第13話 異変
中々寝付けなかったが俺が部屋に戻ってから体感で30分くらいすると、部屋の鍵穴から音が聞こえた。
いくつか温泉もあるし、別の露天にいたのだろうと思い気にはしていなかった。
15時~10時までやっている露天と24~5時は清掃中のような露天も、このホテルに限らずあるために必ずしも選択肢が広がり、同じ露天にいるという事もない。
同じ露天にいたらどうだったという問題もあるだろうけれど。
俺達もさっき見かけたカップルのような事はしないだろうが、いちゃいちゃくらいはしたかも知れない。
そうするとあまりあのカップルを悪くは言えないかもしれなかった。
身体を洗わずにいきなり湯船に浸かる輩もいるのだ、気にしすぎなのだろうか。
いや、汚れたまま入るのはだめだろう。
あなたは家でも同じようにいきなり湯船に浸かるんですか?と問うてみたくなる。
来客がそれをやっても平気なんですか?とも問うてみたくなる。
部活で汗だくになっていて、腹痛で風呂に入る直前に大量ピーピー状態でトイレに籠った人がいきなり湯船に入っても許容できるのですか?と。
極論かも知れないし脱線かも知れないけど、公共や共通、共同で利用する事に関してもう少し周囲の事を考えられないと他人に説教など出来るはずもない。
隣の布団にやってきたともえは枕元のメモ帳をテーブルに置き、そのまま布団に入っていった。
先程のメモ帳、俺は読んではいるが手に取ったり位置をずらしたりはしていない。
ともえの中では俺はずっと寝ていたものとでも思われているだろう。
微妙ではあるが温泉で温まった熱気と、石鹸類の匂いがうっすらと伝わってきた。
中々寝付けない。温泉に来たのだから浸かる事は悪い事ではない。
気持ち良さそうに寝ているのだから、起こすのも悪いと思ってこっそり一人で浸かりに行く事が悪いとは思わない。
仮にメモがなくても、トイレか温泉に浸かりに行っているんだろうなとは思うだろうけどその程度だ。
寝付けずにいると、ふとともえが寄って来て身体が密着してくる。
そのまま俺の布団に手を滑り込ませ、そのまま身体に触れてくる。
「今朝は寝てても反応してたんだけどな。」
しかし俺の意識は未だ覚醒しているものの、不思議と身体の覚醒はなかった。
夜の静寂とともえの手による布の擦れる音だけが耳に残った。
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