第162話 NTRも連鎖する?
席に戻ると瑞希さんが真っ赤になって縮こまっていた。
一体何があった。大方お姉さんが何か言ったか聞いたかまたはその両方か。
緊張で水を飲み過ぎたのか空になっているではないか。本当に何を?
「あ、すけこましの旦那様のおかえりんご~。」
口調が砕けるのが早いんだよこのお姉さん。
まるで前からの知り合いだったかのように。
というかすけこましの旦那様ってなんだよ。
「こましてないしまだ旦那でもないんですが。」
「それ、部分的に色々認めてるって事だけどわかってるかな?」
あげ足取りも上手いようだ。
「妹含めて3人の嫁がいる事は瑞希からの話を聞いて理解してるよ。入店した時のカレンのセリフが良くわかったよ。」
そうですか。でも反論はしない。多分このお姉さんに言葉で戦っても勝てる気はしない。
「面倒だから内縁の妻3人で良くない?結婚なんて所詮は書類と扶養手当の関係でしかないし。聞いてる限り貴方達は全員一緒の方が良い関係を築けると思うよ。」
それを第三者に言われると返す言葉もないのだけど、今後どうなるかわからないけど、誰か一人を選ぶと二人はどうなってしまうのか。
仮に3人一緒のままだとして、子供はどうする。
将来児童参観日とかどうするのさ。
「そんなもの、最近は片親だって珍しくはないし、LGBTに対しても理解出来つつあるから事実上の一夫多妻も悪い事ではないんじゃないかな?」
それは……俺の不能が治らないとどうしようもないし。
そんな事、いくらなんでも3人は納得するのか?
ってそもそも明らかに好きだという話はしていない。
いや、なんとなく好意を寄せられている事には気付いているけど。
「見えないかもしれないけど、少し前まで女性不信だったんです。好意を寄せられてる事はわかりますが、それ以上の事に関しては現状考えられません。」
俺は詳細を話さず現状を伝える。
「そこに関しては流石に聞けないけど、多分それなりに回復してるんでしょう?まだ無理かもしれないけど、未来は考えても良いんじゃないかな。」
「姉の私が言うのもなんだけど、うちの妹は優良物件だよ。気は効くし気立ては良いし、おしとやかだし、一途だし。」
「ちょちょ、お姉ちゃんっ」
褒められ過ぎて制止する瑞希さんはかなり慌てているように見えた。
「そういえば、お姉さんにも吐き気は催さなかったな……大分不信に関しては良くなってきてるのかな。」
この論争については終わりが見えなくなりそうなので一度話を転換しようと別の話題を振ろう。
「そういえばお姉さんは地元に戻ってこの後どうするんです?」
たはーと笑いながら頬を掻いているお姉さん。どうやら無策だったのだろうか。
「実は転勤願い出してきちゃったんだよね……受諾されるかはわからないけど。」
仮に勤務地が変わらなくても、通勤出来ない場所ではないらしい。
電車で40分強揺られるだけで。
「私、前は外科の看護師だったけど、今は産婦人科の看護師なんだよね。これがどういう意味か……わかる?」
ふるふると首を横に振る瑞希さん。
「二人の子供は私が取り上げてあげ……」
「わうーうわー」
抗議の声がおかしなことになってますよ瑞希さん。
それじゃ可愛いだけですって。
真っ赤になる瑞希さんを見てお姉さんは下卑た笑みを浮かべる。
「え、何?瑞希もしかしてまだしょ……」
「わうわうわー」
激しく抗議の奇声で誤魔化そうとする瑞希さんは、女子中学生のように若々しく可愛く見えた。
「他の御主人様の迷惑になりますので……お静かにしていただけないと……」
「恥ずかしい秘密をバラ撒くにゃん♪」
☆ ☆ ☆
カレンさんに軽く注意され大人しくなる月見里姉妹。
え?ナニ?瑞希さんは常連だからまだしも、お姉さんも何か恥ずかしい秘密が?
「可憐、それは反則。」
「ナニを言ってるかわからにゃいにゃ~可憐て誰だにゃ~」
ネットやこういう独特な店舗では偽名が暗黙で認められている。
行政への提出は当然本名で行っているので問題ないのだけれど。
お店のねこみみメイドさんの名前は全員とは言わないが、殆どが源氏名である。
「カレンは永遠の17歳だにゃ~、14歳の頃から永遠の17歳だにゃ~。」
どこぞの声優や作者みたいな事を言い出すメイド長。もといオーナー兼店長。
カレンさんはそのまま去って行ってしまった。
さりげなく去り際に「コーヒーお替り3つにゃ。」と言いながら。
不覚は聞けないけど、カレンさんとお姉さんは知り合いだったらしい。
世間は狭いなぁと実感した。
「暫くは瑞希の所にお世話になろうかなと。」
「良いけど……家事は分担ね。」
どうやら契約が済んだらしい。
しかし個人的にはそれで良い気がしてくる。
件の父とやらの行方がわからない以上、人は多いに越したことはない。
「そういえば、お姉ちゃん。別れた後吉岡さんと連絡は?」
「ん?別れてから直ぐに出て行ったから取ってないよ?携帯もなくしたしね。下着や衣服類は別に捨てて貰って構わないと言ってあるし、大事なものは置いてなかったからね。」
「まぁあんな3股掛けるような人、別れて正解だよ。私の下着の他に見覚えのないものが混ざってるから最初は半信半疑だったけど。」
「結果的に分かった事だけど、私の下着に混ざって浮気相手の下着がしまってあるのには驚いたよ。」
「夜勤明けに帰ってきたら……行為の真っ最中だったんだよ。」
「眠さなんて吹き飛んだからね。その場で正座させて説教を始めて、2時間くらい?」
「まぁ、説教してもう別れるとなって、必要なものだけ持って出て行ったっきりだよ。謝ってももう遅い。土下座してももう遅い。」
「これがその時の説教写真。」
って見せるなよっ
正座して手を膝に当てているため、胸の突起とかは隠れている。
確証を得るには情報が少ないけど、先程ニュースで移された吉岡氏に似ていると思った。
「3股の他の2人は幼稚園の先生、市役所職員、ともに私と同じ歳だってのには驚きだったけど。」
「3人のうち誰かと結婚出来れば良かったとか言うんだからもう……ちなみにその時行為に及んでいた相手は幼稚園の先生ね。」
なんだか聞いてるとかなりゲスなんだけど、なんだろう俺の胸までチクチクしてくるのは。
「真秋君は股かけてないじゃない?平等に見ようとしてる。そのせいで一人に絞れないというか、好きになりきれないのかもしれないけど。」
「誰でも良いやというのと、誰も傷つけたくないというのは裏表かもしれないけど、その差はかなりあると思うよ。」
「だからこそ3人一緒で良いんじゃない?と思うわけなんだけど。現代日本人では難しいのかもね。」
「世の中には主従関係とかいって何人も飼ってる人とかいるけど……」
なんだか聞いてはいけないワードが飛び出た気がする。聞かなかった事にしよう。
そんなやり取りの傍ら、瑞希さんはスマホを操作している。
それはきっと……
「お姉ちゃんこのニュース聞いて。」
それは先程喫茶店で偶然流れたニュースのウェブニュースだった。
「嘘……」
先程までおちゃらけ調子だったお姉さんの動きと表情が固まった。
―――――――――――――――――――――――――――
後書きです。
もう少しで話が繋がります。
なぜ姉の彼氏?があんな目にあったのか。
関連性は不透明だけど先の2件とどう関わっているのか。
この作品は本当にラブコメなのか。←そこ一番重要じゃね?
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