第3話 転生先の出会い
ドンッ
「イタタ…。」
光る道をたどって来たら、急に眩しくなり、吸い込まれたと思ったら数十メートル浮いた状態で森についた私は、落ちて思いっきりお尻を打った。
(お尻が痛い…。まさか空中とは思わないでしょ。)
地面に手をつけて起き上がろうとすると、手に何かがぶつかった。
「バッグ?こんなの私持ってたっけ?」
不思議に思い、中を確認しようと見たが何も入っていない。
バッグの近くに紙が落ちていたので読んでみた。
「なんだろ?えっと…。“綾音さんへ そこにあるバッグは、マジックバッグといって、とても便利なものですよ。使い方は簡単。バッグに手を入れて、欲しいものを想像すればいいのです。でも、入っていないものを想像しても何も出ません。そこで、中に何が入っているのかが分かるように、綾音さんの目を魔眼にしました。意識すれば使えますよ。それと、伝え忘れていたことがあります。そちらの世界では、綾音さんの身体は使えないので、8歳の姿に変えました。見た目も違いますよ。あと、信頼できる人にしかこのことは話しては行けませんよ。精霊や聖獣には話しても大丈夫です。では気をつけて ミハイル”…え?」
(8歳?私は25歳だ、し…。え、手が小さい。)
立ち上がってみると、視界が低い。
足下を見ると、足が小さい。
(中身は25歳で8歳の姿になったのか…。)
手紙の最後のことが衝撃的すぎて、バッグのことは忘れ、顔が気になって川を探すことにした。
しばらく歩いていると、川が見えてきた。川の近くにモフモフした何かがいた。
近づくにつれ、狼だと分かった。
(そっと、そ〜〜っと。)
「それっ!!」 ボフッ
【!?】
私が飛びつくと、すごくびっくりした顔で私のことを見つめていたが、そんなのお構い無しに毛を触っていると、狼から声がした。いや、喋った。
【誰だ?なんで俺の毛を触っているのだ?というか、お前はなぜそんなに小さいのに一人で森にいるのだ?】
狼はそんな質問をしてきたが、毛を触っていたので適当に返してしまった。
「私は綾音。よろしくね。あなたの名前はなんて言うの?あと、毛。すごい綺麗ね。」
【あ、あぁ。…よろしく。俺に名はない。フェンリルという、聖獣の名はある。その、俺の毛を触っていて聞こえなかったのか?質問に答えてくれないか?】
聞こえてない訳では無いが、毛を触るのに集中してたのは本当だ。
「聞こえてますよ。えっと。触ってるのはモフモフしたかったからで、ここに一人でいるのは…。」
手紙では聖獣には話していいって言ってたよね。
「このままでは言いずらいので、何かいい方法ないですか?」
【念話はどうだろうか?従魔契約すれば出来るぞ。】
「しましょう!どうやるのですか?」
【お互いに契約したいと思うことと、俺に名をくれればいい。】
「名前ですか…。」
見た目にあってる名前がいいと考えて。いい名前を思いついた。
「レイ。どうかな?」
【レイか。いい名だな。気に入った。由来は?】
「カッコいいのと、クール系で、綺麗なグレー色の毛を持っているから、レイ。気に入ってくれてよかった。」
この世界に来てから、初めて自然に笑えた気がした。
「?どうしたの?」
笑ったら目をそらされたので顔を除くと、見つめ返された。
【べ、別になんでもない。契約が出来たし、これからはアヤネと呼ぼう。それより、念話でしか言えないこととは?】
【きこえてるかな?あのね、私は異世界から来たの。神様が間違えて、私は死んじゃったんだ。けど。また新しい人生を送って欲しいって。それで、おわび的な感じで願いを叶えてくれるって言うから、獣人のいる世界に行きたいって言ったの。そしたら扉が出てきて、道にそって歩けばいいと言われたから進んでたらこの森に出たんだ。あと、見た目は8歳だけど、中身は25歳なんだよ。】
簡単にまとめて言ってしまったので信じてくれないかなと思った。でも、心のどこかで信じて欲しいとも思っていた。そんな私の気持ちを読んだかのようにレイは答えをくれた。
【アヤネの言うことは信じる。けど、他の世界から来たということは、この世界には親はいないのか?】
その一言に、ドキッとした。死ぬ直前に思い出したことが、より強く頭の中に残っている。何も言わないで黙っていると、
【俺は、アヤネを責めている訳ではないぞ?ただ、頼れる人がいないと不安だろうと思ってだな。】
「…よ。」
【アヤネ?すまん、聞こえなかったのでもう一回言ってくれないか?】
「私のことをなんとも思っていない人達なんてどうでもいいよ!」
一回で分かってくれなかったのと、思い出したくなかったのに思い出してしまったことに苛立って、大きな声をだしていた。
「私のことを勝手に決めて、自由にさせてくれなかった!褒められたくて他の子の真似をした。頑張った、努力した!!それでも何も変わらなかった!変わったのは、私への扱いがまた酷くなったことだけよ!褒めてもらうために努力しても、関心が向くことはありえないんだよ。あの人達にとって私は道具でしかなくて、その道具が使い物にならないと分かれば捨てるしかない。でも、捨てたら周りからの評価が下がるからと、人前では私に普通に接してきた。でも家では!もっと酷い扱い…。私はあの人達の前ではただのあ操り人形なんだよ。逆らうことが出来ず、ただただ逃げるタイミングを見計らっては逃げて、捕まる。それが私の、私だけの日常!そんな人達、近くにいる方が不安よ!何されるかさえ分からないのに、もうあの人達の元へ帰りたいと思えない!」
一気に話して、あの人達のことを話してたから息が上手く吸えなくて、落ち着くために深く深呼吸をした。レイは、私を尻尾でくるんで、しばらくして落ち着くと、話し始めた。
【アヤネの過去の話も知らず、勝手に不安だろうと言って悪かった。俺としても、そいつらはアヤネを傷つけたのだから嫌いだ。25歳でも8歳の姿ということは、その姿はこの世界の新しい身体ということだろう。…酷いこととは、暴力か?】
「…うん。初めはビンタだった。そこからだんだんエスカレートしてって、背中とか足は見えない位置にアザが常についてた…。言いたくても誰にも言えなくてっ…グスッ」
ついに抑えられなくなって、泣き出してしまった。25年間我慢したままで生きていたので、辛かった思いが初めて話せて、スッキリしたが、思い出すとかなりキツくて涙が止まらなかった。
【落ち着いたか?これからはアヤネの生きたいように生きていいのだぞ。従魔だから、アヤネの意思を尊重するし、して欲しいことがあれば俺が叶えてやる。アヤネはもう1人ではない。俺がいるからな。】
初めて会ったのに、何この紳士狼。泣いたことを受け止めて、私についてきてくれるとか、カッコよすぎ。
「レイ〜。」
【どうした?】
「抱きついていい?」
【よいぞ。アヤネは俺の主なのだから、聞かずにしてくれて構わん。俺も嫌な気持ちにはならない。むしろ心地が良い。】
そんなこと言われたら遠慮しない私なのですよ。
「では、失礼。」 モフッ
「フワフワ〜。気持ちいぃ〜。」
暖かくて、全て吐き出したからスッキリして、泣き疲れて眠くなってしまった。ウトウトしていると、
【寝ても良いぞ。ここの森には誰も近づかん。なにか来ても俺がアヤネを守るから安心して眠れ。】
「ん〜。おやす…みぃ。」
私の転生初日は、泣き疲れて、モフモフに埋もれて寝て終わったのでした。
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