第2話ほんとうは

「缶詰だよ」

ある友人にその考えをメールした。その返答がこれだった。


そいつは言う。

部屋へ押し込まれた時点で自分達は缶詰なんだと。

何か違和感を感じた。俺が言ったのはただの比喩だったはず。

でも、そいつは違うことを言っている。


「缶詰にされているボクたちの年齢って結構若いでしょ?」

「ああ。」

「若いものより古いものの方が傷みやすくない?」

「食べ物か?それはそうだろ?」

「じゃあ、古いものを先に食べないとね。」

「若い方はどうするんだ?」

「保管しとけばいいよ。ある程度調理して加熱して、密封すれば保存がきく。」

「缶詰か。」

「缶詰だよ。」

「俺たちの話じゃなかったのか?」

「ボクたちもそうなんだよ。」


意味が解らなかった。こいつは何を言っているんだ?


そいつは詳しい話を始めた。


ボクさ。今のとこに入れられる前から引きこもりだったんだ。外には怖くて出られなかった。でもね、やっぱり外には楽しいこととか嬉しいことがいっぱい溢れてるんだって思いたかったんだ。だから、いつもネットで最新のニュースとかをチェックしてたんだ。

今はかなり制限されてるけどさ、ほんとはもっともっと面白いサイトとかあったんだよ?

でもあるとき…ボクが部屋へ入れられた日なんだけど。多分みんなもおんなじ日だと思う。

直前までネットでニュース見てたんだ。

君も知ってるだろ?

戦争があって、兵器をバカみたいに使って、環境が最悪になって、病気が蔓延した。

だから、ボクたちみたいな健康な若者は一定期間安全を保証して、未来の地球を託そうって話。

あれね、途中からウソ。

環境は最悪になったけど、変な病気は出てない。

その代わりにね、変な生き物が出てきたんだ。


変な生き物?


うん。初めはどっかの国の人が襲われたってニュースだった。UMAだ、宇宙人だって騒がれたみたいだけど、結局分かんなかった。

特徴は「光っている」。それだけ。


光っている?生き物か?それ。


うーん…多分。

そのニュースの内容がさ…襲われたっていうか食われたってやつだった。


食われた?


うん。見てた人がいたんだって。っていうか…撮影してたらしくて。その人も食われたらしいんだけど…

そういう映像ってアウトでしょ?テレビにもネットにも映らない。だから、このニュースは嘘っぱちだって言われたんだ。

でも、その後も同じようなニュースが続いてさ。多発し過ぎてニュースにも出ないの。世界各地でそんなことがあるみたいで…

で、途中から変なことになってきた。


変なこと?そいつが巨大化したとかか?


怪獣じゃん!そうだったらまだよかったかもね。

ニュースが流れなくなったんだ。


は?


ニュースだけじゃない。生放送の番組も、オタクの掲示板も、動画系は全部かな。つまり、今の状態になったんだ。


制限されたんだろ?


初めはボクもそう思ったんだ。でも違った。他愛もない内容のものも全部写らなくなった。

誰か言ってたよ。

写らなくなったのって、大人が管理してるやつだ、って。

はっきりそうとは言えないよ?

だって、その頃もうボクたちこの部屋だったんだもん。でもね、多分…多分だよ?

大人たち、みんな食べられちゃったんじゃないかな?


おい!世界の人口どんだけだと思ってるんだよ?!


でも!そいつがそいつらだったら?


…一匹じゃないのか?


特徴は光ってるってだけ。

同じやつかはわかるはずないよ

ねえ?他の人からメール来てる?


メール?

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