第3話 ぴっちぃと仲間たち
実はつい最近のことだが、〈イヤシノタマノカケラ〉探しを始めるにあたり、ぼくに同行してくれる友達ができたのだ。
〈かっぱっぱ〉と〈ぺん〉
名前のとおりカッパとペンギンだ。名づけたのはママの子どもたち、すなわちここん
安直なネーミングだ。
かっぱっぱは、ママたちが今の家に住み始めた年のクリスマスイブにやってきた。
ママは毎度のことながら、子どもたちへのクリスマスプレゼントをなにも計画しておらず、一二月二四日の夕方、仕事帰りにファンシーグッズの店で適当にぱぱっと買った。
いわゆるマシュマロ・ピローとかいうやつで、ふわふわしてて子どもの枕にちょうどいいくらいにでれっとのびた形をしている。
最初に決めたのが、ぶた。
ぶた→こぶた→(なぜか)ちびにいちゃん、という短絡的な発想であったと思われる。ママはあまり考えないのだ。
おにいちゃんには、ぞう。ぞうにしては短い鼻に横皺が二本。
鼻の横皺というのはおにいちゃんのチャームポイントでもある。おにいちゃんの鼻は柔らかい。でもって顔を洗ってタオルで拭くとき下から上へこすり上げるので、鼻のあたまに横皺ができるのだ。
(この子たちにも翌日、ちびにいちゃんから名前が贈られる。〈ぶう〉と〈ぞぞぞ〉。安直なネーミングだ)
子どもたちにはこれでよいのだが、ママはその下の棚に並んでいたカッパと目が合ってしまった。
なんだかまぬけで、そこはかとなくかわいい。つぶらな瞳に見つめられると、どうにもシカトして通り過ぎるわけにはいかなくなってしまった。
〈うーん、かわいい。これはパパへのプレゼントとしよう。カッパだし。パパにはひとまわり小さい安いのでいいわ〉
ってな調子で選んで買ってしまった。こいつが〈かっぱっぱ〉。
なぜパパがカッパなのか、ぼくにもわかる。カッパはママが選んだパパなのだ。
名目上、かっぱっぱはパパへのクリスマスプレゼントだけれども、パパがぬいぐるみで遊ぶわけではないから、必然的におにいちゃんたちが面倒を見ることになる。
おにいちゃんは、日課のお絵描きの際、紙の横にかっぱっぱを置くようになり、かっぱっぱも、お絵描きしているおにいちゃんとその絵を見るのが好きだという。
ぺんは、次の年のお正月に水族館の福袋に入ってやってきた。
普段ならそんなもの買ったりしないパパとママだけど、お正月で気が緩んでいたのか、あるいは水族館が混んでいて疲れちゃったからか、ちびにいちゃんが欲しがるものだからつい買ってしまった。
しょうもない物もいろいろ入っていたが、大小のペンギンのぬいぐるみだけはみんなが気に入って可愛いがった。
ちびにいちゃんは小さいほうのペンギンを〈ぺん〉と名づけ、ことのほか可愛いがった。
今にして思えば、ちょっとしたはずみで偶然この家に集まってきた仲間たちだが、これもなにかの縁だったのだろう。
ぼくが話しかけてみると、すぐにお返事してくれて、一緒に遊ぶようになった。これをきっかけに、ほかにもたくさんいたこの家のぬいぐるみたちが一同に会する機会も増えた。
ぬいぐるみのみんなは、こんな魂だけのぼくにも平等に接してくれる。
ぼくは、ぬいぐみたちに〈イヤシノタマノカケラ捜索部隊〉編成にかかる提案をしてみた。
ママの最近の様子にみんなも不安を感じていたらしく、みんなはぼくの案にただちに賛意を示し、一緒についてきてくれる子をあみだくじで選んでくれた。
選出されたのが〈かっぱっぱ〉と〈ぺん〉というわけだ。
そんなわけで、ぼくらは旅じたくを整え、出発することにした。
ほかのぬいぐるみ仲間たちはおもちゃ箱のなかから、
「がんばれ!」
と手を振ってくれた。
「さあ! ママのイヤシノタマノカケラを探しに行こう!」
「おーっ!」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「で、どこへ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます