6 見つけた入口
それから三週間が経った頃。
毎日毎日掘り進めたその穴は、ついに遺跡の入口に繋がった。軟らかい土ばかり――後半に降った大雨の影響で、深い部分でも比較的軟らかかった――を掘り返していたスコップの先が硬い音を響かせた時は、三人で歓声を上げて喜んだ。
学校が始まってからは夕方からの作業だったので、あまり効率が良くなかったが、それでもかなりの深さの穴だ。
太陽の光だけでは目視が困難なので、簡易的な照明器具で照らす。蝶番のついた入口らしき蓋がルークの足元にあるのが、地上の二人からも確認出来た。レイルは興奮を抑えきれない気持ちでロックを――見ようとして、他にも視線があることに気付く。
この庭は黒の洒落た冊に囲まれた広い庭園だ。「掘り返しても良い」と庭師の許可が出た女神像の隣、三人からすれば願ったり叶ったりのこの場所は、視界を遮る物も何もなく、少し段になっているテラスは外からまる見えだった。
そこから知り合いの二人が覗いていた。どちらも男の子で、確か自分のクラスで少し話したことがある、とレイルは混乱した頭で思った。
「……何してるの?」
「えっと……ミリタリーごっこ」
自分と同じくらい混乱している知り合い二人に、ロックが空気を読んでフォローに入る。
「学校の友達かな? 僕はコイツの友達で、ミリタリーごっこのための塹壕を掘ってたんだ。君達もやるかい?」
そう言って指を銃の形にし軽く撃つ真似をする。かなりのキメ顔だが、それはさすがにどうだろうかとレイルは思う。
ロックのあまりのぶっ飛びぶりに、知り合い二人は完全に引いていた。一人は後退りを始めている。
その時、地下からルークが出て来た。まず右手を支えにして広い肩から首にかけてを地上に出し、頭部が完全に出きったところで左手も地上に出す。それからは腕の力だけで地上に上がる。毎日の重労働が元からの体力に磨きをかけていた。本人にしたら一番効率の良い動作、後の二人からしても「よくもまぁ、ここまで慣れたな」という動きも、部外者の二人にはまるでゾンビにでも見えたようで、悲鳴を上げながら逃げていった。
後からレイルが友人から聞いた話だが、二人は最近近所に越してきたようで、高級住宅街の探検に来ていたようだった。そんな騒ぎがあったせいで、その日はお開きになり、次の休日まではそのままの状態を保つことになった。
そして今日がその運命の決行日、前日だ。
明日はついに、ルークが遺跡内に侵入する段取りになっている。
中の様子がわからないため、レイルの同行を許してくれないルークだが、レイルはレイルで計器類やカメラ映像の処理をしなければならないのだから、仕方がないと渋々諦めた。
手足の痺れが相変わらずのロックの代わりに、計器類を扱うのはレイルの役割だった。ロックを頭としたら、二人は手足となって動くのだ。
明日の早朝から作業に入るために、今日はロックの家で泊まることになっている。広い豪邸なので空き部屋もある。その内の二部屋をそれぞれに使わせてもらえるのだから、二人からすれば高級ホテルに泊まっているような気分だ。
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