第967話 皇弟ホルストフ
ロイヒェン伯爵との交渉に進展を見出せないと判断した皇帝アウレアス達は判断を下す。
「ドラセム卿、ここへ≪転移≫してください」
地図を指し示しながらサラに依頼してくる。
土地勘が無いところであり、一度上空に転移して場所を確認した上で、その大きな街の中心の城の手前に皇帝達を≪転移≫する。
城門で将軍が交渉して一悶着あったが、迎えの馬車がすぐに用意されて中に進む。サラ達も護衛と同じ扱いで、皇帝達とは別の馬車に乗り城の中心に進む。
「ホルストフ、久しぶりだな」
「まさか本物であったとはな。場を改めよう」
謁見室で奥に着座していたのは皇弟ホルストフであった。いくら争っている相手とはいえ、兄であり一応皇帝になっている者に対して謁見室で見下ろした対応をするのは気がひけるのであろう。何かの瑕疵になりえることも踏まえて、対等な対話ができる会議室に案内するつもりの発言と思われる。
「いや、時間がないので、ここで良い」
「まさか席をかわれというのか?」
「繰り返しだが時間が無いからこのままで良い」
「いったいどうしたというのだ?」
ロイヒェン伯爵領でアンデッドが氾濫していて、軍の派遣が必要な規模であること、伯爵は皇弟への忠義のため素直に支援を受け入れる気配が無いこと、このままで領民の命がますます消えて行くことを手短に説明するアウレアスと、唸りながら聞くホルストフ。
「いつからかまともに顔を見て会話をすることをしなくなった我も悪かった。しかし今は領民の命を優先して、軍の派遣をして欲しい。また国軍の派遣も受け入れて欲しい」
「は、今さらだろう。兄上のやり方は気に入らないのだ」
「しかし」
「話は最後まで聞け。我らがご先祖様から受け継いだ領民の命は魔物なんぞにくれてやるほど安くはなく、他国の軍に助けられるほど我が国の軍は弱くない!」
脇に控えていた部下に対して「緊急軍議だ!将兵を緊急招集!」と言いつけて、
「今度こそ場所を改めるぞ」
と告げる。
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