第11話 宝川温泉というか猿ヶ京温泉というか。(過去編)
10月末、ともえと一緒に群馬の宝◯温泉へとプチ旅行へと向かった。
仕事が忙しくて恋人らしい事は全然出来なかった3ヶ月弱、疲れてはいたがこれを耐えきれば元に戻れる。
それまでの分も含めて思いっきり恋人関係を満喫するぞと思っていた。
寂しい想いをさせていたと同時に、自分もまた寂しかったのだ。
身体は疲れているのに癒しがない。
自分がそうだという事は当然ともえも同じに決まっている。程度の差こそはあれど同じだと思う。
仕事で逃げれている分、実は自分の方がマシだったのではないかとさえ思っている。
だからこのプチ旅行は二人が思いっきり楽しめるようにと思って前から行こうとして中々行けなかった温泉と決めたのだ。
疲れが完全に抜けているわけでもないし電車移動にした。
電車には電車、車には車の良さがある。運転に集中しなくていい分個人的には電車の方が好きだった。
温泉宿の近くにはスキー場がある。
このスキー場のおかげか、スキーやスノーボードで遊んだ若者達が近くの温泉宿に宿泊するのは必然ともいえる。
だから冬場はそんな若者達が宿泊するので、混浴温泉はガチ混浴となる。
紅葉時期はどちらかというと年配や家族の方が多いけれど。
宿泊したホテルの混浴露天風呂は「子宝の湯」といった。
流石に誰もが使う湯船で致す事はしないけれど、俺もともえもそろそろ将来を考えても良い頃だと思っていた。
そう、少なくとも考えていた。
10月ではまだ少ないかなと思っていた紅葉は、思っていたよりも色付いており、紅葉スポットに行かなくてもそれなりに楽しめた。
都会の喧騒に慣れ親しんだ自分達には、とても眩しく清らかに感じていた。
この時見たともえの表情もとても和やかに見えていた。
その様子と紅葉とで、短時間で一気に癒されてきた、そう感じていた。
ホテルに着くと部屋に荷物を置き、まずは真っ先に混浴風呂へ。
湯編み着を着用するため、実際ガチといってもスパリゾートの温泉版という感じである。
箱根のユネ◯サンを想像してみるとわかり易いかもしれない。
それでもひと昔前はどちらも湯浴みなどなかったし、10年くらい前には女性だけ湯あみ着だったりという時期もあったという。
チェックインしていきなり温泉に向かう客が少ないのか、一番乗りだった。
渓谷・渓流沿いのため、流れる川を間近に見ながらの露天風呂は混浴とかを引いても、風流であり風情を感じ心が癒されるのを感じた。
もちろん、やらしい行為は流石に出来ないがちょっとしたいちゃいちゃはしてりまう。
どちらからともなく伸びた手は互いの身体に触れて、少し気分が高揚してきてしまう。
これが子宝の湯マジックかとさえ感じさせた。
中途半端に高ぶってしまったため、部屋に戻ると……
奮発した部屋に露天風呂がついてるお高いプランなので、そこなら良いだろうと楽しんでしまった。
遊園地のような施設や観光スポットは今度で良いから、今回は露天と食事を奮発しようとともえが言い出したのでこういったプランとなっている。
観光地を出歩くより、ホテルの温泉と美味い食事がメインのため、時間を忘れてハッスルしていた。
これまでの時間を埋めるかのように互いに避妊もせずハッスルしていた。
旅行をする前にともえには伝えていた。
色々あったけれど、そろそろ将来に向けて前向きに考えている事を。
だからこそ今のバカップル的な行動も嫌がらずに肯定して欲しい。
部屋備え付けといっても、ベランダに露天風呂があるので暗くなってくると冷えてくる。
それでも温泉の湯温と、互いが繋がり密着している事で、寒く感じる事はなかった。
対面で繋がりそのまま抱き着き合い、温泉に浸かる。
バカップル以外の何物でもない。
次にこの部屋を使う人の時にはお湯は全て入れ替わるので問題は……多分ない。
男の人なら一度くらいは湯船での経験があると思う。
あれの酷いバージョンである。
あの3ヶ月の間では自◯すら殆どしていない。
久しぶりの解放感くらいはきっと偉い人も赦してくれると思う。
食事の時間になると従業員が、順に運んでくる。
こういうホテルの料理はどこでも美味いものだけれど、この3ヶ月の事を考えると本当に生きてて良かったと思える程の感動を覚えた。
上州牛うめぇ。
語彙力をなくし、ただ美味いという言葉と鼻の頭辺りの込み上げてくる温かいモノが、食事による感動と倖せを実感する。
それは俺もともえも同じだった。
食事を終えると残りの露天を楽しみに浸かりにいった。
女性用の露天が一つあるのでともえはそっちっへ行くと言って行ってしまう。
俺は同じ風呂でも昼と夜で感じが違うのを知っているし、再び子宝の湯へと入った。
流石にカップルや家族連れ、果てはこれ飲み屋のママと従業員と客達だろうというグループもいた。
川を眺めていると、ふと若い一人の女性客を見かけた。
髪をまとめ上げているためみんな同じに見えてしまうが、どこかで見たことがあるような女性だ。
とはいえ互いに目を合わせるわけでもなく、湯あみ着を着用しているとはいえじっと見るのは失礼と思い、それ以上気には留めなかったけれど。
1時間程浸かり、明治のコーヒー牛乳を片手を腰に添えて一気飲みをし、備え付けの湯上り処で少し涼み、部屋に戻るとともえはまだ戻っていなかった。
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後書きです。
もうしばらく旅行編を我慢してください。
タネは蒔いてます、3重の意味で。
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