第1007話 アルテーラ勢力争い再び

アルテーラ王国の南西の半島にあるガンドリオの港町、そしてその付近の漁村では、ドラセム侯爵家の魔術師団長ティアーヌ以下、魔術師団員が主に海中の魔物の退治に励んでいた。

元々はAランク魔物である巨大蛸クラーケンの噂にもとづいて支援に来たのであるが、Bランクの海蛇シーサーペント、Cランクの魔サメなどの話も聞く。そして海岸沿いではDランクEランクの魚介類の魔物による被害を目の当たりにした。


それらの情報は、討伐依頼の話をしてきたアルテーラの第3王子ダニエーレ、そのお付きの騎士爵タカマーノには伝えてあり、彼ら経由で海軍に伝わっているはずであるが、この半島に海軍の増援があった話は無い。

「被害が深刻と思われていないのか、ドラセム家への意趣返しなのか」

「我々なら怪我も無いまま魔物退治を続けられるから、冒険者ギルドからの討伐報酬もあるし、家臣団の訓練にもなるから特に困らないのだけれどね。それよりも漁師など住民が生活に困窮しているのを放置するのはどうなのかしらね」

「タカマーノ騎士爵達はなんて?」

「はい、最近勢いの落ちている海軍閥の第2王子が、穏健派の第1王子との勢力争いのネタにしようとしている可能性を懸念していました」

「え?海の魔物の討伐が上手くいかないと海軍の失態ではないの?」

「それが、第1王子を推す文官達の支援の不手際だと騒ぎ立てているそうで。単なる難癖に聞こえるのですが、いまだに勢力が一番強い海軍閥の話なので……」

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