第134話 童貞を殺すしまぱん

 「あっ……」

 右頬に当たる柔らかくて少し暖かい感触。

 それが頬だと理解するのに時間は必要なかった。


 それどころか身体の至る所が重なりあっている。

 伝わってくる鼓動は酒のせいか、それとも……



 「ぁ……んっ。」


 何を喋ったのかはわからなかったけど、その声はとても妖艶に感じ直接触れている肌を伝って心臓の鼓動を速めていくのがわかった。


 「だ、大丈夫ですか?」

 そこで普通の言葉をかけてしまうあたりボキャブラリーのなさを痛感する。

 素直に心配なのだから不正解ではないのだけれど。


 頬が触れ合っているという事は、見えないけど顔か額が床にぶつかったりしていないだろうかと思う。


 「ら、らいひょうぶれす。」

 今呂律が回っていないのは酒のせいか、恥ずかしさからかその両方なのか。


 俺は結構恥ずかしい。

 心臓のドクドクと早い鼓動から理解出来るだろう。


 ともえと決別してから誰かとここまで密接した事はあっただろうか。

 手を握ったりとかはあっても、ここまでのゼロ距離は……



 悠子ちゃんのマッパを見たり、月見里さんと現在進行形で密着してるのに。

 端から見たら死ねば良いのにというような状況でありながらも、悲しいかな俺の下半身は頭を垂れたまま。

 もちろん力を入れる事は出来る。力を入れるとぴくんと動く事は出来る。

 でもそれだけだ。何度も力を入れればぴくんぴくんとなりそのうち勃っていた頃が懐かしい。


 なんで少しえっちな考えを過ぎらせているかというと……

 心臓の鼓動が早いのは多分お互い様なんだけど、少し落ち着いて目線を足側に向けると……


 絶対領域どころか少し見えてるんですよ。

 オーバーニーソの上方側のふとももの裏側と、転んだ時に少し捲れてしまったスカートの端から申し訳なさそうにほんの少しのしまぱんが。

 初音ミクコスをした事ある人ならわかると思うけど、童貞を殺す縞パンですよ。


 水色掛かった黄緑に白のしまぱん。

 俺は白と薄いピンクのしまぱんと薄い水色と白のしまぱんが好きだけど。

 

 月見里さんは気付いているのだろうか。

  


 「あ、あの月見里さん?」


 「ん~、みじゅきってよんれくらさい。」

 耳元で月見里さんの綺麗で可愛い声が聞こえてくる。

 これがASMRというやつだろうか。違うか。


 ピンクのボキャ天♪並みの妖艶さも兼ね備えていた。


 「やま……」

 「つ~ん。」

 つ~んって小学生かって。


 「や……」

 「つんつ~ん。」

 だめだ月見里さんにお酒を飲ませたらだめだ。もしかすると温泉宿等で出る食前酒もだめかもしれない。


 「瑞希さん。」

 俺は覚悟を決めて下の名前で呼んだ。悠子ちゃんと違って妙に気恥しい。

 3号?あれは別。なんかもうあれはあれで割り切れている。


 「ひゃい、なんれすかさん。」

 転ぶ前にもだけど、これで名前で呼ばれるのは二度目。

 酔うと性格と勢いが変わり過ぎだよ。


 酔うと寝てしまう俺がまだまだ冷静に考えられるくらいだから。


 「大変申し上げ難いのだけれど……し、しまぱん少し見えてま……」



 「……見せてるんです。」

 え?何そのラノベで定番の「当ててるんだよ」みたいなのは。

 え?え?本気??


 と思ったら月見里さんの呼吸が早くなってきた。耳の真横に口があるのだからもろに息遣いが聞こえてくる。

 本当は今にも立ち上がってスカートを押さえたいのだろうけど、後に引けなくなってしまったのではないかと思う。

 でなければさらなる鼓動の速度アップと息遣いはありえないだろう。

 

 元々小澤のエロ担当的な言動、先日の悠子ちゃんの全裸ハプニングが月見里さんを大胆にさせているのではないかと思う。

 たまに漏らす自分だけ何もない的な発言から察するに、これはチャンスだと踏んでるんだろうなぁ。


 気付いてるよ。みんなが必死にアピールしようとしている事を。

 悠子ちゃんと小澤は昔の事を知ってるからともかく。

 月見里さんがなぜ俺に好意を寄せているのか、それがわからないと3人との付き合い方がわからない。


 踏み込んだ話があるからかもしれないけど、それを自分から教えて欲しいとも言えない。

 だからそこは話して貰えるのを待つしかないけど……


 エロゲ―やギャルゲ―であるならばこれは好感度UPイベントだと思う。

 俺の言葉や行動一つで前にも後ろにも進む。

 エロゲ―だったら押し倒すとかも選択肢にありそうだけど。尤も俺は不能なので何も出来ないけれど。


 少しぷるぷると震えているのがわかる。

 スカートがぷるぷると動いているからね。それとしまぱん越しに可愛いお尻も。

 いかんいかん。最近少し脳がエロくなっている。

 小澤じゃあるまいし……


 それとも思考がエロくなってきたのは不全からの回復傾向なのかな。



 「あの、俺だけいろいろ役得な気がするんだけれど……」

 月見里さんのお胸も殆ど膨らみがない。だからこうやって密着しても弾力というものは殆どない。

 女性特有の肌の柔らかさは実感しているけど。


 「月見里さん?」


 「み・ず・き。」

 俺の呼び方が戻っていたからか、口調をはっきりと「瑞希」アピールしてきていた。


 「あの瑞希さん?色々当たっているし見えているし色々温かいよ?」


 「あ、当ててるんですし見せてるんでしゅ。二人に勝つにはこうするしか……」

 月見里さんの覚悟が垣間見れたりはするんだけど、それに恋愛は勝負だとかも言うけれど、女の子は一度突っ走ったら止まれないのだろう。


 まだ真正面から受け止められる程ゆとりはないけれど、触れているからか……心が洗われているかのようだった。

 あぁ、看護師だから無意識に癒しを与えているのかもしれない。



 「本当は私だってはじゅかいしい。」

 小さい声ではあったけれど、耳の真横に月見里さんの口があるのでその音声は拾えていた。

 だからこそ今の言葉はお酒じゃなくて照れ噛みだと思った。


 それと仲良くなるならない関係なしに、今後月見里さんにお酒は飲ませないと誓った。

 不能が治っていたら襲っていたかもしれない。

 そう考えてしまうくらいに、感情も身体も昂っていた。


 


――――――――――――――――――――――

 後書きです。

 今話中ずっと頬はくっついたままです。 


 このまま押し倒していたらコスプレHでしたね。


 流石に次話まで引っ張りはしませんよ。多分。

 ドン亀並みの進み具合になってしまいますし。

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