第107話 初めてのおつかい。

 結局買い物に行き材料を買う事にした。

 一人で行こうと思ったけれど……


 「わ、私も一緒に。」

 一緒に行きたいや私が行ってきますではなかった。

 もっとも一人で行こうにも場所なんてわからなくもないか。

 なんせ東京からすればこの辺は北国とか揶揄される田舎だ。

 本当の田舎の人から見ればそんな事はないのだけど。


 駅と家ばかりであとは各種病院、コンビニは離れてるし、居酒屋数件。

 スーパーも1件しかない。

 車がある人は色々行けるけれど。


 何年か前に出来たねこみみメイド喫茶が場違いのように盛り上がっていたりはする。


 そんなわけでスーパーまで二人で来ていた。

 

 カートに籠を二つ載せて端から回っていく。

 野菜から回っていき魚、肉と籠に詰めていく。

 「あ、大学芋の素。」

 俺は二つ手に取り籠に詰め込んだ。

 あの甘いタレが結構好きなので見かけると結構買っていたりする。


 基本的には17時のタイムセールで数十円引きのシールが貼られた商品を主に詰めている。

 奥様方が多いせいか多少気圧されてしまうが、その辺は同じ女性としての悠子ちゃんが逞しい。

 いくつかのセール品を詰め込んでいる最中、後ろ姿ではあるけれどどこかで見た事あるような感じの女性の姿を発見する。

 わざわざ回り込んで誰かまで確認するのも失礼と思いそれ以上詮索はしないようにする。


 「あ、うめぇ棒……」

 コーンポタージュを10本こっそり籠に入れた。

 ラムネとアポロと蒲焼さんたろーもこっそり籠に入れた。


 パンコーナーでは甘食とスティックパンと菓子パンをいくつか詰める。

 これが2月~4月ならパンまつりのシール目的で某社のパンを買うのだけど。



 こんな感じで一杯になった籠をレジに持って行く。

 悠子ちゃんがセール品を選んで安く済ませた分を俺が駄菓子で帳消しにするという……

 これがプラスマイナスゼロというやつか、などと思っていると。


 見覚えのないアイスが入っていたのでチャラになった。

 しかしレディーボーデンって……



 「少し持つよ?」

 俺は重いものを持つようにして、悠子ちゃんには比較的軽いもの……

 というより柔らかいものを持ってもらっている。

 別に男がとか女がとか言うつもりはない。

 単純にお兄ちゃんとはそういうものなのだ。



 アパートの前に着くと、スーパーで見た後ろ姿の女性が2階の部屋に入っていくのが見えた。

 流石に階段を上がるのにこの荷物は重い。

 でもお兄ちゃんはかっこつけてこの荷物を持っているので今更弱音は吐けなかった。


 

 「と、いうわけで薬膳カレーの出来上がりです。」

 スパイスの香りが鼻を擽り、食欲を誘ってくる。


 本当にこの子は……

 帰って来てから準備は全てやるからと炊事をしている間俺を追い出した。

 暇なので風呂掃除したり……洗濯物を取り込もうとして怒られたり。


 「ごちそうさまでした。」


 薬膳のスパイス達が俺の心をまた落ち着かせてくれる。

 もう昨日のような感情的な衝動が嘘のように掻き消えていく。 


 胃袋掴まされるの……早くないか?



☆ ☆ ☆


 「中々無料券使いたいって電話こないね。」


 「でも簡単に利用されても恥ずかしいというかなんというか……」


 「突撃隣の茜さん!をやるしかないんじゃ?」


 なんて会話がとある屋敷でされていた。


―――――――――――――――――――――――


 後書きです。

 悠子ちゃんは幼少から真秋との付き合いがあるので、丁寧に喋るけど敬語はあまり使ってません。

 先輩後輩という関係とも違うので。

 

 それと、この二人がこのままないけるかなんて保証はないかなと。 

 成人と未成年という事を抜きにしても。

 抜きで思い出したのは茜無料券……


 それと見覚えのある後ろ姿の女性って誰でしょうかね。

 

 「次回、はじめてのおいしゃさん。」

 そんなえろげありましたね。

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