の皆様、この家には受験生がおりますので、できるだけお静かにしていただけますよう、ご理解とご協力をお願い申し上げます』
〈来年からは、勉強中は黙っててもらおう〉
かっぱっぱとぺんは、今回も、お世話になったアレテー家の人々へ、絵を描いてプレゼントした。
でっかいカロンを中心にお父さん、お母さん、ウースにいちゃん、それに、アレーテイア姉さん、ぴっちぃたち、裏の巣、ネプチュン鳥一家(想像図)、石さんたち。
ぴっちぃは今回も達筆なメッセージを添える。
〈合格祈願 子孫繁栄 一致団結〉
この絵を父さんは額縁に入れて飾ってくれた。
母さんは、干し芋やスルメや黒砂糖など、日持ちのするおやつをどっさりみんなのリュックに入れてくれる。もーにちゃんにはちょっと重いけど。
それから母さんは、もーにの縁の綻びをきれいに繕ってくれた。短冊みたいになっている角の部分は、もーにのチャームポイントなのでそのままにしといてもらった。
「お父さん、お母さん、ウースにいちゃん、長い間お世話になりました」
「
「
父さんも母さんもうるうるしている。
ウースは無口だった。きっとお別れの寂しさに耐えているのだろう。
〈知らなかった。石がしゃべるなんて・・・。
今まではどういうわけか気がつかなかったけど、石がしゃべるなんてことを知ってしまったら、今度は石の声も気になって集中できなくなるじゃないか。ああなんてこった。
なにしろ石の数はネプチュン鳥の比じゃないぞ。無数にあるぞ。そいつらの話し声がいちいち聞こえたら僕はどうなるんだ。現役はおろか、一浪くらいでも済まなくなるかもしれないぞ。ああどうしよう・・〉
憂慮しているのだ。
でもだいじょうぶ。
ここの石たちはみんな、ウースのこんな性格や地獄耳のこともよく理解しているから、普段はウースの耳にも届かない周波数で会話しているのだ。さすがは年の功だ。
それに、いざとなれば言葉も通じる。
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