第174話 見せてるんだよ。(当ててるんだよ風に。)
「お風呂に入るのに全裸は基本だよ。ナニ不思議そうな顔をしてるの?」
茜が正論を唱えている。真秋は口をあんぐりと開けていた。
「わ、私は流石におに……真秋さんと一緒に入るのに、恥ずかしいので水着着用しました。お姉ちゃんの二番煎じにならないよう旧スク水+お尻のお肉少しぷっくら見せるバージョンで。」
いつの間にか一緒に風呂に入る事が決定付けされている事に疑問しか湧いてこない真秋の脳内であった。
それにそのお尻のお肉云々は絶対に茜の差し金だろと思っている。
悠子は未だに真秋の事を「真秋さん」と呼ぶ時に照れがある。そのため、最初にお兄ちゃんと言いそうになってから言い直していた。
「確かに俺的
真秋も何かぶっちゃけていた。風呂の湯気に脳がやられてしまったのだろう、のぼせる一歩手前の感覚とでもいうのか。
入浴のために髪を纏めて上げているのも少しポイント高かったりしている。
「ばかな……全裸の私には見向きもしない……だと!?」
茜はorzの体勢になって悔しがっている。
ほんの少しだけ盛り上がった胸が低い砂丘となって零れ落ちている。
「それで何でお前は感じてるんだよ。なんでちく……うおっほん。勃たせてるんだよ。」
悠子が傍にいるからか、「乳首」というワードは辛うじて飲み込んだ。しかし一文字隠しても簡単に伝わっている。
「こ、これが大人の女の余裕というものなのですか……」
何故か悔しがっている悠子がそこにはいた。
「悠子、それは違うからな。茜の行動の9割9分は真似しなくて良いからな。」
良い子は真似るな、真似たら危険だ。
「一分の望み?」
「もしかしたら何か参考にした方が良い事があるかもしれない程度の一分だ。それに一縷の望みだろ。」
「あ、モロ見え。」
茜の視線には真秋の……が見えていた。
立ったままの悠子からは角度の都合で見えてはいない。
「茜……また放送禁止になりたいか?お前の
「あ、いえ。最近瑞希ちゃん回と言わんばかりで、出番少なかったので調子こきました。スンマセン。」
「謝る気ないだろ。そうしたらこの後の事はわかってるよな?」
真秋は存外にこの後10分程は回想すらなく過ぎる事を指していた。
しかし茜は極端間違ったベクトルで考えていた。
「はいっ。さくっとお背中流して一緒に湯船に浸かりま……って痛い痛いい~た~い~。」
真秋はすっと移動し、茜のこめかみに春日部名物ウメボシを喰らわせる。
SとMの世界以外で、遠慮なく女子に手を出せるのはある意味真秋の美徳でもある。
性別で差別しない。しかしこんな事をするのは恐らくは茜に対してだけであった。
それはそれで唯一無二なのだけれど、当の本人達が気付いているかどうか……
「あ、あ、あ……見、見え……中尾ミエ……」
悠子が少し壊れかけていた。手のひらを覆って見えないようにしている心算であろうが、指の隙間からガン見えであった。
「大丈夫?帰ってきて悠子ちゃーん。」
茜が立ちあがり悠子の肩を掴んで揺らしている。
後ろを向いているため茜の尻がぷるんぷるんと揺れている。
形も張りも良いため、高級ゼリーでも見ているかのようだった。
伊達に夜のお店に勤めていただけの事はある。
身体の維持は怠っていないということか。
その後、妥協案で本当に背中だけ流す事は了承し、右半分と左半分をゴシゴシする事になった。
「エロいのは駄目だからな。」
真秋は釘を刺している。これ以上は最終防衛ラインだぞと。
「ぶ・らじゃー!」
右手を上げて宣言するものだから、ポロポロ見えてはいけないものが真秋に見えてしまう。
もはや茜に羞恥心は残っていないようだった。後で羞恥心でも聞かせてやろうか、CDどこにしまったっけかなと考える真秋だった。
「そういうのは普通男が言って引かれるセリフだからな?」
本当に高校卒業後からの茜の5年間に何があったのか。
茜バイブる(誤字ではない)でも発行してくれないかなと思う真秋だった。
高校時代の真面目な頃を知る人であれば、記憶喪失が異世界転移して数年して戻ってきたかを疑うだろう。
(エロくなければ良いのね。介護だってそうだし、擦ったり洗ったりは正常な行為なはず。)
茜の心の声は珍しく表には出ていなかった。
左側を担当する悠子はやや遠慮気味に、動きの中で真秋の前側が目に入らないようぎこちなく。
右側を担当する茜は大きな動きでわざとらしく身体を上下させていた。
真秋はもう気にしていないが、茜には今何度も見られているだろうなと思っている。
そして美人二人に身体を洗っておいて貰いながらも、下半身は反応を示していない。
瑞希の問題がほぼ解決し、普通の生活に戻れそうな一同ではあるが、本人達を囲う問題はまだまだ多い。
真秋が気付くと右半身を洗っている感覚に違和感を覚える。
茜はいつの間にかボディタオルではなく手のひらで背中を擦っていた。
真秋も背中だからとやかく言うのはやめようと思ったようで、何も言わない。
ちらっちらっと茜の行動を見る悠子の顔が、どんどん真っ赤になっていくだけだった。
「綺麗綺麗しましょうね~♪」
茜はこともあろうか、身体を乗り出し真秋の隙をついて……
「オイ。お前……」
真秋の眠れぬ獅子ならぬ、起きぬ獅子を泡だらけの手で掴んで洗い出した。
流石の悠子も茜の暴挙に時が止まったかのように動きが止まる。
「えっちではないですよ~、一日の汚れを落とすんだから~、綺麗にしないとね。医療行為にもあるし介護でもあるし。」
バシッと茜の腕を掴むが、茜も起きぬ獅子を掴んだまま離さない。
腕を掴んだ時の振動でさらに擦る事になるのだが、変わらず起きない獅子だった。
「お前、ここを最後の出番にしたいのか?」
「いいえ全然。だから洗浄ですってば。普通に洗体ですってば。」
「当人の意思の問題じゃねぇ、それを見ている人の判断ってものが大事なんだ。ほれ、悠子を見てみろ固まっちゃったじゃねぇか。」
「大丈夫、悠子ちゃんもじきに慣れるよ。それにタオルで擦ったら……痛いよ?」
「それはお前の擦り方が違うからだろうがよ。」
「実際悠子の動きも止まっちゃったしもう終わりだ。とっとと流して湯船に浸からせろ。」
茜は命令口調の方が言う事を聞く事は理解していた。それ故に強めに言っていた。
「あ、はい。スンマセンでした。」
謝る気はあまりないけれど、流石に悠子に悪いと思ったのか、それとこの場にいない瑞希にも悪いと思ったのか茜は流石に掴んでいた手のひらを開いた。
どうにか我に返った悠子を落ち着かせると、真秋は先に湯船に入る。
「いや、本当に入って来るのかよ。」
茜は遠慮なく、浴槽を跨ぐためにお股を広げて湯船に侵入してくる。
「お前、見えてるんだよ。」
「見せてるんだよ。」
「なんだよその当ててるんだよみたいな言い方は。」
茜に次いで悠子も湯船の淵を跨いで入って来る。
ざぶーんと湯船の中のお湯は減っていく。
全員が出たら恐らく半分も残っていないだろう。
所詮はアパートの浴槽なのでそんなに広くはない。
3人が体育座りで入ってもきつきつである。
「密着感が半端ねぇ。」
「じゃあ、私か悠子ちゃんがご主人様の上に乗る?」
「風呂場で対面座位とかアホか。」
結局そのまま、きつきつ体育座りのまま浸かっていた。
「お……真秋さんの筋肉、凄いですよね。こんなに厚いなんて思ってませんでした。」
直接見ながら言っているわけではないので、こんなに厚いと言うのは語弊があるが。
たまにちらっちらっと胸板や腕の筋肉を見ていた。
「まぁ野球は地味に続けているし、瑞希の元父と対決するかもと思って鍛え直していたからな。どうしても筋肉は付けたかったというのはあるかな。」
遠慮なく触って来るのは茜だ。
二の腕をぷにぷにと掴んでいる。
「それって何かあれば私達も守ってくれるって事で良いのかな?」
「そこについては差別はしない。今に至っては誰が欠けても嫌だとは思ってる。」
茜は「このツンデレさんめ~」と思っていた。
「そろそろのぼせるから出るぞ。」
ばしゃ~と湯船のお湯が更に流れ落ちる。
悠子にモロ見えしないよう配慮しつつ、真秋は湯船から出て行く。
「で、なんで一緒にあがってるんだよ。」
悠子は流石に恥ずかしさからか、まだ湯船に残っていた。
「ご主人様に衣服を着せるのはメイドの務めですにゃん?」
茜は手を頭の上で広げてねこみみを作る。
「駄目イドの間違いだろ。お仕置き欲しがる駄メイドだろ。」
「はうあっ。」と茜は再度orzの恰好となり、尻の割れ目が真秋にモロ見えしている。
「踏んでやらんからな。」
湯船に残った悠子は頭の処理が追い付かずに「ぷしゅ~」と放心していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます