第76話 ついにきた連絡。黒塗りの車というのは色々想像します。
ちゅんちゅん……という小鳥の鳴き声がしているわけではないけれど。
目覚めるとカーテンの隙間から覗く朝日が眩しい。
そういえば風呂のお湯張りのスイッチを入れてそのまま寝てしまった。
風呂自動は消えて湯温は下がっているだろうな。
思っていた程目覚めたあとの気持ち悪さはない。
二日酔いでなくて良かった。土曜で休みとはいえ……
時計を見ると午前9時を回っている。
かなり長い間寝ていた。もう一度お湯張りボタンを押して風呂のお湯を温める。
15分程待っている間に軽食を用意する。
買い置きしておいたチョコスティックパンを一袋開けた。
インスタントのコーヒーと一緒に軽く朝食を済ませる。
少し足りないと思いチョココロネとコーヒーメロンパンも開けた。
食べてる途中で「お風呂が沸きました」という音声案内が聞こえていたので食べ終わったら入ろう。
「あー、さっぱりする。」
シャワーを頭から浴びると気持ちいい。
……試してみるか……
シャワーのノズルを取り出しそれを……
勢いを強くして股間に当ててみる。
「んー痛いだけで何も感じない。」
おかしい。確かに俺はMではないけれど、こうすると反応する人多いとあの薄い本に描いてあったのに。
「うえぇぇぇぇい。」
湯船に浸かる時というのはなぜか声が出るもんだ。
おっさん臭いだろうか。
10分程瞑想する。決して寝ているわけではない。
昨晩の出来事を反芻するための瞑想をしているのだ。
「う~ん、やっぱりあの二人は中学時代のパイセン、メグナナの二人だよな。」
思い返すと、あのまま少し大人になった風だった。
何故昨晩気付かなかったのか……酔っていたからか。
そういえば昨日貰ったティッシュ……あ、例のねこみみメイド喫茶じゃないか。
この周辺には娯楽も飲食店も少ないからやけに繁盛してるんだよな。
行った事はまだないけど。
昨晩の事を振り返っていると、携帯が鳴った。
「こんにちは。本日は……」
「あ、はい。わかりました。急ぎ向か……え、もう来てる?わかりました。」
5分で降りてきてとの事なので急いで支度を済ませる。
「お久しぶりです。」
以前に迎えにきてくれた黒塗りの車とは違い、今日はワンボックスカーで田宮さんは来ていた。
田宮さんと会ってからそんなに経ってはいないのに、随分前のような気がしてきた。
「お久しぶりです。黄葉様、あのクソ女の家族も連れていかれますか?」
俺が答えなくてもその問いに対する答えを分かっているのだろう。
正確にはそれを想定してのワンボックスなのだろう。
「そうですね。先日ともえの子供に関して話した時に引き取りたいと言ってましたので。」
「では連絡を入れてください。今から迎えに行くので30分以内に準備して欲しいと。」
そして指が重く感じたけれど安堂家に連絡を入れた。
すぐ準備するからとの事だった。
「準備するそうです。」
「そう。じゃぁ茜、運転よろぴくみん。」
ん?よろぴくみん?この人こういう冗談も言う人だったのか。
最後尾の席に二人並んで座っている。
妙に緊張してきて冷や汗が出てくる。
嫌悪感とかとは違う緊張。
あのお方が横にいる、それだけで緊張するには充分。
横目で見える姿は可憐な少女だというのに。
「流石にその場に立ち会うのには抵抗がありますか。まぁそうですよね。自分の子ではないのですから。」
「別室でお待ちしていただいて構いませんので。多分家族もそうされると思いますよ。」
場合によっては到着した時には終わっているかも知れないしと付け加えていた。
考えこんでいるとやがて安堂家の前に到着する。
運転席から降りた小澤は後部座席の扉を開ける。
田宮さんが車を降りると家の前には安堂家の面々が待っていた。
一礼すると小澤が真ん中の扉を開ける。
3人は真ん中のシートにそれぞれ乗り込んだ。
「お兄ちゃん……」
俺に気付いた悠子ちゃんが呟いている。
俺は軽く頭を下げた。
再び田宮さんが俺の横に座り小澤は運転席に戻り発車した。
黒いワンボックスに乗り込む一家を見て近所の奥様方が井戸端会議で話題にするのは別の話なのだが、近所のおばちゃんに見られていたのを俺は確認していた。
俺は車から降りていないので見られていないはず……
―――――――――――――――――――――――――――
後書きです。
賛否あろうと、この後は産気付いたともえの子が産まれそうだから来ませんかと連絡を受けた面々があの地下の秘密工場……
もとい病院施設に向かいます。
実際産まれるかはわかりませんし、産まれるにしても早いかも知れないし時間だけ過ぎて翌朝かもしれないし。
車には疎いのでわかりませんが、大きな車なら8人だか9人だか乗れるのありますよね。
そしてついに話数がMAXコーヒーに追いついてしまいました。
文字数は5万くらい少ないですが。
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