第30話 ☆若いのにそれは大変だ
7月中頃、金曜遅く帰ってきた真秋を出迎える。
帰る前に今から帰るとメールを貰っていたので、待っていたのだ。
「お風呂にする?ごはんにする?それとも……た・わ・し?」
私の冗談に苦笑いをする真秋。
本当は最後は「わ・た・し」としたかったけど、あまり性欲魔人ぶりを発揮すると嫌気がさすのではないかと思って、急遽冗談をぶちこんでみた。
結果は成功とは言い難い。
「ごはん食べて風呂入って……寝たい。」
靴を置いてカバンを置いて部屋着に着替える真秋はどこかフラフラだった。
性欲を我慢して良い女アピールするのが多分最善策。
本当に我慢出来ない時は真剣に相談すればいい。
きっと大丈夫……
それよりも今は疲れ切った真秋を癒してあげなければ。
「こんな遅くなのにありがとう。」
もう日付は変わろうとしている。
本当はこんな時間に食べると太るとか体調にはよろしくないとは言われるけれど、何も食べないのはそれはそれで体力的によろしくないのではないかと思う。
先日の事があってからか、無意識に性の付く……精の付く食材が増えた気がする。
疲れてるからあまり多くは食べられないと言っていたので、少なめにはしてある。
鰻豚丼、あさりの味噌汁、鯖の味噌煮、生牡蠣……を少しずつ。
精力に関する食べ物ばかりなのは気にしない。どうせ迷信だ。生きる力という意味での精力アップだと何かに書いてあった。
「短時間なのによくいろいろ作れたね。いや本当に助かるありがとう。」
素直にお礼を言われると照れ臭いけれど、真秋の精力回復のためだなんてとてもではないけど言えない。
藁にもすがる思いという感じなので効かなくても文句は言えないのだけれど。
「美味しかった。ごちそうさまでした。」
食器を流し台に持って行こうとしたところで真秋が体勢を崩す。
幸い倒れたり食器を落としたりとかはなかったけれど、心配は増した。
「片付けは私がやっておくから先にお風呂入ってゆっくりしてきたら?」
真秋はありがとうといって着替えを取りに行き風呂場へ向かった。
そこからの行動は早かった。
高速食器洗い器と化した私は素早く漏れなく食器を洗う。
洗い終わると、急いで自分の着替えを取りに行き、服を脱ぎ始める。
全裸になると風呂場のドアを開けた。
そこには疲れ果てて椅子に座りぼーっとしている真秋の姿が。
「え?ちょっと大丈夫?」
大丈夫との返事だったけど、大丈夫には見えない。
最初は邪な気持ちで一緒に入ろうとした風呂だったけど、代わりに身体と頭を洗ってあげた。
これだけみると、とても献身的な若奥様という感じがするけど……
身体を洗う時、もちろん股間は念入りに触れ……洗ったけれど、全然反応を示さない。
「ねぇ、もしかして……」
私は最悪の事態を想定している。
いや、それは単に自分目線である事は理解している。
もしそうだった場合、これは二人の問題であるから。
「最近全然反応しなくてな……勃起不全だと思う。最近忙しすぎて頭も身体もパンパンだから。」
間違いなく仕事のストレスによるものだと思う。
「ただまぁ、一時的なものだと思う。ストレスが緩和されれば大丈夫じゃないかとは思うけど。」
食生活は……毎日ではないけど、それなりにバランスよく朝と夜は提供している。
昼はどうかわからないけど。
そうなるとやはりストレスなのかな。
ここで真秋の心配をするとともに、自分の性欲はどう解消すれば良いのかと思ってしまう。
おもちゃでは一時的に少し解消するだけ……でも……
「本当にごめんな。ともえの相手も出来なくて。」
私にはHの事しか考えられなかった。
一緒に湯船に浸かって刺激を与えてみたけどふにゃふにゃのままだった。
以前ならよろこんで何回も戦えていたのに……
この後から私のモニターテストは拍車を増す。
電動ドリルが今の私の性欲の捌け口。
モーター音がトイレに鳴り響く。
そんな時、本当に偶然なのだろう、香奈美ちゃんの旦那である喜納貴志に声を掛けられる。
普段は利用しない社員食堂で昼食を取っていた時、隣の席に座ってきた。
「そんな浮かない顔をして……何事かお悩みかな?俺で良ければ君の……話し相手になりたい。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます