学級遊戯
きょうかさんのお部屋
第一章 第一話 ハジマリ
「ふぁ~……。おっかしいな。昨日九時間ねたんだけどな?」
「昨日も言ってたぞそれ。まったく。俺を見習え!」
俺は東京都立邦枝高校に通う一般高校二年生、名を
「しょうがないだろ。いつも頭を使ってるやつはその分頭を休ませないといけないんだよ。筋肉バカには分からないだろーけど。」
「なるほど。……っておい!筋肉バカはないだろ!」
いつも通りの雑談をしながら俺たち教室に入る。それが俺たちの運命を大きく変えるとは知らずに。
二年A組の札がかかった教室の引き戸を開けるといつも通りのクラスメイト達がそこにいた。が。なにやら様子がおかしい。いつもは朝のHRの前はそれぞれのグループに分かれて雑談やらゲームやらをしてるんだが、今日はまるで入学式直後かのように全員それぞれの席に座り、静まり返っていた。
「なんだ?どうしてこんなに静かなん……?!」
黒板を見るとそこには「全員引き出しの中身を確認し、次の指示まで着席して静かに待機すること。」の一文がチョークでは表現できないような赤黒い色で書かれていた。
「なんだよこれ。てかこれで静かに待てるほど賢い奴らじゃなくね?俺ら。」
幸介が耳元でささやく。確かにその通りだ。こんなことが血のような色で書かれていても若き高校生ならSNS行きで何かしら騒いでいるだろうに。
「……とりあえず席に座ろう。多分、俺らが最後だ。」
俺は窓際最後尾にある自分の席に座ると引き出しの中身を見る。中には茶封筒が一つ。中を見るとトランプの、♤のKのカードが一枚と、一枚の紙。その紙にはただ一言「トランプの絵柄は口外禁止」とだけ書かれていた。
「これより、開会処理を開始します。参加者の皆様はそのままでお待ちください。」
急に流れた放送にざわめく教室。開会処理?参加者?意味が分からない。
「……確認しました。参加者は計38人です。ではこれより、ゲームを開始します。ルールは2020年版に準拠します。ルール説明の準備を開始します。参加者の方々はそのままお待ちください。」
「ゲーム、だと?」
「皆様の中に、残忍な殺人鬼が隠れています。参加者は、参加者が持つトランプを破ることでトランプの所有者を殺害することができます。殺人鬼はJOKERのカードを所有しています。殺人鬼ではない方々はAのカードを持つ方がJOKERの方のカードを破き、殺人鬼を殺すことでゲームクリア、殺人鬼の方は♤のAのカードを破き、所有者を殺害、もしくは他プレイヤーの全滅でゲームクリアです。他者のカードに記された内容を見ることはできません。また、J~Aのカードを持つ方は特殊能力を持っています。内容は放送後に同梱している紙を参照してください。学校の敷地外へ行くとその方は問答無用でゲームオーバーとなり、生存者が持つカードと所有者がランダムで殺人鬼に伝わります。では、十分後にゲームを開始します。行動を始めてください。」
放送が切れた途端教室は地獄絵図となった。怒号、叫び、号泣。それを出来るだけ聞き流しながら幸介を連れてそうっと教室を出る。そして俺たちはダッシュでとある場所へ向かった。その場所とは……。
「幸介。少し考える時間が欲しい。静かで、他のやつに出来るだけ話を聞かれにくい場所。屋上だ。最短で行くぞ。これが始まる前に考えをまとめておきたい!」
「おう!……宗次。走りながらで悪い、聞いてくれ。俺はお前を信じる。お前は殺人鬼ではないってな。そして、俺は♤のJを持ってる。お前のことを守れる。頼りにしてくれ。」
俺は屋上の扉を開け、幸介を入れて扉を閉める。扉横につくはしごからさらに上に上がり、幸介も登り切るのを確認すると幸介の後頭部を思いっきりぶん殴る。
「バッカお前、あんな校舎内で言う必要ないだろ!誰が聞いてるか分からないんだぞ!……まあ、信じてくれてるのは嬉しいよ。幸介、俺はなんにも持ってない。ただの一般人だ。よろしく頼む。」
さて。幸介が嘘をつける性格ではないことは分かる。しかし、出来るだけ自分の情報を流したくない。とりあえずは現状の把握だ。俺は自分のカードを取り出すと幸介に渡す。そしてメモするふりしてスマホのカメラを起動する。
「幸介。何が書かれてるか分かるか?」
幸介はカードを色々な方法で見ているが、30秒ほどで俺に返すと首を横にふる。
「真っ白でなんにも書かれてないように見える。けどこれ、お前のカードだろ?ならなんか書いてあるんだろうな。」
もちろん俺には♤のKが描かれている。放送の通り、絵柄は見えないらしい。
「なるほど。ならこれは?」
俺はポケットから黒のボールペンを出すとカードに「コースケシネ」と書いて見せる。しかし、幸介は即座に首を振る。わざと読みにくいようにカタカナで書いたんだが幸介の目はトランプを最初に見せた時とさほど変わらない動きをしていた。つまり本当に見えていない。
「とりあえず能力を確認しよう。幸介、頼む。そのあとによければ俺に紙を見せてくれないか?」
「OK。……はい、渡す。」
俺は渡された紙を見る。そこに書かれていた文字はしっかりと読むことができた。
「なるほど。この紙は読むことが出来るんだな。」
あとは殺人鬼とやらの能力の予想。俺はあの放送を聞いて一つの仮説を立てていた。
「幸介。殺人鬼とやらはどうやってAを殺すと思う?」
「適当な奴のカード奪って……でもそれだと時間がかかりすぎるか。」
「そうなんだよ。今のところ誰が何のカードを持っているかを知る方法は誰かが校外へ出るしかない。それでも誰のカードを知れるのかはランダムだ。しかも自分のカードが破かれたら死ぬんだから死ぬ気でカードを守るはずだ。これだと殺人鬼があまりにも不利すぎる。」
「ちょっと待て。宗次、お前は殺人鬼がどっかのタイミングで強化されるって言いたいのか?!」
「その通りだ。つまり、このゲームは早期決戦で挑まないと生存者不利になると思う。早急にJQKA、そしてJOKERを見つけて一気に勝負を決めないといけない。協力プレイだ。」
幸介はそれを聞いて黙ってしまった。が、俺の顔を見て顔を背ける。
「ま、お前がそう言うなら仕方ないな。やるとするか!」
「十分が経ちました。これよりゲームをスタートします。皆さん、頑張ってください。」
無慈悲に放送が鳴り響き、ゲームが始まった。
学級遊戯 きょうかさんのお部屋 @kyo_kyokyokyo
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