第14話 楽しかったプチ温泉旅行
気が付けばあのまま寝ていたようだった。
ともえが密着し、手は掴んだままだった。
バカップルの間ではそういった事もままある事かも知れない。
事実これまで家に泊まりに来ていた時も何度かあった事だ。
宿泊最後の一日は全ての温泉をもう一度廻る事に費やした。
近隣の日帰り温泉もいくつか堪能した。
源泉は変わりがないので効能自体は変わらないのだが、魅せ方が違うので感動も違う。
ホテルの特色が違うので同じ温泉地であっても複数行く人の気持ちも理解出来る。
次は硫黄系に行ってみたいものだと思う。
途中、昨晩感じた視線のようなものを何度か感じたが、振り返っても誰もいない。
あれは気のせいだったのだろうか。
それかホラーの類だろうか。だとしたら怖い。
日帰り温泉を巡る途中の渓流とその先に見える紅葉がとても和やかで、本当に心が洗われるようだ。
スピリチュアルヒーリングだっけか。そういうのもなんとなく理解出来るような気がする。
自然の中では人間は無力だ。無力だからこそ、有力になろうと努力する事が出来る。
また、明日もがんばろうという気になってくる。
実際平日に戻り仕事に出る時になると、億劫になったりするのは別の話だ。
「本当に和むな。自然のパワーみたいなのを感じるよ。」
素直な言葉が出てくる。
「またこうして旅行したいな。」
続けて俺は言葉を紡いだ。
「そうだね。次は雪見露天とかも良いよね。2月に大内宿の雪まつりとか、湯西川温泉の雪祭りとかも良いかも。」
ともえもそれに続けてくれた。
その時の笑顔は水流と紅葉と太陽の光で美化されているのもあるが、かけがえのないもののように心に吸い込まれていった。
「湯野上温泉は日本唯一の茅葺屋根の駅舎だしな。」
たまには民宿も悪くない。砂風呂のある民宿もあるが、残念ながら現在は採算が合わないという理由から冬季はやっていない。
会津鉄道と言えば「大川まあや」や「ノラとと」のコラボ、芦ノ牧温泉駅のねこ達が有名だなと思った。
最近では鬼怒川ではあまり雪が降らなくなってきている。
トンネルくぐって山を超えた湯西川より北にいかないと雪見露天はあまり期待できなくなっていた。
SLも走ってるので下今市から鬼怒川温泉間だけSLに乗るのも良いかも、とこの時は思った。
あれもこれもと行けるだけのお金と休みが取れるかどうかが問題だとも思った。
喜多方の熱塩温泉や若松の東山温泉も……ってキリがないと思ったが、いつかは温泉廻りして余生を過ごすのも悪くないと感じていた。
群馬といえば今来ている宝川温泉や猿ヶ京温泉もだけど、草津や水上、伊香保なんかが有名であるけれど、わたらせ渓谷鉄道もあるし、桐生には砂風呂もある。
デトックスという意味では砂風呂のある桐生の湯ららだったんだけど閉鎖してたっけ。リニューアルオープンしたさらさも半年で閉鎖って見た記憶がある。
まぁ北関東だけでも飽きる程あるという事なんだけど、出来るだけ多くの温泉に入るのは一つの夢ではある。
いずれ子供達と大勢で行く事があるのだろうか。稼がないとな……
ホテルに戻り、明日の帰宅に備えて荷物の整理をする。
お土産は……実家と数人の友人と会社は大人数用の40個入りとかの饅頭を買ってある。
そういえば伝統工芸とかの体験もしてみたかったと今になって少し後悔をしている。
やはり一度の旅行であれもこれもは欲張り過ぎなのかもしれない。
そう遠くもないのだし、また来れないわけでもない。次の機会への楽しみにしておけば良い事か。
すぐそこは新潟・長野と思えば随分移動しているなとも思える。
新幹線は偉大だ、1時間と少しで都会の喧騒から離れてこれだけの素晴らしい自然と巡り合えるのだから。
最後の夕飯も群馬尽くしといった感じだった。
有名シェフじゃなくても充分美味い。何万もかけて食べなくても充分満たされる。
なんならコンビニスイーツだって充分に美味い。
上州牛うめーパート2、単純にこんな感想が出てくる。
赤城牛と増田和牛も食べ比べている、どれも甲乙つけ難い美味さだった。
友人達にも群馬良いとこ一度はおいで、と言いたくなる。
下ネタネギだけじゃねーぞ。じゃない、下仁田ネギだけじゃねーぞーと言いたい。
最終日の今日はもう一度露天を15分ずつくらいにわけて廻り、最後に60分マッサージを受けた。
あちこち張っていてパンパンだねとマッサージ師のおばちゃんに言われた。
おばちゃんにあちこち押されて少し反応してしまったのは内緒だ。
尻肉とか大分凝っていたとかで入念に押されたりぐりぐりされたりした。
太腿や脹脛も同様だった。今日一日歩き回った事を考えれば納得せざるを得ない。
部屋に戻ったら最後だからと部屋の露天にともえと一緒に入り、少しだけハッスルした。
翌朝、朝食を食べ10時のチェックアウトと共にホテルを後にした。
楽しかったプチ温泉旅行は終わりを告げた。
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後書きです。
芦ノ牧温泉駅のマスコット、昨年クリスマスに生まれた猫(雌)の名前募集に作者は応募しました。
もちろん「カレン」で応募しました。外れました。年輩男性の応募した「さくら」に決定しました。
ん?わしも年輩に入るのか??
まだ片足の指少しだけだと思いたい。
真秋はともえを通してクズ野郎と兄弟になってる事をまだ知りません。
温かい目で見守ってください。
古畑任三郎のように先に結果がわかってるので、ぐだぐだになってないと思いますが。
これ物語前半の決別式や暴露宴の事がなければ、ともえが何してるかまったくわかりませんよね。
クズ野郎の影は出してましたが、本当にともえがクズ野郎と何をしていたかは触れてません。
まぁどうせみんなわかってるでしょうけど。
真秋とクズ野郎の嫁はこの旅行でそれぞれの相手が密会している事を知りません。
これから3ヶ月後、例の産婦人科の件となります。
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