第1003話 ガーライト海賊事情2

港で声をかけて来た商人はレンツィオと名乗る。ガーライト王国とその東部のガリバイ王国の間で少なくなった通商をしているが、最近は扱う商品が減って困っているという。

「なんか怪しくないか?」

「そうね、商品って密貿易か密入国の手引きって感じがするわね。でもこちらも渡りに船よね」

と、ハリーとサラは怪しさを認識した上でガリバイ王国への渡航を依頼する。


待ち合わせも何故か夜中に、しかも港町から少し離れた海岸であった。そこへサラ、ハリー、ミーナの3人だけで向かう。一応それっぽいそこそこの大きさの商船であり、それに乗せて貰うことになった。

「ハリー様、こんな若くて綺麗な女性2人とは、何か訳ありなんでしょうね?」

「余計なことは聞かなくて良い。これで良いか?」

「はい、結構でございますよ。立派なお部屋をご用意させていただきます。船旅をお楽しみ下さいませ」

約束より多めの貨幣を渡してレンツィオの口を閉じさせる。もちろんそれも演技ではある。


舌が贅沢になった3人は差し入れられた食事では満足できず、こっそり魔法の袋にしまっていた食事と交換した以外は特に問題はなく二日目の夜を迎える。

「来たみたいね。ガリバイ王国の領海に入った途端ね」

風精霊ジョステルを見張りにしていたサラが他の船の接近に気づく。その後、船の速度がゆっくりとなり最後には停船してからざわついた雰囲気の後、船室のドアがノックされる。ハリーがサラとミーナを後ろに匿う素振りで対応する。

「ハリー様、申し訳ありませんがお三方お揃いで出て来て貰えないでしょうか」

レンツィオの案内に従い甲板まで付いていくと、期待通り海賊らしき者たちが待ち構えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る