第2話 協力者


 この会場の中に俺の味方が数人いる。

 結婚式会場に勤める者、新米ではあるが警察官、司法試験に合格して間もないため、まだ自分の事務所を持っているわけではないが有名な弁護士事務所に勤める者。

 同じく医者、看護師、いくつもラブホテルを経営する社長の息子、と数人の同級生が最初は現状を知らず情報を提供してくれた。


 状況証拠が揃うと俺は彼らを味方に引き入れるために全てを暴露した。

 彼女とも学生時代友人だったため、最初は渋ったが証拠の中の一つであるあいつが関与している事がわかると全員味方になってくれた。


 あいつというのが、ともえのお腹の中にいる子の本当の父親の事なのだが、こいつがまた学生時代から女癖が悪く、上級生同級生下級生関係なく関係を持っていた。

 二股三股が原因で別れたなんて話はしょっちゅうだった。

 それでも本命に対する関係だけは本物だったようで、超クズ野郎と言われるところをクズ野郎で済んでいた状態だ。

 その彼女もよく平気だなと思うだろうが、二人は幼少の頃からの幼馴染で、昔から女子と仲良くなるのが得意だったから諦めていたと。

 

 それでも常に自分を一番に見てくれるからまだ許せると周囲には言っていた。

 事実、この二人は20歳の時結婚した。

 それ以降は女癖の話は聞いていない。彼女と結婚し、子供が生まれた事で改心したのだろう程度にしか思っていなかった。

 卒業しても地元が一緒なため、そういった話は学校関係を中心に回ってくるのだから嘘ではなかったのだろう。


 それなのに、なぜともえがこいつと関係を持ったのかは知らないが、ともえにとっては俺よりもこいつを愛しているのは事実。

 

 そうでなければ相談くらいしているはずである。

 もし、何かの理由で強姦なりその場の勢いで行為をしてしまったのだとしても……

 元々避妊するなり、万一出来ちゃったとしても相談くらいするはずだ。

 あたかも俺との子供が出来たかのような振る舞いなどしないはずだ。


 こんなこと相談出来ない?

 抑々、DNA鑑定はともかく血液の時点でバレるというものだ。

 彼女はOOのO型、あいつも話を聞く限りOOのO型、つまりは生まれてくる子はO型しかありえない。


 俺はOOのO型とA型の両親から生まれているのでAOのA型である。

 生まれてくる子がA型であれば俺の子という事になるのだが、それはありえない。


 理由はこの後説明……というより暴露する事になるのだがありえないのだ。

 一つあるとすれば、俺が出した精液を何らかの方法で保存し毎月のように人工授精をしていた場合に限るが、そんな事素人に出来るはずもない。

 事実上ありえないが成り立つ。


 誓いのキスは……最後の手向けとして甘んじて受けてやった。

 これが最期の触れ合いとして。


 決別式という偽りの結婚式を終え、次はホテル側の会場で披露宴となる。

 この披露宴は別名を暴露宴とも言う。 

  

 俺の恨みと悲しみを受けとると良い。

 愛が憎に変わった時、俺の頭にはこの腐れ女にどう引導を渡してやろうかという事だけを考え生きてきた。

 資金が必要だからと進んで残業にも身を焦がした。


 協力者に金銭のやり取りがあると将来良くないかも知れないという事で金銭のやりとりはしていない。

 彼ら彼女らには、美味い飯を奢る程度にしている。

 その程度で協力してくれるのは、彼ら彼女らもまた、あいつによって高校時代煮え湯を飲まされてきたからである。


 さぁ、決別式からの暴露宴へと足を踏み入れるか。

 

 こんな時でも見た目だけは綺麗で可愛く見えるともえだが……

 この後どんな顔をするんだろうな。

 それと式から参加しているあいつも……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る