第141話 田宮未美が絡むと全て万事解決
リビングで顔を赤らめた悠子ちゃんから衝撃の告白。
明日も臨時休校なので自宅警備員を継続させていただきますとの事だった。
「学校で何かあったの?」
新学期が始まってすぐに臨時休校なんて普通じゃない、何もないはずがない。
「うん。いつかわかると思うから先に種明かしするとね。登校日の日の事と、始業式の日の暴言やセクハラの証拠を校長先生に提出したの。」
なるほど。審議の程を確かめる時間と、その結果次第では処遇をどうするかを職員会議で議論検討しているという事だろうか。
「それとこれは本当に苦渋の決断だったんだけど、私の分のデート権利1回分譲渡という形で茜さんにも手伝って貰ったの。」
あれ?俺は承諾した覚えはないけど、デート云々は永遠にループするの?
「それで思った以上に音声データが集まって……それと私のお尻を触った男子生徒の指紋とDNAの照合とかもお願いしたから。」
何も言ってなかったけど、昨日はそんな色々な事があったのね。
夏休みという期間がありながら、未だにそういう事をするという事は恐らくは夏休みがなくても同じ事していたんじゃないかな。
近頃の高校生がみんなこうだとは思いたくはないけれど、それなりの人数が表裏合わせて悠子ちゃんを害したのだろう。
「私は苛めや不当な言いがかり、セクハラ行為発言、痴漢をどうにかして欲しくて校長先生に直訴しただけですけどね。」
まさか臨時休校にまでなるとは思っていなかったけれど、この際だからみんな思い知ると言いとも言っていた。
一ヶ月前と違って随分と逞しくなったものだと感じた。
「茜さんは、人によっては当然就職や進学に影響出るんじゃない?ざまぁとか言ってました。」
実際痴漢や登校日の時の強姦未遂、女子トイレでの出来事は看過出来る事ではないと思う。
「でもさ、それ次の登校日に全体朝礼みたいのがあって、その時に悠子ちゃんにスポットが当たっちゃうとかありそうだけど大丈夫?」
「それは覚悟の上だよお兄ちゃん。クラスメイトの何人か、部活の皆、お兄ちゃんもいるし、茜さんや瑞希さんという心強い味方もいるから。」
「よくよく考えてみれば、私は何も悪い事はしてないんだよね。お姉ちゃんが問題だっただけで。それなのに私が傷つけられたりっておかしいし間違ってると思うの。」
「噂が好きなのは人間だから仕方ないとは思うけど、時と場合を見極めて欲しい。」
噂の真偽はともあれ、あいつは誰とでもヤるとか、だったら自分ともヤってくれよとかは脳にお花畑が出来ているより酷いとは思う。
「俺は悠子ちゃんが清廉潔白な事は知ってるから良いけど、変な気起こして何するかわからない人もいるかもしれないから気を付けた方が良いよ。」
☆ ☆ ☆
風呂の準備をしている間に悠子ちゃんが夕飯の準備をする。
夕飯を食べると流しに食器を浸けて、風呂に入ってうぇ~いと小休止。
悠子ちゃんも強くなったなぁ、そして少しHな事に興味も出てきたんだなぁとしみじみ感じながらお湯に浸かる。
「あの声はどう考えても悠子ちゃんだよな。ヘッドホンからの音漏れじゃないよな。」
風呂を上がり、風呂上がりの一杯と思い冷蔵庫を開け麦茶を出そうとして手が止まった。
あの栄養ドリンクがないのだ。
どういう事だ?悠子ちゃんが取り出して隠した?飲んだ?何かに入れた?
でも流石に聞くわけにはいかない。
入れ替わりで悠子ちゃんが風呂に入っている。
決して覗きに行こうだなんて考えたりはしない。
それよりもあの栄養ドリンクの行方が気になる。
しかしその疑問はあっさりと解決した。
瓶ゴミ用のトレイに件の栄養ドリンクの瓶が捨てられていた。
いや、解決はしていない。
一体中身はどこへ?という問題が解決していない。
抑この栄養ドリンクは何の効果が……?
ラベルを見てみると……はい精力剤確定~
一応市販されているもののようだから変な副作用はないだろうけど。
気になる。一体中身がどこへいったのか。
俺の腹の中か?悠子ちゃんの腹の中か?またはその両方か?
しかし謎は謎のまま解決する事もなく、俺が高ぶって悠子ちゃんを襲う事も、悠子ちゃんが高ぶって俺を襲う事もなかった。
いつも通り俺がベッドに寝て、悠子ちゃんが下に敷いた布団に寝る。ただそれだけで何も面白みもイベントも発生しなかった。
敢えて言うなら何かが起こるのではないかと眼が冴えてしまい、中々寝付けなかったくらいだった。
☆ ☆ ☆
それから二日後、流石にその日は休校にはならず登校すると言う。
俺の方が出社時間が早いのでアパートを先に出る。
「あまり無理しないようにね。じゃ、行ってきます。」
「いってらっしゃい。」
ちなみに昨日も一昨日と同じような一日だった。
ひとりえっちをする悠子ちゃんを見るとなんだか切なくなってきたとだけ。
☆ ☆ ☆
「大丈夫だった?」
家に帰るとそこには既に着替え終わってリビングで宿題をしている所に出くわした。
「私は大丈夫。でも大丈夫じゃない生徒は多数出たね。茜さんの言う通りになったよ。」
「それって逆恨みとかされない?本当に大丈夫?」
「そればかりはなんとも言えないけど。私は何一つ悪い事はしてないからね。」
悠子ちゃんに話を聞くと、痴漢をした男子生徒と登校日に強姦未遂をした男性生徒はそれぞれ停学1ヶ月と3ヶ月。未遂とはいえ強姦しようとしたのだから3ヶ月で済むのならマシではなかろうか。
女子トイレでの蛮行を行った女子生徒達は停学1ヶ月。映像と音声があったために弁解の余地はなしとの事。
他にも過去に暴言を吐いた事が確認とれている生徒に関しては、一律停学1週間(土日を含めた7日間)がくだった。
「体育館の全体朝礼で、校長先生から名指しで今の処遇を発表したの。流石にそれはやり過ぎだと思ったんだけど……」
心を落ち着かせるように、一度大きく息を吸い込んでから吐き出した。
「先生の中に見知らぬ先生がいたんだよね。でもみんなは見知らぬ先生という認識だけど、私にとっては見知らぬ人じゃなかった。」
「あの人、変装した田宮さんだったよ。多分裏で色々してくれたんじゃないかな。何だか借りを作ったような気がして怖かったんだけど。」
そうだね。あの人に借りを作ると返すものが見当たらないもんな。
大体茜に何かを頼んだって話だから、そこから田宮さんに話が行くという選択肢があっても不思議ではないよなと思った。
「帰宅する時にね。その変装した田宮さんから声をかけられたんだ。茜が喜んでるからサービスだって。」
意味はわからないけど、お兄ちゃんハーレムの一員に正式認証されて、デートしたりとかもあったからそういう事なんじゃないかなと思う事にしたと悠子ちゃんは語った。
「というわけで、お兄ちゃん。茜さんにナニをしたの?」
ん?何か矛先というか話題そのものがすり替わってきたぞ。
「ナニもしてないって前に言ったけど?」
「ナニもしてなくて、あの田宮さんがサービスしてくれると思ってる?」
確かに田宮さんが何の見返りもなく何かをするとは思えない。
地獄の沙汰も金次第というように、良くも悪くもギブアンドテイクな関係である。
あの人がサービスというからには、茜を引き取らせようとしていた田宮さんの希望の一部を叶えた事に対する対価と思えば説明がつく。
「それで、やっぱり何かシたんだよね?」
悠子ちゃんの圧が凄い。宿題は既にそっちのけだった。
これはもう観念して端的に白状するしかあるまい。
「茜を椅子にしました。貞操帯付けました。それだけです。」
避けられない流れがあって、プレイの一環としてねと付け加えたけれど藪蛇だった。
俺は脱いでもないしやらしい事はしていないとも付け加えたのだけど藪蛇だった。
「へぇ、ふぅん。お兄ちゃんは鬼畜だね。あの同人誌みたいにっ。」
どの同人誌だよ。ネタなの?それとも俺の隠していた同人誌の事なの?
「私や瑞希さんにも同じような事したいとか考えてるんだ?」
何を言ってますかねこの子は。確かに悠子ちゃんはM寄りだとは思うけど。
瑞希さんはまだどっちかわからないけど。
「私は別に良いけど……」
何か爆弾が破裂する音が聞こえた気がした。
――――――――――――――――――――――――――――
後書きです。
少しHな流れになりそうですが、そうはなりません。
神様が見ているかもしれないのにそんな事は出来ません。
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