正体
家に着いたオレは手を洗っていると痛みを感じた。
手が少し赤く腫れているのだ。
倒れた時ぶつけたのかもしれない。
「まあ明日には引くだろ。」
とにかく今日は疲れたから早く休もう。
自室で部屋着に着替えたオレは、皆に時計が直った事を伝えようとカバンからスマホを取り出した。
その時不意に自分が鏡に映り込んだ。
さっきは制服で隠れていたが、首に何か線が入っている。
近づいて確認すると人の指の形がくっきりと紫に浮かび上がっていた。
「え…?」
化け物に手を叩かれ、首を絞められた記憶が蘇る。
「…夢じゃ…なかったのか…?」
すると後ろから音が聞こえてきた。
カッカッ--
「えっ…?」
この音は…まさか。
オレは振り返った。
けれどそこには何者の気配もない。
カッカッ--
音だけが聞こえて来る。
動悸が激しくなってきた。
一体どこから…?
音の鳴る方にそろそろと視線を辿らせる。
オレの部屋にあった目覚まし時計の針の音だった。
「何だ…時計かよ…。」
化け物がいないか部屋を再確認する。
やはり何もない。
カッカッ--
変わらず時計の針の音だけが響いている。
化け物達の足音と似た音で紛らわしい。
いや似てる?
似てるどころか全く同じ様な…。
「時計の…針の音…?」
オレはそこでハッと気づいた。
ああやっと分かった。
あの化け物はオレの折った時計の長針そのものだったのではないか。
一つ一つ思い返してみると、合点がいった。
そして後から現れたのは短針と秒針の姉妹だったのだ。
オレが針を折ったせいで長針は時を示すことができなくなり、時の止まった空間へと行くことになってしまったのではないか。
つまり、オレが奴をあの空間へ引き込んでしまったのだ。
運良くくっついたからオレは今現実に帰って来ることが出来たが、そうでなければどうなっていたことか。
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