第125話 新婚さんいらっしゃいに出るならネタになるけど。

 悠子ちゃんと小澤がきゃっきゃうふふしながら仲良く風呂に入っている。

 その前に二人が言った事といえば……


 「覗いても良いのよ。」

 なんて言いながら風呂に向かった小澤。


 「お、おにいちゃんになら……ごにょごにょ。」

 最後の方は聞き取れなかったけれど、悠子ちゃんも何だか小澤に近い事を言っていたきがする。


 そして今は二人は風呂場の中で……

 百合の華が咲いてるかどうかは俺にはわからない。


 俺は夕飯の準備、月見里さんは真下の自分の家にお泊りセットを取りに戻っている。



 一体なんなんだろう。

 この8月に入ってからの俺の周囲の変わりようは。

 

 悠子ちゃんに怒鳴ったのなんか忘れ去られてるんじゃなかろうか。

 鈍感系ラノベ主人公キャラであれば気付かないのだろうけど。


 少なくとも友達以上恋人未満なこの状況、誰に聞けば回答してくれるのかな?


 ここで田宮さんを頼ったら爆発しちゃえと言われてしまいそう。


 センサーが働かないという事は嫌なタイプの人間ではないという事。

 そんな3人が迫ってきたとして……俺はどう返すのが正解なのか。


 エロゲやギャルゲの主人公だったらいきなり翌朝とか数日後とか便利な逃げが取れているんだけど。


 ピンポーンと家の呼び鈴が鳴った。恐らくは準備を整えた月見里さんの来訪だろう。

 正直この月見里さんがよくわからない。俺って知らずに何かしてたのだろうか。


 でもあれだけの美しい女性、一度見たら早々忘れないと思うんだけど……

 あぁ、ともえとラブラブだった頃なら見落としていても仕方がないか。

 たとえ絶世の美少女アイドルでも通行人Aに変換されていただろうしな。


 「はいはーい。」

 ガチャっと玄関扉を開けると……



 「た、ただいま……」


 「あ、お、おかえりなさい。」


 頬を赤く染めた先程家を出た時とは全く雰囲気の恰好になった月見里さんが俯き加減でただいまと言った。

 それに釣られて俺はおかえりと返してしまったけれど……


 ナニコレ、同棲中の彼氏彼女か新婚夫婦みたいな雰囲気。


 というか月見里さん、少しおかしい。

 おかしいって何がとなるけど、その恰好は……


 「給食のお姉さん?」

 思わず給食のおばちゃんと言いそうになったけど、23歳とはいえどう見ても美少女な月見里さんなので給食のお姉さんと漏れたけど。


 割烹着に三角巾を被った月見里さんがそこにはいるんだよ。

 

 「あ、あの。お二人が入浴中なので、晩御飯のお手伝いをと思いまして。」


 気持ちはありがたいけれど、お客さんに作って貰うというのもと思ったけれど、黙って待ってるだけというのは嫌らしい。

 どうしても手伝いたい、手伝わせてくれないなら今晩一緒の布団で寝ると言い出したので、「流石にそれはハードルが高い」と言って断り晩御飯を手伝って貰う事になった。


 月見里さんは少し残念そうな顔をしていたけど、「美味しいご飯を作りましょう。」と晴れやかに言って台所に立った。


 本当に俺はどこで月見里さんの好感度を上げたのだろう。

 某ぐー〇〇先生とかは教えてくれないだろうな。



 「こねこねーこねこねー」

 月見里さんは口ずさみながらハンバーグの種をこねている。もちろんマスクは着用している。


 小学生の子供が親と一緒にハンバーグを作る時はこんな感じではないだろうか。

 

 その横で俺は薬膳カレーを作っている。正確にはふるさと納税の返礼品で、福岡のとある町の薬膳カレーを鍋に入れて、追加でスパイスを調合して味を改変していた。

 

 最初はハンバーグカレーを作ろうとしたけど、せっかくあるのだから使ってしまおうと思ったのだ。

 お店で作ったものをパックして送られてきているのでレトルトではない。

 その代わり賞味期限は長くはない。


 月見里さんがハンバーグを焼いている間に準備を進めていく。


 

 「こうしてると新婚さんみたいですね。」

 月見里さんの爆弾発言に何て返して良いかわからなかった。


 爆弾ハンバーグだけに……


 「冗談です。」

 小悪魔的な笑みを浮かべるけど、三角巾とマスクでその表情は全ては読み取れない。


 棚から食器を出していると、「いつか現実になれば良いのに。」と言っているのが微かに聞こえた。

 だから俺はどこでこんなカンスト間近な好感度にしていたんだ。



  

☆ ☆ ☆


 「ごちそうさまでした。」×4


 アレンジしたハンバーグ薬膳カレーは好評だった。


 本当はカツカレーにしたかったんだけど結果的にはハンバーグで良かったと思う。


 

 「じゃぁ次は私と黄葉さんが一緒にお風呂に……」

 月見里さんが再び爆弾発言をしようとしたけれどそれは直ぐに遮られる事となる。


 「「それは(まだ)ダメ!」」

 悠子ちゃんと小澤が即ダメコールでバッサリと遮った。


 「冗談ですよ。」

 流石にそこまでの心の準備はまだ出来てませんと聞こえた気がした。


 

 食器を洗い終わり、悠子ちゃんと小澤は女子同士で何か話している。

 俺はそれを後ろから眺めていた。


 本当に良いのかな。勢いなんじゃないのかな。男性の家に初めてきて泊まるだなんて。

 こんな個人事情がなければ据え膳喰わぬは精神で4Pも可能な状況だぞ……

 喜納のようなクズの事言えないんじゃないかとさえ思ってしまう。


 

 「お風呂、ありがとうございました。」


 風呂上がりの月見里さんの姿を見て、俺達一同は固まった……

 俺のあそこは固まってないけど……



――――――――――――――――――――――――


 後書きです。

 お泊り会に時間をあまり割くつもりはなかったのですが。

 2学期始まる前の有意義な時間という事で。


 さて、どんな格好だったんでしょう。

 茜サイド的な事はありませんけど。

 エロ……くはないよ。 

 


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