裏切りの三ヶ月編

第29話 ☆ずれはじめた二人。

 GW、楽しかった四国旅行。

 まとまった休みにこれまで溜めてたお金の一部を大量に使った。


 就職後まとまったお金を使った事はほとんどないので、思わず奮発してしまったというのが本音だった。


 5月も終わりに差し掛かる頃、真秋の会社で事故が起こった。

 不幸中の幸いは死者がいない事。

 ただ、怪我を負わせた事は事実。

 労基と監督署が動いた。


 いきなり営業停止はないようだけれど、対応に追われるだろうと真秋に言われた。

 末端である真秋達が直接何かをするのは、改善策が決まってからだそうだが、そうなると毎日が忙しくなるだろうとも言っていた。


 会社の上層部は謝罪と改善策・再発防止策への対応で事故後すぐから忙しいと言っていた。


 6月に入ると改善策・再発防止策への目途が立ってきたと言う。

 6月中にはその対応が始まると忙しくてデートとかは出来なくなるなるんじゃないかと。


 それがわかっているからか、6月中旬まで休みの日はデートとハッスルをしまくっていた。

 お互いもう出ない……というところまで何度も何度も。

 正直私も真秋もこの時妊娠しても良いという想いでいた。


 久しぶりに感じる真秋の白い恋人は私の中で喜んでいるようだった。

 

 しかし、当初の予想通り6月下旬に入ると真秋は改善策の対応で忙しくなっていった。

 首都圏故に対応する数が多い。

 東京の中心地……新宿や銀座のようなところに比べればまだマシではあるみたいだけれど。

 

 それでも最初の頃はまだ真秋も私の相手をしてくれていた。

 帰ってくるなり疲れているのがわかる表情で、足取りも良くないのはわかっていた。


 だけど私は、流石に毎日ではないけど求めてしまっていた。

 真秋も仕事以外の事を考えていたかったのか、最初の頃は相手をしてくれていた。

 でも段々とHする回数は減っていく。1回の中で今までは何回も出してくれていたのか、1回また1回と減っていく。


 7月に入る頃には疲れたから飯食って風呂入って寝るとだけ言う。

 隣で自慰をしていても真秋は襲ってもこない。

 たまに股間に手を持って行っても今は止めてくれ、しんどくて出来そうもないと断られる。


 あれだけHしていたのだから私が性的に求めている事は真秋も理解してくれている。

 行為をしなくなってからいつも構えずごめんと言ってくれていた。


 真秋が相手をしてくれなくなってから、私は商品のモニター試験を会社のトイレでするようになっていた。

 今までは専用ルーム(防犯セキュリティは守られている)か家か真秋のアパートでしかしていなかったのに。


 声を押し殺しながらトイレでするのが日課になっていた。

 だから替えの下着を毎日多めに持って行っていた。


 Hは出来なくても、真秋は土曜日は空けてくれていた。

 月に1~2度ある土日祝日の仕事は別だけれど……

 土曜日だけは出かけたり美味しいものを食べに行ったりとしていた。


 多分最後に真秋とHをしたのは7月に入って最初の土曜日が最後だったと思う。

 

 日々疲れてやつれていく真秋に対して強要は出来ないなとも心の中では理解出来ていた。

 でも身体は理解出来ていなかった。


 おもちゃでははやり限度がある。温もりだけの問題じゃない。

 気遣いのある愛撫だってそうだし、緩急自在の攻めだってそうだし、どうしても機械では限界がある。

 機械ではただ気持ち良くするだけだという事を、今になって思い知る。


 思いやりや気遣いがあってこそ愛のある行為だという事が理解出来る。

 それならば、真秋が落ち着くまで待てばいいのか。

 でもいつになれば会社が落ち着くのかは誰にもわからない。


 少なくとも最低3ヶ月かけて担当営業所の契約台数約2000台を対策しなければならない。

 それは3ヶ月に1回の現場があるためである。


 現場によっては休日指定だって夜間指定だってある。会社としては昼夜問わずの対応に追われている。

 新人ならともかく、5年生の真秋は中堅と若手の間くらいで、働き盛り年齢でもあるとのこと。

 実際は7年生~10年生くらいが一番らしいけど。

 一度引退したような30年生くらいの人まで駆り出されているというくらいだから、本当に大変なのは聞いているだけでも理解出来る。


 あくまで心だけは……


 満足させてやれなくてごめんなと言ってキスをされた事は何度もある。

 だけど、それは私を余計高ぶらせるだけで、性欲は溜まっていく一方。

 おもちゃで一時的には気持ちよくはなるけど、あくまで一時的に少しだけだった。


 


 こういう時に聞ける相手がいない。

 高校時代の友人は大抵既婚者になっている。

 会社の人に話しても欲求不満としか言われるのがオチだし。

 男女逆ならそういうお店を利用するというのもあるのだろうけど……


 人の温もりが欲しい。温かみのあるモノが欲しい。

 お願いだから真秋、2週間に一度でいいからシテ欲しい。

 私はもはや病気だろうと思いながらも寝ている真秋の下半身に手をはわした。


 でもどれだけ弄っても反応することはなかった。

 それほどまでに疲弊し困憊しているのだろうか。


 人間死の危機には種の保存防衛本能が働くと聞いたことがあるけれど、それでも真秋は勃たなかった。

 私はH出来ないことで人は泣けるんだと実感した。



―――――――――――――――――――――――――

 後書きです。

 例の三か月に突入しました。

 でも最初はまだむかつきません。

 ただの依存症の女が我慢できないと悶えてるだけです。

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