第8話 クズの異議あり!! そして科学鑑定を見忘れたたぁ言わせねぇぜ!!

 「異議あり!!」

 目線をそちらへ向けると、件の問題児クズ野郎事喜納貴志だった。


 「おぉっとぉ、会社側の意見が出た後はぁ、件の被疑者からの異議の申し立てです。もちろん質問・応答は全員に資格がございますのでどうぞ。」



 先程まで震えていたと思えば、妙に堂々としているクズ野郎喜納貴志。


 何か逆転の糸口でも見つけたのか?

 

 「これまでの事で俺が安堂ともえと関係を持っていたり。将来一緒になろうとしている所は出てきているが、俺の子という証拠が出ていない。」

 「会話の中でそれらしい事は出ていたが、俺の子だという科学的証拠はどこにもないではないか。つまり俺はお前を、こんな茶番を仕組んだお前達を名誉棄損で訴える事だって……」


 そこまで言いかけたところで、俺は今日一番の睨みを喜納に向けた。

 温度が3度くらい急激に下がったと言われても信じられるだろう。


 「自分から素直に白状して謝罪の一つも(お前の嫁さんに)していればこの先は出すつもりはなかったんだけどな。」


 「ともえもな、不貞云々はともかく、子供に対しては真剣だったようで色々検査してたんだよ。」

 「出産前検査というのがあってな。病気の有無や死産の検査、NIPT検査とか……まぁ細かい事は後で自分で調べてくれ。」


 「ともかくそういった検査の結果というものが病院にはあってだな。抑もそのNITP検査が凡そ妊娠中期、大体20週頃に受けるのが一般的と言われている。」


 「俺が妊娠3ヶ月と聞かされた直後に受けたこの検査、日付が合わないよね。だいたい20週という事は約5ヶ月。」

 「この検査結果に掛かれている検査日の文字が読めるかな?妊娠21週てあるよね?3ヶ月直後というなら12週+αくらいじゃないとおかしいよね。」


 「約8週のズレが抑々おかしいのはわかるよね。しかし、仕事が忙しくてともえとの夜がなかっただったという話は第三者にはどうでも良い事だよね。」

 「本当にしてたかしてないかは当人同士しかわからない事なんだから。」



 そう言って逆算してこの日前後が着床日だろうという日のラブホの映像写真を前後1週間に渡って掲示する。


 「まずはこの辺で行っていた行為のどこかで着床したという推測は良い?」

 ほぼ毎日である。約20日程の中で15日も同じホテルに入っていれば、避妊していなければ妊娠しても不思議はない。



 「それでともえが行った出産前検査やらの事で思い立ったんだよ。今の時代は便利でね、調べたらあったよ、出生前DNA親子鑑定てやつが。」


 「ヤホーでも検索出来るから見てみると良いよ。妊娠6週目から胎児の血液が母体を流れるという事はさっきも言った出産前検査の中で知った事なんだけどな。」



 「まぁ同じようにその中の胎児の情報をDNAから読み取る事で病気や遺伝子の欠損なんかを調べるわけだけど、これって親子鑑定にも使えるんだよ。」



 「母体となる血液は子供の検査のためといってともえが普通に提供してくれたしな。」


 「2012年以降は3倍の感度になったとかで、現在では妊娠7週目から可能らしいぞ。つまり3ヶ月だろうと5ヶ月だろうと検査は可能という事だ。」


 そこで俺は検査結果の紙を画面に映し出す。


 「俺との親子関係……父権肯定確率……0%ですって。じゃぁ血縁関係を肯定する際の検査基準である99.99%以上が出るのは誰だろうな。」

 「ちなみに9割のケースで父権肯定確率が99.9999999%以上らしいぞ。」


 「これは件のホテルの人に協力してもらったよ。部屋に残された体液と毛髪を根こそぎ集めてな。」


 もしかするとあいつらの前に利用した人の毛髪が採取される場合もあるため、何本も採取してもらった。

 もちろん毛根のない毛もあったが、そんなこと問わずに採取してもらった。


 「毛に限ればな、ともえのもあるかもしれないし、前の利用者のも混じっている可能性もゼロではい。たくさん採取して鑑定してもらった。もう俺も意地だったしな。」



 「流石の喜納も妊娠中の子宮に精液をぶっかける趣味はなかったのか、アナルセックスする趣味がなかったのか、ゴムを使ってたみたいだからな。精液という良いDNAも採取できたし。」


 「そんなこんなで鑑定した結果が……じゃかじゃん!」

 

 なんでも鑑定団のように言ってみたのだがウケはあまりよくないようだ。

 真面目な場なのにまたしらけてしまったようだ。



 「父権肯定確率:99.99999999と出てますよ。」


 「おうおうおう!揚げ足とって言い逃れしようとしてもぉ、あっ。この科学鑑定を忘れたとは……言わせねぇぜ!」


 桜吹雪の人よろしく決めてみた俺だったが、どうやらまたしらけたらしい。


 しかし当の喜納は口をぽかーんと開けてガクガクと足を震わせていた。

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