第9話 〜ヴィンセント王子視点〜

アレックを保護者にとアヤネに紹介し、アレックたちが部屋を出てから、ヴィンセント王子たちが部屋を去った。


ヴィンセント王子は、アレックの様子に笑いを堪えていた。アレックが『勝ち取った』と言っていたのは、比喩ではなく事実だった。


〜ダニエルたちが部屋に着く数分前〜


ヴィンセント王子は、応接室に行く時に通る道の前で足を止めた。

そこは、騎士たちの訓練場だった。

騎士たちに集まってもらって、保護者になってもらう人を決めるためだ。


「お願いがあるんだ。門番がこどもを連れてここを通るから、そのこどもの保護者を決めて欲しいんだ。方法は君たちに任せるよ。よろしくね。」

そう言って、ヴィンセント王子は応接室へと入り、窓から騎士たちの様子を眺めていた。


最初は話し合いをしていた。それでは決まらず、ジャンケンをすることになった。人数が多く、やっと決まった保護者になる騎士は背が高く、ヒョロっとした人だった。「誰でもいいや。」と散らばっていき、訓練を再開していたが、しばらくして門番が道を通った。騎士たちは気になってチラッと見てから、固まった。

その子が通り過ぎてから、ポツリと次々に呟いていった。

「…可愛い。」「…え、まじで?」

「保護者誰だっけ?変えろ!」

「門番が羨ましい…」

そこから、また保護者を決めることになって、結局最後は戦力となった。


数分もしないうちに騎士たちが倒れていった。そして、最後の戦いがきた。

「…なぁ、アレック。俺は、アレックの先輩としてもっと強くなりたいんだよ。だから、あの子の傍で強くなっても良くねぇか?」

「ロイ先輩は後輩に強くならないで欲しいのですか?俺はちゃんと守れますよ。」

そう言って、ロイの剣を自分の剣で弾き飛ばして勝ったのだった。


「アレック、手加減してくれよ…。痛てぇなぁ。」

「本当だよ。俺もあの子守ってみたかったのにな…。また会いたい。」

「俺も会いたい〜。こんな男だらけのとこより、可愛い子の近くにいたい…。」

「あの子は癒しだな…。天使なのかな…。」

そんな騎士たちの言葉にアレックは気にしていなかった。

「俺は手加減などしない。そんなことしたら、本当に強い人が誰か分からなくなる。」


結果、アレックが保護者になったのだった。だが、アレックは、隅の方で自主練していたため、アヤネを見ていなかった。そのため、アヤネを見たあとに固まってしまったのだった。

そんなアレックの様子を見て、ヴィンセント王子は笑っていたのだ。


買い物を勧めて、自分たちも帰る支度をし、ノエルとシアに聞いてみた。

「ノエル、シア。あの二人、どう思う?面白くない?」

「そうですね。反応が面白いです。」

「僕も、そう思います。見てて面白いので飽きないと思います。」


門番にも聞いたが、答えは同じだった。やはり、誰から見ても面白いのだろう。


この後、もっとすごいことが起こってノエルが戻って知ることになる話は、誰も予想していなかった。

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