「見つけたわ!」

 「迎えに来たのよ!さあ!」


 見るとうちの学校の制服を着た女子生徒が二人いるではないか。

 ちょうどオレの頭の後ろから二人とも手を差し伸べてくれている。


 オレはその手を掴んだ。


 「あんたじゃないわ!」


 「私達はその子を迎えに来たの!」


 二人共オレの手を叩いて化け物に向かって差し伸べ直す。


 化け物の仲間だったのだ。


 ああ息が苦しい…。

 もうここで終わりか…。


 意識を失いかけた瞬間、化け物は手を離し、オレを降ろした。


 「ゲホッ!」


 咳をして幾分か落ち着くと、化け物とさっきの女子生徒の方を見る。


 こちらもよく見ると化け物だった。


 一匹は病的なまでに細長く、もう一匹は異常に背が低い。


 「姉さん達…ありがとう…!」


 「もう大丈夫よ。これからも一緒だからね。」


 「さあ帰りましょう。」


 奴等は手を繋ぐと、例の奇妙な足音を立てながら光の方へと向かって行った。


 オレはその光を眩しそうにぼんやり見つめた--。




 「…おーい大丈夫か?おーい!」


 誰かオレに呼びかけている。


 とても眩しい…。

 オレは太陽の光で目が覚めた。


 「良かった。気がついた!」


 起き上がって声の主を確認すると、時計店の店主だった。


 「…オレ…どうして?」


 やっと頭が動き出す。


 「店の外に出たら倒れてるから驚いたよ。何だか眠っているみたいだったが…。」


 さっきまでの出来事は一体何だったのか。


 「病院に行ったら?」


 店主が心配そうな声でそう言った。


 もしかしてオレは夢でも見ていたのだろうか。

 あんなにリアルなものだったのに?


 「あ、ありがとうございます…。ちょっと寝不足なだけです…。」


 「ならいいが…。無理はしちゃダメだよ。」


 「分かりました…。」


 そう言って立ち去ろうとしたオレを店主が呼び止める。


 「そうだ。時計の針だけどやっぱり見つからなかったんだよ。」


 その言葉でオレは一気に現実に引き戻された。


 「…え。じゃあ…直らないってことですか?」


 冷や汗が出てきた。


 店主は笑顔で首を振った。


 「大丈夫。修理とは言えないけど仕方ないから接着剤使ってくっつけたんだ。」


 「え、でもくっつかないとか言ってた様な…。」


 「針の素材がたまたま良かったんだよ。今から持って帰る?」

 

 「持って帰ります!!」


 やった。

 これで先生にバレずに済む。


 「君が折れた部分持ってこなかったら、もう使えなかったろうね。」


 「本当ですね。良かったー!」


 ありがたいことに代金はいらないとまで言ってくれた。

 店主に深々と頭を下げて、オレは学校へと戻った。

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