7の20 大商人・ケンモッカ(後編)



「そういえば、イグラシアン皇国との輸出入は今でも続けているというのは、ナナセカンパニーとアデレード商会でお手伝いできますか?」


「おおそうじゃった、それを相談したかったのじゃよ」


 レオゴメスは遠方との商取引は輸送にお金がかかるため嫌う傾向があるので、今はケンモッカ先生が個人輸入みたいな感じでやっているそうだ。たいした商品を取り扱っているわけではなけど、留学のお金を出してくれたアルレスカ=ステラのお父様への感謝の気持ちを忘れないためであると同時に、皇国との友好な関係を約束したブランカイオ先々代国王陛下とお世話になったネッビオルド様の意思を受け継いでいるところもあると言っていた。


「私、ベルシァ帝国やグレイス神国との輸出入を始めようと思ってるんで、海外事業部みたいな感じで独立させて作っちゃいましょうか」


「お姉さまのお考えはあまりにも壮大すぎますの。外国と輸出入ともなると、輸送がとても大変ですの・・・」


「そうじゃな、安定した輸送方法を先に作っておかなければなんのぉ。ナナセ閣下はすでに心当たりがありそうじゃのぉ・・・」


「こっ、こっこっ・・・こんなこともあろうかとぉーっ!!」


 私が考えている新しい流通ルートは、帝国と神国をハルピープルに運んでもらい、神国から王国へは南端の港のガリアリーノさんの船を使う。船と言っても当然重力魔法を使った動力船を提供し、今は年に五回しか運行できていないものを毎月運行で十一回まで増便しようと思っている。その船は王都からさらに北上して、ベルサイアの町にできるだけ近づくような航路にしたい。


「ベールチアさん・・・えっとアイシャ姫から聞いたんですけど、皇国の人は従来の山越えルートを嫌って西に大きく迂回するルートを好むんですよね?その途中にある集落に同朋がいっぱいいるとか」


「ナナセ閣下はよく知っておるのぉ、海沿いのマルセイ港じゃな。わしの商取引もその集落を経由するようにしておるのじゃよ」


「そこの港を徹底的に開発しましょうよ。そしてそこから先はナゼルの町の高性能な馬車でベルサイアまで一気に運びます。ちなみに動力船は風がなくてもある程度安定した航行時間が計算できますし、高性能な馬車は積載量が倍な上に時間は半分に短縮されますから、従来のものと単純に比較すると四倍近い流通効率になりますよ」


「ナナセ閣下は色々と開発しておるのぉ、感心してしまうのじゃ。高性能というのは行商隊が順次入れ替えておる馬車のことじゃな、わしもあれには興味があったのじゃが、なんせどれほど金を出そうとも手に入らんのじゃよ。ブルネリオ国王陛下が管理しておってのぉ・・・」


「あはは、それお願いしたの私ですから。まずは行商隊、次にナゼルの町とナプレ市です。車輪に非常に精巧な細工がしてあるので、そうそうたくさん作れないんですよ。だったら職人いっぱい使って作ろうとしても無理な話で、かなり腕のいい職人じゃなきゃ作れませんね」


「じゃったら腕のいい職人がたくさんおるアブル村に発注すればいいのじゃな」


「駄目です。ナゼルの町の雇用を勝手に奪わないで下さいっ!これは王族命令ですっ!」


「ほっほっほ、こりゃ一本取られたわい」


 ブルネリオ王様と約束した期間は、できるだけ技術の流出は避けたいのだ。工場の親方が健在なうちは作れるだけ作ってもらうのだ。


「そういえば思い出した。マルセイ港ってところに、タル=クリスとマス=クリスが逃げ込んでるかもしれないんですよねぇ。ケンモッカ先生はあの二人のことを知っているのですか?」


「恥ずかしい話じゃが、あの二人はわしが商取引しておる馬車に潜んでおったとしても、うかがい知ることはできぬのじゃよ。度々王都に現れておるからのぉ、レオゴメスにはキツく『関わるな』と言っておったのじゃが・・・結局今回のような事件が起きてしまったのじゃ」


「あー、おじい様がお父様と一緒にお寿司屋さんにいらっしゃったのは、そのお話をして下さっていたんですの?」


「よく覚えておるのぉ、あの時はアデレードにも直接危害が加わりそうになっておったから、かなり厳しく言及したのじゃがのぉ、結局レオゴメスは知らぬ存ぜぬで話は終わってしもうたのじゃよ。かなり険悪になってしもうたから、アデレードにでも会いに行こうと誘ってのぉ、おかげで二人ともすっかり落ち着いたのじゃ。あの時はアデレードの可愛い笑顔に助けてもらったようなもんじゃな」


「あはは、不仲って聞いていた二人が一緒に来たもんだから、アンドレさんまで含めてめちゃめちゃ警戒してたんですよ!」


「迷惑かけたのぉ、じゃが、あれからちょくちょくお寿司屋さんには行かせてもらっておるのじゃよ。バドワイゼル大将にもよくしてもらっておるのじゃ。あんなに味も接客も良い店は王都にはないからのぉ」


「毎度ありがとうございますの!」


 すっかり後回しにしているタル=クリスの件は、元国王陛下の暗殺に関わっているというところまで話すわけにいかない。とにかくアンドレおじさんになんとか知らせて、そのマルセイの港ってとこに向かってもらわなきゃならない。あーもう異世界スマホがあればいいのに。


「タル=クリスどうしよっかなぁ・・・」


「お姉さま、それでしたらレイヴに調査させてみてはいかがですの?きっとマルセイ港も知ってるはずですの」


「おおそっか!タル=クリスは元飼い主だもんね!サギリと一緒に飛ばして、もし発見したらアンドレさんのところへサギリが案内すればいいんだ」


「あとで国王陛下にお会いしたときに提案してみますの」


 だいたいの話が終わったので、ようやくケンモッカ先生の屋敷からおいとますることにした。私はペコペコとおじぎをして部屋を出ると、なぜかアデレちゃんまでペコペコと頭を下げていた。


「それじゃ一度、隠れ家に戻ろっか」


「あたくしたちが王都をウロウロしていると、とても目立ちますの」


 どちらか一人でも目立つのに、私たち二人が久しぶりに王都へ戻っているのを物珍しそうに眺めている住人がたくさんいる。こりゃもうコソコソと調べ回っている時間は無さそうだから、レオゴメスと面会して事情聴取するのは諦めて直接ブルネリオ王様と話すことにしよう。


「ただいまー!アデレちゃんとアイシャ姫は牢屋に入っちゃう前に、最のんびりお話でもしてきてね。ベルおばあちゃんとハルコとレイヴ、邪魔しないように二階に行こっか。私はちょっと捜査メモを整理するね」


「わかりました」「ありがとうございますの」

「了解なのじゃよ」「わかった」「かーかー」


 捜査メモを整理しながら色々と考える。おかしくなってしまったアルレスカ=ステラと、幼少からずっと一緒にいたバルバレスカが、泣いてばかりの不幸な娘だったという話はとても心が痛む。そんなバルバレスカが唯一の幼馴染であったレオゴメスと学園に通うことで悲しみを少しづつ忘れて、ようやく幸せな人生が訪れたと思ったら、今度はブルネリオ王様と望まぬ婚姻をさせられてしまったのだろう。


 こうやって考えると、誰に責任があるのかよくわからなくなってくる。セバスさんとアルレスカ=ステラを引き剥がしたところまでさかのぼって考えると、いったい誰がその婚姻を強要したのかといえば間違いなく王族だ。さっきのケンモッカ先生の話を聞いている限り、王国と皇国の国交のためという大義名分だったと思うので、ここに間違いなく王族が関わってきて、絶対に逆らえなかったことが想像できる。


 私も王族なのでなんとも難しい立場だが、王家と商家に起こったこの悲しい事件の原因は、王家と商家が自らの手で作り上げてしまったものなのではなかろうか。裁判では過去の責任を追求するような形になってしまうが、この事件で私が目指す着地点は未来を変えることだ。そんな大層な仕事が私ごときに務まるのだろうか?


「お姉さまっ!お姉さまっ!大丈夫ですの?アイシャお姉さまが二人きりでお話があるそうですわ」


「あっ!ごめんごめん、考え事してた。アデレちゃんはもういいの?」


「あたくしたちは最初から大丈夫ですの」


 アデレちゃんと入れ替えで私が三階へ行くと、いつも後ろで一つに束ねていた綺麗な髪が下ろされていて、大人なのか少女なのかよくわからない表情をしてこちらを見ているアイシャ姫がソファーにちょこりと座っていた。ここ数日はアデレちゃんに取られちゃった気になっていたけど、やはりこの人は超絶美人で、正面から顔を見ると魂を吸い込まれそうになってしまう。これは美のブラックホールだ。


「髪、下ろしたんですね。なんだか色気もあるし、可愛さもあるし、とっても素敵ですよ」


「ありがとうございます、あの髪留めはアデレードに授けました。今日から私は王国の罪人で、アデレードが帝国の姫です」


「あの、そんな簡単に姫を相続しちゃっていいんですか?」


「ガファリに確認したから問題ありません」


「そ、そういうことじゃないと思うんですけど・・・」


 そんな話をしていると、アイシャ姫が私の肩にしなだれかかってきた。それと同時に髪のいい匂いがふわりと鼻を通り抜ける。


「どうしたんですか?やっぱ牢屋に入るの嫌なんですか?怖気づいちゃったんですか?」


「私は自分が強い者だと思っていましたが、ナナセさんに近づいてから、どれほど自分が弱い者か思い知らされました。同じことをアデレードにも感じていて、あんなに強い娘に育っているとは思いもよりませんでした・・・」


「強さって剣や魔法だけじゃないですよね。私はみんなの前でこそ頑張って背筋を伸ばしてますけど、それってやっぱ虚勢を張ってるだけで、アルテ様と二人きりになるともうぐにゃぐにゃですよ。でもそうやって優しくしてもらえると次の日からまた頑張れるんです。アデレちゃんも私だけじゃなく、アルテ様やセバスさんやロベルタさんや、他にもシャルロットさんもアイシャ姫もそうだと思います。誰かが見ていてくれてる、誰かが聞いてくれる、誰かが優しくしてくれるっていうのは、アデレちゃんが強く生きるための活力になっていると思います」


「素敵な関係ですね・・・私にとって、そのような人はつい最近まで一人もおりませんでした。ナナセさんが殿方だったらよかったのに」


「えっ?・・・んぐっ」


 アイシャ姫は自分の長い髪を片手で後ろにかき上げると、私の首から後ろに手を回して頬に触れ、とても優しいキッスをしてきた。私は突然のことにしばらく固まっていると、そのキッスは次第に大人のものへと代わり、抵抗したくでもできない不思議な感覚に身体を支配され、今まで感じたことのない心地よさに包まれてトロリとしてしまった。


 ふと我に返ると、アイシャ姫が私から離れて恥ずかしそうな顔をしながらつぶやいた。


「ナナセさんにとっては三人目かもしれませんが、私にとっては初めてなのです・・・」


「あなたたち母娘は二人でいったいどんな話をしているんですか・・・っていうか、その、なんというか、レオゴメスは?」


「口づけは死守しました。」


「死守する方を間違ってる気がするんですけど・・・とにかく、続きは裁判に勝って自由になってからですよ!」


 とりあえず冷静ぶってそう言っておいた。私は“続き”のやり方をよく知らないけど、これで心置きなく地下牢に入れるならいいのかな?


 でもどうしよ、私、ドキドキが止まらないよ・・・





長いあとがき

もし牢屋に入れられてしまう前に少しだけ時間があったら何をしておきたいですか?という筆者の自問自答の結果、アイシャ姫の行動はこうなってしまいました。この行為の続き、あるのでしょうか?


これでイグラシアン皇国からやってきたセバスさんたちのお話はだいたい出揃いました。お気づきの方も多いと思いますが、ケンモッカさんもレオゴメスさんも過去に中日ドラゴンズで活躍した優良助っ人外国人選手からお名前をお借りしました。さらに、あまり活躍はできませんでしたが、セバスさんの本名であるアレクシス=ゴメスという方も中日ドラゴンズの助っ人外国人選手、なんていう繋がりでした。

なぜ野球選手を由来にしたのかと言うと、イタリア風な感じの名が多いブルネリオ王国に、南米風の人物名(ゴメスとか)を混ぜれば“外国人感”を出せるかな?と考えて採用しました。筆者が中日ドラゴンズのファンというわけではありません。

しかし、そんな風に思える効果、まったくありませんでしたね。残念。


さて、実はこのお話、222話でした。

これはキリ番ってことで、登場人物紹介をしようと思います。

今回はやっと出揃った容疑者と関係者のシリーズです。

作品内では触れていない補足説明も少し含みます。



・アレクシス=ゴメス ………皇国の貧しい子供→王宮の使用人見習い→セバスチャンの称号を得た優秀な執事

 人物紹介に再登場、歴代国王に仕え、歴代王子の教育係を担当し、王子たちには厳しい先生として恐れられながらも、反面、父親のようにも慕われている。

 今から五十年ほど前、幼馴染のアルレスカ=ステラとは決して幸せとは言えない形で結ばれたが、すぐに別れが訪れる。その傷が癒えないうちに今度はローゼリアとも恋仲になってしまう。コロコロと女性をとっかえひっかえしている酷い男のようにも見えるが、非常に真面目な性格なので、その都度、相手と真剣に向き合ってしまった結果なのであろう。その後の人生に女性の影は一切見られない。

 バルバレスカとレオゴメスは隠し子で、アデレードは隠し孫。他にも、ブルネリオとバルバレスカの子であり教育係として担当していたオルネライオ、サッシカイオ、ティナネーラ、ソライオも孫であるものの、本人はバルバレスカと血が繋がっているかどうかはわかっていないので、そういった認識では接していない。

 ブルネリオとバルバレスカの婚姻を良かれと思って推し進めたが、結果としてバルバレスカの憎しみを生み出す原因になってしまった。


・ケネス=モッカ ………皇国の貧しい子供→ネッビオルド商会で見習い→ヘンリー商会の創設者→学園の先生と個人輸入業者

 皇国から王都にやってきた際の下宿先でお世話になったネッビオルドから商才を見いだされ、学園に入る前から英才教育を受ける。自身の商会の利益よりも人との繋がりを重視するところがあるようで、ナナセさんやアデレードさんだけでなく、世界的に尊敬されている。

 アルレスカ=ステラの父親に王国への留学費用を準備してもらったことを今でも恩義に感じており、レオゴメスが取引を縮小してしまった皇国との貿易も、個人的な約束を守るために続けている義理堅い人物。

 人柄もよく商売の仲間や職人を大切にする反面、仕事を優先しすぎてしまい家族同然であった同居人のレオゴメスとローゼリアには、あまり家族らしいことはしてあげられなかったと後悔している。

 長年王国全土や海外を駆け回っていた超大金持ちモテモテやり手商人なので、なにやら遠方に現地妻のような人が存在するようだ。


・ネッビオルド ………王族の血を引く商人、故人

 ブランカイオ国王陛下時代の王都では最王手であったネッビオルド商会を経営していた。遠方との取引を好み、イグラシアン皇国のステラ商会の主人は懇意にしていた。その縁で親子ほど年の離れた娘であるアルレスカ=ステラを嫁にと言われていたが、さすがにお断りし続けていた。しかし、当時の王国国王や皇国皇帝までもがこの話に関わってきて、両国の国交のためという理由で渋々婚姻を受け入れることとなった。

 正式に婚姻してからも、すっかり気落ちしているアルレスカ=ステラには、一切、手を出さずにいたが、ほどなくして妊娠が発覚しバルバレスカが産まれてしまい、望まぬ婚姻をさせてしまった罪滅ぼしのような気持ちで、ただお金にだけは不自由させまいと、ケンモッカと共にひたすら仕事に打ち込んだ真面目な人。

 結果としてその行為は仮初めであった家族をますますないがしろにすることとなり、アルレスカ=ステラの不幸な死と、バルバレスカの憎しみを生み出す原因になってしまった。


・アルレスカ=ステラ ………皇国の裕福な子供→バルバレスカの母、故人

 皇国から王国を目指し、学園で立派な商人になるためのお勉強を頑張っていた商家の娘。皇国を出る際には、すでに王国の商人と望まぬ婚姻をさせられることは薄々気づいていたが、幼馴染であるアレクシスへの想いはますます募る一方であった。

 学園の卒業を控え、正式にネッビオルドとの婚姻が決まってから、ついにアレクシスへの想いを打ち明け、両思いであった二人は数か月後に必ず訪れる別れを覚悟しつつ結ばれた。

 アレクシスとの大切な子であるバルバレスカが成長し学園へ通うことが決まると、商家の娘としてバルバレスカも自分と同じ運命が待っているのではないかと思い悩み、その不幸な未来を見たくなかったのであろうか、人知れず自らの命を断ってしまうという結末を迎えた悲しい女性。


・レオナルド・ゴメス ………ローゼリアの子→ヘンリー商会長

 王宮見習い時代のセバスさんとローゼリアの間に産まれた子。母親のローゼリアはゴメスという家名をどうしても名乗らせたく、王都で過ごしやすいよう名乗らせた名はレオナルドではなく、レオゴメスだったようだ。

 母親がネッビオルドやブランカイオに仕えたようなきちんとした人物だったので、子供の頃に受けた教育は超一流。しかし、ケンモッカが父親代わりとして引き取ったとはいえ、父親として教えられることは商人の何たるかばかりで、家族として接していたことはほとんどなく、バルバレスカと同じく寂しい思いをして過ごしていた。三章でナナセさんとアデレードさんの喧嘩問題に、お父さんぶって必要以上に首を突っ込み、ナナセさんに親がいないことを知ると、「みなしごだから」と罵っていたのはこのあたりが遠因。

 軽く悪魔化していたバルバレスカの憎しみをたびたび吸収してしまい、本来は真面目で有能な商人であるにも関わらず、たまにおかしな行動をとっていた。

 レオゴメスさんに関しては八章で触れるのでこのくらいにします。


・シャルロット ………ベルサイアの裕福な子供→レオゴメスの妻

 本人が全く望んでいなかった婚姻をさせられてしまったベルサイアの町の商家の娘。しかし、大富豪として何の不自由もなく王都に住んでみると、好きなだけ趣味に時間とお金を使える裕福な生活にあっさり馴染んでしまう。

 ある日突然、レオゴメスが連れてきたアデレードを本当の娘のように可愛がって育てていた。本人にとって最初は暇つぶしのような感覚であったが、知らず知らずのうちに血の繋がり以上のものを感じるようになった。

 レオゴメスとの夫婦生活は皆無。劇場の二枚目俳優や美味しいものや旅行が大好き。今はミステリアスなピステロ様に夢中なようだ。


・タル=クリス ………皇国の諜報員

 ヴァルガリオ暗殺の実行犯。バルバレスカの命令のとおり、殺す気などまったくなかったが、ポルシュのせいで事態が混乱してしまい、やむなく高位の魔道士の首を斬って逃走。

 その後はしばらく目立った動きはなかったが、ナナセさんが王族になった頃から再び王都で活動し始めた。王城で行われていた朝の会議では、王国の弱みを探っていたのではないかと言われている。

 お寿司屋さんが開店した頃、王族ナナセさんの行動を監視していたところをアンドレさんに見つかり、アデレードさんに剣を投げつけられ、その刺さった剣をぐさぐさグリグリされちゃった可哀想な人物。

 捕らえられてもなかなか口を割ることはなく「くっ殺せ」が印象的な、もしかしたら有能な諜報員かもしれない、悪役になりきれていないおじさん。

 現在は脱獄逃亡中。


・マス=クリス ………皇国の諜報員

 ヴァルガリオ暗殺の際は当時護衛侍女だったベールチアさんに変装し、サッシカイオに疑いがかからないよう王宮内をうろうろしていた。

 タル=クリスの奥さんで、基本的に二人一組で行動。ナナセさんの監視をしていた際は、重力ジャンプで追い回されたあげく、剣をアルテ様謹製のチート剣で折られてしまった上に、手裏剣を命中させられちゃった可哀想な人物。

 この時ナナセさんはアデレードさんの守りを優先してマス=クリスを取り逃がしてしまい、後にバルバレスカに変装してタル=クリスを地下牢から奪還されてしまうという失態に繋がった。

 どうやら重力魔法をそこそこ扱えるようで、アイシャ姫がアデレードさんを産むために皇国に訪れていた際にそれを目撃し、後に戦闘の参考とした。

 変装技術も高いようだし、剣も魔法も扱えるようだし、もしかしたら有能な諜報員かもしれない謎の女性。

 この二人に関しても、八章で触れるのでこのくらいにしておきます。



さて、次話はいよいよブルネリオ王様にアイシャ姫を引き渡します。

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