第16話 クリスマスイヴは性夜らしい

 あっという間にクリスマスはやってくる。

 正確には12月24日。本当のクリスマスは日付が変わってからである。

 仕事が終わると急いで作業着からスーツに着替える。

 同僚にデートか?と揶揄われるが、「その通り!俺、そろそろ結婚を申し込もうと思うんだ。」と答えた。

 その同僚からは、そういうフラグは立てない方が良いぞと言われる。


 ラノベの読み過ぎだと返してやった。


 19時までは15分余裕を持って到着する事が出来た。

 夏に仕事で迷惑をかけたのだから、冬まで迷惑をかけたくはない。

 出来る限りの早さで待ち合わせ場所に到着出来た。


 ともえはすでに到着していた。

 話を聞くと10分も待っていないらしい。

 真偽はともかく、あまり待たせていないならそれに越したことはない。

 この時期は寒いし油断すると風邪を引いたりしてしまう。


 入場券を購入し早速中に入る。


 冷えた身体を温めるために温かい飲み物を購入しイルミネーションを堪能する。

 入ってすぐから色々装飾されているので、動物公園内であればどこでも見る事が出来る。


 歩いているとともえから手を繋いできた。

 久しぶりの事なので妙に新鮮だった。どきどきの感覚が付き合い初めの高校生カップルかよと思った。


 そのままアトラクションを楽しんでいく。

 手を繋いだままのジェットコースターは余計に怖かった。

 

 いくつかのアトラクションを楽しんだあと、観覧車に乗った。 

 外装とライトがピンク色だった。


 最初向かい合わせで座っていたのだけれど、半分くらいの高さまで来たところでともえが隣に座ってきた。

 そしてそのまま身体を密着し預けてくる。


 「なんか安心する。」


 「そっか、それは良かった。俺もともえの体温を感じると安心する。」


 その言葉が火を点けてしまったのかもしれない。

 ともえの手が身体に触れてくる。


 「ちょ、流石にここではまずいだろ。」


 そう言う俺の口をともえの口が塞いできた。


 「ちゅぱっ」

 観覧車はロマンチックなのよと分けの分からない事を言っている。


 「大丈夫だよ、暗いし。それに前は昼間に同じ事したじゃない。」


 確かに高校の時にそういう事があったけれど、そういう問題でもない。


 「今日は性なる夜だよ?流石に最後まではここでは無理だけどこれくらいは大丈夫だよ。」


 誰が巧い事を言えと言った?

 

 結局、そのまま頂点を通り過ぎ、2時の角度に来る頃には果てていた。


 「ごちそうさまでした。」


 「おそまつさまでした。」

 なんのコントだ。俺が美味しくいただかれてしまっただけではないか。

 懐かしかったけど。


 「大丈夫だよ、同じことしてるカップル他にもいるってきっと。」

 こういうのは普通男が言いそうなセリフなんだけれど。

 高校時代はもう少し大人しいというかおしとやかな感じだったんだけど、いつの間にかエロエロになったんだな。


 その後は今度は寝静まる前に動物園を見回るが、やはり既に就寝している動物も多く半分くらいしか見る事は叶わなかった。

 ホワイトタイガーなんて垂れて寝ているだけだった。

 たれぱんだならぬ、たれたいがーだな。


 公園部分で再びイルミネーションのライトアップを椅子に座って二人で眺める。


 周囲のカップル達から流れるオーラもあったのかもしれない。

 幻想的な風景が後押ししたのかもしれない。


 「なぁ。」


 「なぁに?」


 「俺達そろそろ結婚を視野に考えても良いんじゃないかなって思うんだ。」


 「うん、それで?」


 「俺と、結婚してください。」



 暫く考えたともえは。


 「よろこんで!」


 ともえはどこぞの居酒屋のような返事をしてきた。照れ隠しなのだろう。

 この時の泣き笑いは、いつになっても忘れない気がしていた。


  


 この後、帰りに偶然見つけたステーキ屋で夕飯を取り、特別な日だからとまだ開店していたケーキ屋でケーキを買って帰宅した。


 さっさと風呂に入り、ケーキとともえを美味しくいただいた。

 日付が変わる瞬間は繋がっていた。


 ひと月振りに見るともえの身体の異変に気付いていた。

 少しお腹が大きいように感じたのだ。


 ともえはさっき肉を食べ過ぎたからだよと言っていたが、俺は少し気になっていた。


 だから俺は美味しくいただきはしたが、念のため無理な体勢や覆いかぶさるような事は出来なかった。


 そして飲み物を取りにいったともえの「やっべ」という声は聞こえなかった。



―――――――――――――――――――――――――


 後書きです。


 クリスマスと初詣は一緒にするべきか悩みました。



 だってあとは産婦人科イベント一直線ですからね。

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