第140話 後輩のアドバイスと悠子のひめゴト
「あれ?悠子ちゃん今日学校じゃないの?」
7時になっても学校へ行く準備をすることなく、寝間着のままの悠子ちゃんを見て、疑問に思ったために尋ねた。
「昨日臨時休校になったと連絡が来たって言わなかったっけ?お兄ちゃんボケるの早いよ~。」
「あ、そうだったそうだった。でも臨時休校ってなんでだろうね。それと遅れた分の授業とかどうするだろう。」
まぁ土曜に出たりとか、4時間や5時間しかない日を6時間目まで授業にするとかで取り戻すのだろうけど。
「さぁなんでだろうね。今日は理科と国語と数学と保健体育だったんだ。お兄ちゃん保健体育教えて?手取り足取り。」
「なんか悠子ちゃん、茜に毒されてきてない?」
何となく茜のエロさの先端が垣間見えた気がする。言い方が少しやらしかった。
「あ……かね?」
悠子ちゃんの動きが止まって固まった。
「お兄ちゃん、前まで苗字で呼んでなかった?ナニかあった?ねぇ?この前のデートでナニかあった?」
この前と言うと8月末の順番デートの事だろうか。ナニかあったといえばあったけど……
実際に湧き出てはいないけれど、頬に冷や汗が流れているような感覚を覚えた。
「ナ、ナニモナイナリヨ。」
ちょんまげ武士のような口調になってしまう。
「う~茜さんに貸しを一つ作ったのは失敗だったかも……」
悠子ちゃんがここ数日おかしい気がする。今も何かを言っていたような……
「実際俺は出勤なのでもう出るよ。」
言っていて俺自身少し今の言葉がやらしいと思った俺も末期に近いなと思わなくもない。
「いってらっしゃいお兄ちゃん。1階や2階に寄らずに帰ってきてね。」
あれ?俺から言った覚えはないけど茜が1階に住んでる事知ってるのか?
それに同盟を結んでる割には協力的なのか敵なのかわからない関係だな。
☆ ☆ ☆
俺は今午前中の現場が終わって後輩と一緒に〇よ〇軒で昼食をとっている。
「なぁ、お前のとこには高校生の弟と妹がいたよな。」
「なんすか?確かにいますけど。」
ご飯を駆け込みながら後輩は聞き返してきた。
「お前もエロいDVDやゲーム持ってるって話してたよな。それらがある日、自分がしまった位置や向きと変わっていたなんて経験あるか?」
「う~ん。高校生の頃親が部屋の掃除をした時にバレてたりはしましたが、どうしました?」
「パッケージの並びは変わってないんだけどな。パッケージの中身のROMの向きが、自分が収納した時と微妙に変わってる気がするんだよ。それも一つや二つじゃなくて。」
「それは明らかに誰かプレイしてますね。先輩、例の結婚詐欺問題の後誰かと住んでましたっけ?」
あれ?なんかこれはこれで藪蛇だったか?
「まぁ隠しておいても仕方ないから言うけど、3人の女性が家に来たりする。」
悠子ちゃんが同居している事は流石に避けておく。
「あ、それ確実に見られてますね。最低でもチェックはされてるとみたほうがいいですよ。というか3人てなんすかハーレムっすか?鬼畜っすかスケコマシっすか?リア充爆発すれば良いのに。」
「いや、お前に言われてもな。結婚間近の相手がいるくせに。進み具合でいえばそっちの方がいってるだろうに。」
「そういう問題じゃないっす。人数がおかしいっす。先輩が3人に言い寄られてるって事は2人の男子があぶれるって事です。」
それは確かに……人数の問題ではないけど、一人が複数侍らせるとその分あぶれる人が出るのは納得のいく話。
「で?その3人はどんな感じなんすか。清楚系すか肉食系すかメガネッ娘すかJSですか?」
ヲイ、最後のJSってなんだよ犯罪じゃねーかよ。怒涛のように流れて言うから聞き流そうとしたらとんでもないのが出てきたな。
「JSって流石にダメだろ。」
近所の子を半日面倒を見るとかじゃないんだから。
「じゃぁJCっすか?」
それもどうなんだよ。家庭教師くらいならありかもしれないが。
「JKだよっ……あ」
こいつの口車に乗せられて滑られてしまったと気付いた時には遅かった。
「JKもダメですよパイセン。」
「いや、18歳だから現行法では一応成人だ。もっとも手は出していない。抑そういう事する気力はまだ湧かないし。」
「で、他二人は?」
「一人は秘書で一人はナース。」
嘘は言っていないはずだ……
茜は田宮さんの秘書的な立場だと以前に言っていた……気がする。
「やっぱりハーレムリア充は爆発するといいっす。」
「ハーレムじゃねぇ。誰ともそういう関係には至っていない。」
「リア充はモテ期を誤魔化そうとするもんっす。誰も泣かしちゃだめっすよ。」
急に真面目な事を言い出すものだからつい戸惑ってしまった。
「それはわかってるさ。一時期程心は荒んでないからな。少しずつ落ち着いてゆとりは生まれつつある。」
だからこそ気付いた18禁ゲームやDVDのパッケージ内の向きの違いなんだけど。
「やっぱりこっそり見られてると考えるのが妥当?」
「打倒っす。いや妥当っす。先輩、アレだから身体的なスキンシップ全然してないでしょ。」
後輩のいう事はもっともなんだけど。俺は男女の付き合いをしているわけではないからな。
後輩の言うスキンシップは恋人であれば当てはまるけど……
って3人と恋人ってそれはそれでゲスじゃないだろうかね。
「さっきは爆発すればと言いましたが、3人が本気で先輩も本気ならそれはそれで良いんじゃないかと思いますよ。」
「法律上結婚は一人としか出来ませんが、同居とかなら問題ないですし。子供の問題は……役所の手続きとかの問題もあるでしょうけど。」
「最近はジェンダー問題とかも取りだたされて昔に比べて住みやすくもなりましたし。一夫多妻とか一妻多夫とかもそのうち認められる世の中になるんじゃないっすか?」
「そうする事で少子化問題が解決されるならあっても良いとは個人的には思います。」
「なるほど、そういう意見も否定は出来ないな。でもな、俺自身どう思ってるかわかんないんだよな。」
「誰一人悲しませたくないとは思うけど、それってただの八方美人の延長じゃないかなって思うし。」
「先輩の元恋人を奪ったクソ野郎みたいなのは死ねば良いのにとか思いますけど、先輩みたいに真剣に悩んでる人ならアリだと思いますよ。」
なんだか後輩に元気付けられるのと同時にハーレムにすれば良いのにと後押しされてる感が否めない。
「それとさっき言いましたスキンシップの事ですけど、何もキスしたりセックスしたりするだけがスキンシップじゃないっすよ。」
「ん?まぁ確かにそうだろうけど。」
「何気ない時に手を握ったり、頭を撫でたり肩を寄せたりするだけでも良いんす。先輩はこれまで一人しか見てなかったから気付いてない事が多いと思いますよ。」
18禁ゲームやDVDの話から、俺がハーレム築けば良いのにとなり、3人への気持ちに気付けば良いのにという話になっていた。
おかずの味噌カツを食べながら俺は3人へ対してどう思っているのか考えてみたけれど、答えは出なかった。
☆ ☆ ☆
家に少し早いけど今日は定時ダッシュを敢行する事が出来た。
新人の時以外での定時ダッシュは……いくら政府が働き方改革がどうのといったところで中々可能な事ではない。
もちろん先輩達曰く、昔は20時21時は当たり前とか言われていた時代からすれば19時前には普段から帰れるようになっただけでもマシとは言っていたけど。
正直残業ありきな会社でもあるので、給料には響いているらしい。
その時代を知らない世代には中々うまく伝わらないかも知れないけど。
先輩達の時代はポケベルで呼び出しを喰らうと言っていたくらいだからね。
早く帰れたので悠子ちゃんを驚かせることが出来るななんて思って、朝言われた通りに1階にも2階にも寄らず(普段から寄ってるわけではないけど。)真っ直ぐ家に向かう。
「ただいま。」
もうこの挨拶が常となっているために、今ではもう呼吸の次くらいに慣れてしまった。
あれ、おかえりなさいがない。
買い物かな?と思い部屋に向かおうとして違和感を感じた。
どんな?と言われても説明は出来ないけれど。
微かに部屋の扉が開いている。そして何か声が……
「……んっ……ぁっ……」
何やら嬌声が漏れ聞こえていた。
恐る恐る近付いて、ゆっくり少しだけ扉を開け中の様子を覗いてみると、ヘッドホンを付けた声の主が右手でマウスをクリック、左手で自分の……をクリックしていた。
いや、後ろ姿だから正確な位置はわからないけど、あの腕の角度はそうう事だと思う。
そして画面には……茜が悦びそうなシーンが映っていた。縄に縛られ吊るされた美少女が前から後ろから……
でもその声の主は茜ではない事が問題だ。
俺は音を立てないようにリビングに向かった。
部屋にスーツを置けないためそのままの恰好で冷蔵庫から……麦茶を取り出そうとして冷蔵庫の袖に見慣れない栄養ドリンクを発見する。
俺は買った覚えはない。でも流石に悠子ちゃんが買うとも思えない。これは茜の仕業だな。
20分後、何事もなかったかのように悠子ちゃんは目の前に座っている。
「お兄ちゃんの部屋掃除してたの。色々あって少し遅い時間になっちゃって。」
「そ、そう。いつもありがとう。」
もしかすると、Hなラノベがなくなったと思ったのは気のせいではなかったのかも知れない。
誤って悠子ちゃんの部屋にある本棚の奥にしまったと思ったけど、最初は自分の部屋にあったけど紛失したと考えるのが妥当だと思った。
さっきのあれは……
小さい頃から見ていただけに複雑な思いだ。
考えても見ればもう18歳。そういった事に興味があってもおかしなことではない。
自分に当てはめれば……そういう事していたわけだし。
「顔、赤いけど大丈夫?」
「だだ、大丈夫だよっ鬼ぃちゃん。」
なんだか今言葉のニュアンスがおかしく感じた。
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