第137話 茜のMP(マゾポイント)はこんなものではない。

 ※やりすぎてお叱りを受けないように努めます。



 「きしょい。」

 俺は唐突に高校時代の制服を着てもじもじしている小澤に向かって言い放った。


 いつの時代の女子高生だよという短いスカート。

 国民的一家団欒アニメの海藻の名前の女の子のような短さ。


 いや、お前高校時代はスカート長かったろと。

 長いと言っても腿くらいの丈だったけど。殆どの女子生徒がそうだったけど。


 「はぅっ。」

 ビクッとしてつんのめる小澤を見て、こいつ今ので感じてしまったのか?と思ったのは自然な事だと思う。


 「何気ない言葉なのに私の脳髄に突き刺さる。これはもはや言霊としか言えない……」


 もじもじしていたのに今ではぐねぐねと身体をくねらせていて本当にきしょい。


 「それで?田宮さんを使ってまで俺を呼んだのは?」



 「とりあえず、ここに座って。」

 横長のソファに案内される。


 「どうぞ。」

 小澤が出したのは、翼を授ける~な飲み物だった。

 外は暑いし炭酸は気持ちいいけれど。

 ぷしゅっとプルタブを開けてごくごくと喉に流し込んだ。


 「先日瑞希さんと楽しんだんでしょ?多分健全なミニデートみたいなの。」

 ハプニングはあったものの、本来はカラオケなのだからミニデートと言われてもその通りだとは思う。


 「次は私の番でしょ?これは3人で話あって決めた事だから順番なんだけど。」

 最初に悠子ちゃんの分とばかりに広げた指から親指を折り、続けて瑞希さんの分とばかりに人差し指を折っていた。

 そして自分の番とばかりに中指を折った。


 「俺に拒否権はなかったけどな。」


 「それでも付き合ってくれるんだから優しいよね。」


 「まぁ見方を変えればリハビリ……ともとれるし、精神科の先生がいうにはお前達3人に女性不信を治すために協力してもらうのも良いという話だったからな。」

 少しニュアンスが違うかもしれないけど、概ね間違ってはいまい。

 

 「結局私の無料券は使ってくれないじゃない?悠子ちゃんと瑞希さんではラッキースケベはあっても意図的だったり自分の意識での性的なスケベは奥手そうだし。」

 「こういうのは私が先んじてやるしかないんじゃないかなって。」


 「いやだって無料券は何に使っても良いって言ってたじゃんか。」


 「そうなんだけどね。一回だけでも前向き性的に使ってみない?もちろん黄葉君は脱がなくて良いから。」

 「ラッキースケベでJKの裸見たりナースと頬触れたりは出来るのだから、少しは改善してるんじゃない?」

 まるで見てきたかのように言うな……

 ラッキースケベを含めて俺の育成シミュレーションゲームでもしているかのような……


 会話、遭遇イベント、デートイベント等で女性との付き合い方、触れい方のパラメータを上げて。

 さしずめ小澤は肉体的、それもエロに特化したパラメータを上げるとでもいうのか。

 でも小澤はドM。上がるのは俺のS度か?

 エロ行為そのものはあのともえとの日々があるから、取り戻しさえすれば人並み以上なのかもしれないけど。


 奴隷が主人を育てるというのもある話だし。

 え?俺将来調教師とかになっちゃうの?ないない。

 だいたい誰がそんなゲーム買うんだよ。

 

 隣に座っていた小澤が身体を浮かせたかと思うと密着して座り直してきた。

 これもある意味ではゼロ距離といえなくもない。


 妙に緊張してきたので周辺を見渡し、本当は部屋に入ってきた時からツッコミたくて仕方がなかった事を小澤に聞いてみる事にした。

 まずは壁に向かって指を指して問いかける。


 「なぁ小澤、いくつも質問があるのだが……あのXの形をしたやつは?」

 「一般的に良く目にする典型的な磔台だね。やめろ~ジョッカーぶっとばすぞぉとか言いたくなりそうだよね。」

 それから続けて指を指して質問を続けていくことにする。

 

 「あの板に3つの穴が開いてるやつは?」

 「それも磔台だね。首と両手首を通すんだよ。身動き取れないから口に突っ込めるよね。」


 「あの1枚板に穴が4つ開いてるやつは?」

 「あれは手首と足首を通す穴だよ。お尻がぴーんと突き上げて、雌奴隷を実感できるよ。四つん這いとか目じゃないよ。」

 「というか磔台ってたくさんあるから用途によって使い分けできるよ。」

 

 目をランランと輝かせて磔台の説明をする小澤が生き生きしているのは見間違いではない。

 小澤が尻を中心に下半身を左右に振っているのが衝撃で伝わってくる。

 

 「悠子ちゃんと瑞希さんは所謂純愛てやつじゃない?でも私のように性癖を全面に押し出すのもある意味では純愛じゃないかなと思うようになったんだよ。」


 「あの二人は正攻法で女性不信を治す手助けを、私は性的な不能を含めた女性不信を治す手助けをと思ってるんだよ。もちろんお互いにこれ以上はダメっていう線引きは必要だとは思うけどね。」

 そう言って、小澤は紙に何かを書いて手渡してきた。

 そこには「私にNGはないよ。」と書かれたメモ帳の切れ端だった。

 NGはないけど、出来れば私を黄葉君以外の男性と性行為をさせるようなプレイは遠慮して欲しいと付け加えてくる。

 なんのこっちゃ。


 スワッピングやネット小説等にあるネトリネトラレとかを指すのだろうけど。


 なんだか俺が小澤のご主人様になる事前提で話を進められても困るのだが……

 



 「そういや小澤、ここに来て口調が大分変ったな。」


 「それは多分、黄葉君のおかげだよ。高校時代の私はもういないし、単純なM嬢の私ももういない。一つ二つと吹っ切れる事でNEW・AKANEになったんだよ。」

 「正確にはキャラ被りしたくないだけというのもあるけどね。」

 悠子ちゃんも瑞希さんも真面目系・清楚系だから。髪も黒髪セミロング・黒髪ロングと少し被ってるし。

 小澤も髪は短くしているけど黒髪だ。そして3人共貧乳。うん、色々と被ってるな。

 俺の下半身が被ってるかどうかはどうでも良い。日本人の7割は仮性だという話だ。

 

 こう考えてみると3人共好みに近い事は否定しない。


 「差異を求めたいということか?3人共似てるとこはあっても別人だもんな。個性を見て欲しいと?」


 「そういう事かな。私は過去の事があってエロにステータスが偏ったみたいだけど。」

 スカウターが欲しい。自分を含めた4人のステータスが見てみたいと思ってしまった。

 ただ、小澤の個人個人を分けて見て欲しい的な物言いもわからんではない。

 

 俺の場合このままいくと散々クズ男だのと罵ってきた喜納のようになってしまうのではいかという思いがある。

 リハビリは必要だとも思うし、将来結婚もしたいし子孫だって残したい。

 現状のまま流されていくと3人を侍らせているクズ男なんじゃないだろうか。

 場合によっては増えたりも……


 「黄葉君は深く考えすぎ、重く考えすぎ。色々発覚してまだ半年程度だからすぐに立ち直って次に進むのが難しいのは私自身よくわかってる。」

 「だから急に状況が変わって、私達が強引に感じるかもしれないけど……ほら。私だったらお試しでもなんでも好きに出来るよ。」

 「便利な女……というのは違うけど……こんな事言うのは黄葉君だけなんだからね。」

 何そのツンデレ女子の定番のような言い方。少しグッときてしまったではないか。


 じゃぁお試しというのなら……遊び感覚で其の案に乗ってみるのも手か。

 本気にならなければ良い。

 本気になっても良い。

 

 そういう事だろう。

 その理屈で本気で3人を侍らす事になってもクズ男のように扱わなければいい。物ではないけれど。

 若干1名物のように扱われても喜びそうなのが目の前にいるけど。




※以下プレイに入ります。口調や行動が変わります。



 「3号、そういやお前、何で俺と同じソファに座ってるんだ?それになんで人間様と同じ服を着てるんだ?」

 あ、なんか俺のスイッチが入ったっぽい。本当に唐突だなと、割り切ったわけではないけど。

 やっぱりどこかで異性を求めているのか。

 小澤の事をかつてM嬢時代に呼ばれていた名前で呼んだ。


 「も、申し訳ございませんご主人様。」

 小澤はさっとソファの前に伏せ土下座をして謝罪する。小澤もあっという間にスイッチが入ったようだ。


 「服は高校の制服そのままで良いから四つん這いになって身体を床に水平にしろ。」


 「かしこまりました。」

 小澤は命令を受けると、熟練の動きで四つん這いの体勢となった。


 「どっこいしょうきち~。」

 俺は小澤椅子(背中)に腰を掛ける。


 「はぅぁっ」



 「椅子が喋るっておかしいなぁ。これ不良品かなぁ。返品しようかなぁ。」

 その言葉を聞いた小澤は口を紡いで、以降は耐えていた。


 俺はスカートの方へ目を向けると、その先に微妙に生尻の一部が見えるのを確認した。

 こいつノーパンかよ。神が与えたもうた神器おぱんつは身に付けないのかよっ。 


 「肘置きが……」

 小澤の頭に肘を置いた。しかし距離があるため、あまり良い肘置きとは言えなかった。


 「ここには手置きが……」

 俺はスカートの上に掌を置く心算だったのだけれど……

 誤ってその先、先程見えた生尻とその先にまで指が掛かってしまった。


 「あ……」

 少し素に戻ってしまう俺。

 いや、椅子になった小澤が、何故かこれだけで……ねぇ?


 「スライムにでも触れたかと思った。ばっちぃ。」

 そう言ってスカートで拭き取るその液体。


 声に出してはないけど、小澤は悶えていた。この身体に伝わる震えは俺の体重が重いからではないだろう。


 「椅子の足に触れたら濡れるとかこれやっぱ不良品だな。」

 それから俺はスマホを取り出し、プリ〇ネを立ち上げた。


 「そういえば今日のログインまだだった。」

 おかりなさい主様とコッ〇ロちゃんからログインボーナスを入手後、定番の経験値とマナクエストを終える。


 「あ、イベントもスキップチケット使わなかったから30分もかかちゃったな。」

 たまに揺れた椅子だけれど、未だに硬度も変わらず床に水平を保っていた事に感心を覚えたりもする。

 流石にヤバイ方が漏れそうなんて冗談はしないけど。

 ふと床を見てみると何か小さな水たまりが出来ている事に気付いた。

 椅子の足も何やら濡れていた。


 「ゴルフゲームの練習しようかな。それともゲーセンにあった騎手体験するゲームにしようかな。」

 どちらも何かを振るって目標物に当てるという点では変わらない。

 前者はもろに見えてしまう、後者は乗って叩く、両者の内容としては少しニュアンスは違うけれど。

 


☆ ☆ ☆


 結局ゲームは持ち越しとなった。

 道具が足りていなかったという残念な結果になった。

 もっとも本当に残念がっていたのは、俺ではなく小澤こと3号の方だったけれど。


 リハビリと称していても、流石に長時間は精神的にも衛生的にもまだまだよろしくないのでここら辺で終わろうと思う。

 椅子になっていた小澤には直立させてある。顔は何かを耐えるように必死であるけど。

 

 「両手でスカートの裾を持ち上げろ。それでそのまま立ってろよ。」

 小澤は一瞬驚愕の表情をした後に軽く笑みを浮かべ、スカートの裾をおずおずと持ち上げる。

 もちろん穿いていないので茂呂美恵である。(誤字ではありません隠語です。)


 「これで良いか。」

 俺は一つの拘束具を持ち出し、しゃがむと目の前にはもちろん広がる三角地帯。

 慣れた手つきではないけれど、小澤の腰に回してせっせとそれを取り付ける。


 「え?」

 驚いた小澤は驚愕に不安な表情を覗かせた。


 「何を驚いている。お前も勝手知ったる貞操帯だろう。」


 「あ、それはわかりますけど、これ穴開いてない上級者向け……」


 「いや、お前はどう考えても上級者だろ。」


 「そうではなくてですね。これ、前も後ろも穴が開いてないので……」


 「不衛生だよな。本当はドマゾなんだから喜んでるんじゃないのか?」


 「あ、いや……こんな姿を悠子ちゃんや瑞希さんに見られたくはありません。せめて穴の開いてるのにしていただけませんか?」

 こいつは……この姿をあの二人に見せるつもりか。

 まぁ本気半分冗談半分だろうけど。


 「仕方ない。じゃぁこっちのやつで勘弁してやるか。」

 貞操帯を外すと既にそこには更なる雌の証が糸を引いていた。


 「しっかり感じてるじゃねーか。」




 その後、時間となったからか田宮さんがやってきて俺と小澤を車に乗せて駅前へと案内してくれた。

 部屋に入ってきた田宮さんの一声……「先程はそこそこお楽しみでしたね。」にはどう答えていいかわからなかった。



☆ ☆ ☆



 私服に着替えた小澤のスカート丈は腿くらいのミニスカート。

 風が吹いたらその中は安易に見られてりまうくらい。

 歩道橋を歩こうものなら下にいる人に覗かれてしまうくらいには短い。


 もちろん捲れたとしたらその中から現れるのは下着ではなく、先程新たに着けられた貞操帯なんだけれど。

 そんな見られちゃうかもというドキドキを抱きながら、俺と小澤はアニスミアに来ていた。


 「旦那様と雌豚奥様ご案内にゃ~。」


 カレンさんには何も言った事もないし説明した事もないのに何故か的確に突いてくる。

 もしかしたらどこかで見ていたのではないかと思いたくもなってくる。


 「小澤はあんなんでも良かったのか?」

 今日の事をどう感じたのか率直に気になったので聞いてみた。

 悠子ちゃんはただの見られ損、瑞希さんはカラオケデート。バランスが取れてるとは思えない。

 これは俺の意見だからそう見えるのかも知れないけど。


 「私は満足出来たデート調教だったよ。」

 なんだかルビがおかしい気がする。


 「だから黄葉君は重く考え過ぎなんだって。軽く考えられても困るけど、これは私達の戦いだしそれぞれの持ち味を生かさないといけないものだから。」

 確かにその観点で言えば、小澤はエロだし瑞希さんはコスプレか。

 悠子ちゃんもコスプレはするけど実力は瑞希さんのが上みたいだし。


 会計時、カレンさんに何気なく聞いてみた。

 なぜ小澤の事を雌豚奥様と言ったのか。

 「雌豚の香りがしたにゃ~。ご主人様ほどほどににゃ~。」

 結果、解決はしなかった。

 下半身も解決していない。

 

 ただ、裸体に対して嫌悪を抱かなかったという事は前進なのだろうか。

 もっともこの3人以外だとどうなのかはわからないので早計かも知れない。


 家に帰るまでがデートだと昔エライ人が言っていた。

 だからこういう事をした後ではあるけれど、俺は小澤を送る事にした。


 小澤の右とか左とかの案内に従って進んでいくと……


 「お前も同じアパートだったんかいっ!」


 「103号室だよ。」


――――――――――――――――――――――――――――――

 後書きです。


 真秋はたまにリハビリする事になるかも知れません。


 忘れたわけではないけど、喜納君たちの裁きもないわけではないです。

 差し込むタイミングがないだけです。

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