第15話 それから……

 温泉旅行の土産は大体配った。

 実家はすぐ近くだし、友人はそんなに多く会えるわけではないのでそんなには買っていないし、会社は出勤時に早々に持っていったからだ。


 社会人になると昔の友達と頻繁に会うわけでもない。

 都内に出てしまう者も多いし、地元に残っていても学生時代のように顔を合わせるわけでもない。


 良くも悪くもみんな新しい生活を送っている。


 地元は地元で悪くはない。自然は確かに温泉地に比べたら少ないし、街灯は多いし、行き交う人は多い。

 夜の音もそれなりに耳に入ってくる。

 それでもこれが日常であるわけだし、直ぐに慣れなくてはならない。


 社会人たるもの、仕事をしなければ対価である賃金は得られない。

 お金がなければ生活が出来ない。


 あの3ヶ月の恩恵はまだまだ残っているとはいえ、仕事がなければ生きてはいけないのである。

 流石に休み明け初日はきつかったけれど、数日もすれば元の生活に戻っていた。


 戻っていたといえば、ともえがこっちのアパートに来る頻度は戻っていなかった。

 以前は特に何もなくても毎週末である金曜土曜は殆どこっちにいたというのに。

 多忙だったあの期間の後半のように、隔週末のみくらいしかこっちには来なくなった。

 

 それでも旅行のプランを決める時は頻繁に来ていたのだけれど。

 

 そういえば最近のともえが何かおかしい。

 前はあまり貴金属は身につけてなかったのに、最近ではネックレスや指輪をつけるている事が多い。

 ピアスの穴は開けていないけれどイヤリングなんかも付けたりしている。


 爪も手入れはしていたけれど付け爪なんてこれまではしていなかった。

 髪も幼少からずっと黒髪だったのに、少しではあるけれど染めたりもしていた。


 何か聞いても大人になったんだし、少しイメチェンしたくらいな回答しか返ってこない。


 俺とのデートで買った記憶はないから、一人か友人と買い物でも行った時に購入しているのだろう。

 そういえば、バッグも少しお高いのを持っていた気がする。

 これも一緒に買ったなんて事実はないのだから、別で買ったのだろう。


 良い大人なのだから購入するものをいちいち管理するのはどうかと思うかもしれないけれど、その考えにも理由がある。

 子供の頃からともえは、親か俺との買い物が殆どだった。

 高校時代は流石に友人と買い物するくらいはあったけれど。


 それでもここ数日の変化に見合うような頻度の買い物は行ってなかった。

 大抵俺が荷物持ちや意見係を担っていた。


 荷物持ちと言えば聞こえは悪いが、あれもこれも持ってという程の荷物持ちではない。

 買い物に行ってもいつも大量に買うのではなく、本当に必要だと思われる物や量でしかない。

よく言えば慎ましく節約という感じである。


 あくまでデートの一旦での買い物である。

 そこら辺のカップルのようなごく普通の買い物である。


 両手が塞がってどうしようもない状態で振り向きざまに口づけ……なんてドラマはないのである。


 女子高生で例えるなら以前は清楚、今はギャル手前といった感じに変化していた。

 高校時代はミディアムレアだったのに、今はワンレンが似合う女……は言い過ぎか。

 高校卒業以来会ってない人だったら、自己紹介しないとわからない程度には変化している。

 中学卒業以来の人なら、「あんた、誰。」だろうけれど。


 別に見た目の多少変わったともえが嫌なわけではない。

 そりゃどっちが良いか聞かれたら以前のほうだけれど。

 人間成長とともに変わっていくのだから、こういった見た目やファッションの変貌はあっても然りだとも思っている。


 デートの回数も多忙前に比べれば半減している。

 本当はそろそろ結婚を視野にいれた言葉の一つもと考えているのだけれど、タイミングがつかめないというかわからない。


 ともえの両親にも、温泉土産を渡しに行った時以来会っていない。

 


 12月初旬、世間ではそろそろクリスマス商戦、その前にボーナス商戦でいろいろ賑わっている。

 パパあれ欲しいとか子持ちのお父さん達は大変なんだろうな。


 俺も新型ゲーム機が欲しいとかねだったのが懐かしく思える。

 もう少しすればサンタコスをしたお姉ちゃんが客引きする様子でも拝めるのだろうか。


 プレゼントはわ・た・しなんてのは学生時代にやってるしな。

 今年はどうなんだろうか。既婚者や彼氏彼女のいる社員に無理やり残業を与える会社ではないけれど。


 クリスマスはどうしようか。

 高級レストランで食事でもしようか。

 遊園地に行ってイルミネーションでも見ようか。

 ゴー☆ジャスでレボリューションか。


 実家では某白髭のおじさんでパーティーバーレルを頼むのだろうけど。

 あのセットに付いてくるお皿が毎年増えていくのだけど、並べてみると爽快である。

 欠ける事なく続く連続記録を途絶えさすとは思えない。


 12月も半分以上が過ぎ、世間が本格的にクリスマスムード一色な時、ともえからメッセージが届く。


 「クリスマスどうする?休みは流石に取れないけど無理な残業はお互いにないと思うし。夜景でも見に行く?」


 社会人である以上クリスマスだろうがバレンタインだろうが県民の日だろうと関係ない。

 平日が通常勤務な会社である以上、仕事は仕事である。

 

 「動物公園のナイトパックでも行こうか。昼間とは違った景色も見れるし、以前ほどの流行ではないけどイルミネーションも見れるし。」

 俺は返信でプランの候補を送った。


 都内程の豪華さはないかもしれないし、動物公園の後だと飲食出来るところは限られている。

 別に豪華である必要はないのだ。


 抑々キリスト教というわけでもない。

 本来の目的とは違うクリスマスイベントは各々自由なものなのだ。


 「じゃぁ19時に現地入場口前で良いかな?」

 その返事から察するにさっきのプランで良いのだろう。

 「了解。当日が楽しみだな。」


 そう返事をして布団に入った。


 温泉地で買ったよくわからないご当地中のご当地ぬいぐるみがベッドの上に鎮座している。

 可愛いのか可愛くないのか微妙なぬいぐるみだ。勢いで買った、後悔はしていない。

 ただ、手触りが凄く良かった。松島から仙台に移設した水族館のイルカだかペンギンだかのぬいぐるみくらい手触りが良かった。


 これと同じぬいぐるみは色違いで安堂家にも。(誤字ではなく意図した表記)


 12月に入ってからデートは2回、泊まりに来たのは4回。

 今度はともえの会社が忙しいのだろうか。

 そう考えが過った時、そういえばともえの就職した会社、喜納グループの会社だったなとふいに頭に浮かんできた。


――――――――――――――――――――――――――――――


 後書きです。

 

 まだまだ先の話にはなりますが、ざまぁが終わった後どうするか未定です。

 一応ラブコメにしてますからね。

 ある意味、愛とコメディは既出な気もしますが。

 ラブの部分が壊れてる気はするし、ドラマ性が薄いと思います。


 題名の女性不信云々のところで、立ち直るための物語も構想がないわけではないのですが。

 陳腐になったりしないかという恐れもあります。


 ざまぁやNTR要素だからこそ読みに来ている人もいるだろうし。

 その先が気になるという人もいるだろうし。


 ヒロイン候補が浮かばねぇ……

 いや、正確にはいるんだけど。

 多分ヘイトが自分に来そうで。

 まだ名前すら出てないけど。



 さらなる過去の話が必要になるという、説明回的な。


 ともえサイドのあたまのおかしい回をいくつか記載しなければなりませんし。 

 あぁ豆腐メンタルの自分が耐えられるかどうか。

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