第79話 閑話:井戸端会議と学校の噂と悠子の友人は……

 ※次話を書くに至って時間が足りなかったので閑話を入れます。

 毎日1日話を続けている以上落とすわけにはいかないのです。

 作者の都合で申し訳ありません。

――――――――――――――――――――


 噂と言うものは意図せず浮き上がり意図せず広まっていく。

 近所に広まる安堂家の噂もまた、誰が基幹となったか気が付けば近所のおばさま方の話題に上っていた。


 「安堂さんちの長女、長年の幼馴染の彼が仕事が大変な時に浮気しまくってたらしいわよ。ほら、ニュースにまでなった会社に勤めてたでしょ?」

 「そうそう、その男との間に子供を作って托卵を企んだらしいよね。ダジャレじゃないけど。」


 「まったく最近の若い子の倫理とか愛情とか貞操とかってどうなっちゃってるんだろうねぇ。」

 「私達の世代ならもっとバレないようにやってたのにねぇ。」


 「あら、〇〇さん。若い頃そんな事してたの?あなたもワルよねぇ。」

 「やぁねぇ。本当に若い頃の話よぉ。それも結婚する前の。それにもう時効でしょうよぉ。」


 「ってあの頃は携帯電話とかなかったしね。直接見るとか知り合いに見られるとか証拠になる物とかがなければわからなかった時代だしねぇ。」


 「写ルンです構えて浮気現場張るなんて面倒な事しないでしょうしね。」

 「パパラッチや探偵じゃあるまいし、いち個人じゃ現像代も馬鹿にならないからね。」


 「まぁ、私も一度バレた時大げんかしたけど、お互い本音をぶつけあったら結局ラブラブカップル(死語)に戻ってその後結婚に至ってるけどね。それが今でも夫婦なんだから世の中わからないものよね。」


 「浮気が良いとは言わないけど、托卵はダメよね。しっかり避妊しないと。残すなんてまだまだおこちゃまよね。」


 井戸端会議や噂というのはこうしてあることない事を付随して、関係ない事まで不随して広まっていく。

 奥様方自身の過去の話も添えて。


 「そういえばそんな極悪女の托卵の相手、あのニュースで上がった喜納グループの次男坊なんだってね。」

 「そうそう、驚いちゃったわよぉ。同じ高校だったらしいけどどういう接点があったのかねぇ。高校時代から実は……なのかねぇ。」


 

 「それにしても可哀想なのは妹の悠子ちゃんよ。姉の不祥事のせいでこの後大変じゃない。部活にも響くだろうし、本人の恋愛にも響くだろうし、近所の目があったら普通の高校生活もろくに出来ないだろうしねえ。」


 「私達が言えた義理じゃないけど、噂が独り歩きしちゃって大変でしょうね。引っ越しでもして少しでも環境変えたら良いのに。」


 「まだまだローンが残ってるから売りたくもないんじゃないかな。噂によれば黄葉さんとこの長男が引っ越すなと言ったらしいし。」


 「あら、それってこうやって近所の噂に耐えろって事?鬼畜ねぇ。それだけ恨みつらみが籠ってるって事なのかしらねぇ。」



 「黄葉さんと安堂さん自身が幼馴染だからねぇ。いたたまれないよねぇ。いかに子供達の事とはいえ。」

 「親子揃って幼馴染婚だと思ってたのにね。本当に世の中何があるかわからないわね。怖いねぇ。」


 「怖いと言えば相手の喜納グループ。横領だの媚薬による強姦だの反社と繋がってただの、もうあの一族も終わりよね。」

 「相当のお金が動いてそうだものね。怖い怖い。ま、私達おばさんには関係ないわよねぇ。」


 「そうね。あと30年若ければねぇ。おほほほほ。」


 近所のおば様たちの井戸端会議は品を変え話題を変え、続いて行く。


 それは舞い散る伝言ゲームのように。

 



☆ ☆ ☆



 「なぁ、あれ……」

 「お、今噂の安堂妹じゃん。」


 「なぁなぁ、お前の姉ちゃん誰にも股開くんだろ?俺達に紹介してくれない?」

 「なんならお前でも良いよ。姉がゆるゆるなんだから妹もその素質あるんだろ?」


 「ビッチの子はビッチと言うだろ?ビッチの妹もビッチだろうよ。」

 「カマトトぶってないで俺達の相手してくれよ。始業式とかつまんねーし。乱痴気パーティの方が楽しいっしょ。」


 「ゃ、私……そんなんじゃない。」 

 悠子は俯いて逃げ出すしかなった。

 どこに行っても同じような事ばかり。

 一体どこから噂が出てどのように広がったのかは不明であったが、新学年の新学期だからと学校に行ったのに到着するやこの調子。

 自分のクラスが何組か確認する事も出来ない。


 新しいクラスは新学期に登校して張り出されている新クラス表を見なければわからない。

 会う人会う人、正確には会う男子のほとんどが同じ話題で近寄ってくる。

 やらせろというのは一部ではあるけど、姉の話題を口にする人は殆どだった。


 結局クラス表も確認出来ないので人気のないところに隠れているしか出来なかった。


 「ん?悠子ちゃん、そんなとこでどしたん?」

 ハンドボール部で1年の時同じクラスだった井川敬いがわけいが声をかけてきた。

 親が某関西の球団のファンだったのだろう。自分の苗字が井川なのを良い事に、同じ名前を付けたかったけど漢字まで同じにしなかったのは鳥〇のファンでもあったのかもしれない。

 真実は聞いていないのでわからないけれど、充分に考えられる推察事項だった。

 それでも女の子の名前に【ケイ】は良いけど【敬】はないだろう。

 敬子ならともかく……


 そんなかつての仲間でクラスメートだった敬が話しかけた事で悠子は少し安堵の表情を浮かべていた。


 そこで悠子は先程まであった事を話した。


 「なるほど。その噂は耳に入ってるけど……男子は馬鹿ばっかなのかね。悠子は悠子だし、お姉さんの真実は知らないけど勝手な事ばかり言って。だからモテないってなぜ気付かないのかね。」

 「その調子じゃクラス表見てないんでしょ。私が一緒に行ったげるから元気出した。」


 クラス表を見に行こうと歩いていると再び声を掛けられる。


 「おっはー。二人共重役出勤だねぇ。時間あまりないよ~って人の事は言えないけど。」

 声を掛けてきたのはバレー部で1年の時は隣のクラスだった遠山蔣子とおやましょうこ

 やはり親は関西の某球団のファンなのだろう。遠山という苗字を良い事にゴ〇ラキラーの彼の名前から取ったに違いない。


 敬と同じように今朝の事を話した。


 「はぁ?何それ。悠子関係ないし、まったく悪くないじゃん。その男子達童〇しかいないじゃない?言ってやりゃぁ良いのよ。そうせ使う相手もいないくせにとか。」


 「悠子はあんたみたいにそんな下品な事言わないから。」

 「サーセン。でも赦せないね、そういう男子は。本当だろうが嘘だろうが噂に踊らされちゃって。」



 「大丈夫。悠子は私が守る。」

 突然もう一つの声が聞こえる。


 「うわっ出た。」

 敬がその声に対して驚きながら声の方へ向いた。


 「出たとは失礼な。これでも話の最中からいた。ちいさいからってバカにしたらメっ。」

 最後に登場したのは漫画研究部の赤星憲子。あかほしのりこ

 もはや言うまでもなく親は某関西球団のファンである。


 ちなみに漫画研究部だけれど、この中で短距離は一番速い。

 「出たなレッ〇スター。」

 アルファベットで同名の飲食店が国道旧4号線から利根川を渡った先にあるのだがそれはどうでも良い話。

 

 

 「ま、私達だけじゃないだろうけど女子の大半は味方だよ。変な事言ってくる男子や変な事してきそうな男子がいたら守ってあげるから。」



 「うん。ありがとう。」

 しかしその表情は暗い。味方がいる事はありがたいけれど、女子も全てが敬達のようではない。

 噂が好きなのは男子も女子も変わりはない。

 まだ初日ではあるけれど、学生の光と闇を一度に味わった悠子は今後の学生生活にも不安と希望が心の中でぶつかりあい、早くも出席する事に気持ちが追い付かなくなってきていた。


 

 漸く確認出来たクラス表には、幸いにしてこの4人は同じクラスの欄に名前が記載されていた。



―――――――――――――――――――――――――――

 

 後書きです。


 間に少し緩和を入れました。

 次は元に戻ります。


 噂を信じたらイケないよ。

 

 悠子の友人の親が関西の某球団のファンなのは当然作者の影響です。

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