第33話 ☆オンセンノウラガワ

 私達は最初に子宝の湯で渓谷と混浴温泉を楽しみ、その後部屋に戻った。

 そこで部屋に備え付けの露天風呂で真秋とハッスルしてしまった。

 勃起不全が治ったせいか、どこぞの戦闘民族みたいにパワーアップしていた。


 正直、これがあの時にあればな……と思っていた。

 真秋とは久しぶりなので、これはこれで気持ちよかった。


 夕飯の後、真秋は違う露天に入ると言って部屋を出る。

 私も女性専用の露天があるのでそこに行ってみると言って部屋を出た。


 1時間くらいで戻るとそれぞれ伝えて。



 「なぁ、友人が使った後の湯でするってどんな気持ち?」

 貴志が下品な質問をしてくる。

 どうやら夕方香奈美ちゃんはこの部屋付けの温泉に浸かっていたらしい。


 「あいつは1時間は戻ってこねぇ。お前も彼氏にそういって出てきたんだろ?」


 パシャバシャと、温泉の水音が響いていた。

 それは1時間もの間続いていた。


 私のいた痕跡を部屋から全てを消すと、自分達の部屋を出てから1時間半近くが経過していた。

 「じゃぁまた明日な。」

 貴志の言葉に私は頷く。

 


 罪悪感からか、私は翌朝真秋に対しておはようの挨拶をしていた。

 やっぱり真秋は安心する。


 私は今ではもう二人分の愛情がなければ生きていけない心と身体になっているのかもしれなかった。


 二日目は普通に真秋と観光や体験をして遊んだ。

 子供の頃に還ったみたいで、ものすごく楽しかった。

 

 遊び疲れてはいたけれど、部屋付きの露天で今日はもう一箇所にチャレンジした。

 貴志はどれだけさそってもこっちには手を出してくれない。

 こっちは真秋専用だった。


 疲れ果てたのか、22時には二人とも布団に入って就寝する。

 あれだけ遊んであれだけハッスルすれば当然かもしれない。

 しばらく時間が経過し、私は起き上がる。

 手を顔の前で動かしても真秋は動く気配すらない。


 私はメモを残し、部屋を出ていく。

 混浴露天風呂で貴志と情事に至った。

 外れの方だったので他者にバレる心配も少ない。


 そんな時誰かが湯船に入ってくる。

 後ろ向きのため見辛いけれど、私が横目でその方向を見てみると、なんと真秋が入って来ている。

 大ピンチだと感じ、私は反対を向いて、声を出来るだけ出ないように押さえつけた。


 混浴で如何わしい事をしている事に嫌気を感じたのか、真秋は早々に湯船から出て行った。

 危なかった……もしこんな事がバレたら……


 「なんかお前、さっきから反応がすげぇな。」

 事情を知らぬ貴志は暢気なものだ。

 さっきバレていたら二人ともどうなっていたか、わかったものでもないというのに。


 私は部屋に戻ると真秋が寝ているのを見て安心する。

 やはりバレてはいなかったようだ。


 音をたてないようにそっと自分の布団に戻る。

 寝ている真秋の股間に手を忍ばせたけれど、反応する事はなかった。

 今朝は寝ていても反応していたのに。

 もしかして、また勃起不全にでもなってしまったのだろうか。


 

 次の日は日替わり温泉を廻った。


 「またこうしてしたいな。」

 真秋がふっと漏らした。

 他にも行きたいところをつらつらと挙げていった。

 確かにまたどこか温泉旅行に行くのも良いなとこの時は思った。


 部屋に戻ると、明日は帰るだけなので今のうちに荷物の整理をする。

 お土産は実家に少しと会社に……今の部署の分だけでいいか。

 

 流石に最後の夜は貴志と密会は出来なかった。


 こうして考えてみると、よくバレなかったなと思う。

 その背徳感を味わうのもスリルがあって高ぶりはしたけど。


 表向きは真秋との楽しかった温泉旅行。

 裏向きは貴志との激しかった温泉旅行。



 11月初旬。

 身体の違和感を覚えたために病院へ行く。

 そういえばHする事に思考がいっていたので気付かなかったけど……

 生理きたっけ?

 私は思い切って産婦人科に飛び込んだ。

 

 そして妊娠を告げられる。

 「妊娠12週目ですね。」 


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