30 関係ない
いつもより遅い時刻のバスは、遅過ぎるせいで生徒はほとんど乗っていなかった。レイルとルークは後ろ側の席に陣取る。
窓際に座ったレイルは、クロードの疑惑のことを、ルークに打ち明けるべきか悩んでいた。
考えを纏める為に、地下で拾った銃弾を掌で転がす。冷えきった鉛の感触は、今のレイルの心に似ている。あまりに怒りが強すぎて、逆に頭は冷静に回転していた。
「ロック、もう学校来れないかもな」
「体を治せばなんとかなる」
「おいおい、正気で言ってんのか!? あいつはそれでなくても噂話の種なんだ。それが嘘だとしても、ガキ孕ませたなんて噂立ってみろ! 来れる訳ないだろ!!」
「私達が、一緒にいてやれば良い」
事もなげにそう言うレイルに、ルークは苛立った表情で返す。
「ガキは噂でも、被害者の彼女はずっと学校に来るだろ?」
「そんなの、“被害者が同じ学校、同じクラス”のシチュエーションなんて、今まで何回も経験しただろ?」
「“振った女”と“ビジネスの被害者”じゃ全然違う」
「……えらくあの女の肩を持つな? 惚れたか?」
窓の外を見ていたレイルは、ルークに顔を向ける。非常に近い位置にある彼の顔には、焦りのような色が広がっている。いつもの顔と違うのは、その中に真実が混ざっているからだろうか。
「そんな訳あるか! あの子が被害者なのは間違いないんだぞ!?」
「ふーん。私には関係ないことだな」
「お前はいつも、他人のことにはドライだよな。俺は、クロードさんにちゃんと話を聞こうと思う」
ルークが突然そう言ったものだから、レイルは慌てて彼を説得する破目になる。
「お前っ! それは止めとけ! まだ話を大きくするには早過ぎる!」
思わずそう言って、レイルはすぐに後悔した。ルークが訝しい目でこちらを見ている。
「レイル……なんか隠してねえ? 俺がクロードさんに何を聞こうが、お前には“関係ない”よな?」
「……勘弁してくれ。マジで、クロードさんは無し、だ。そんなに探偵ごっこがしたいなら、あの女に直接聞けば良い」
話をはぐらかそうとするレイルに、ルークは先程までの怒りが消えて行くのを感じていた。
どうやら彼女は、ルークに関係ない話に首を突っ込んで欲しくないらしい。クロードに何かあるのだろうが、それは彼女がどうにかするつもりなのだろう。だからさっきも、ジョインの言葉に不自然に言い返さなかったのか。
まだ何かを考えるような顔をしている彼女に、ルークは頷く。それを見て、ようやくレイルの表情がいつもの笑みに戻った。
「ごっこ遊びは大勢で、だ。ジョインの方は頼んだぜ?」
言葉にしなくても、相手が何を伝えたいかくらい、顔を見ればわかる。明日からは二人で探偵ごっこと地下探検をしなければならないようだ。
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