第968話 皇弟ホルストフ2
皇弟ホルストフが皇帝アウレアスと話すために用意された会議室は対談するための長方形で向き合う形ではなく、まさに軍議をするために頭を寄せ合う円形であった。
「そこの銀髪の女、銀龍なのであろう?一番状況を把握しているのであれば、説明をしろ」
口調は乱暴でありハリーとティアーヌの表情も曇るが、優先順位を認識していることはわかったのでサラは素直に状況を説明する。
ロイヒェン伯爵領の森での被害状況、いくつかの村が全滅したこと、3つの街が夜に襲われること、街に到達しているのはスケルトンやゾンビであり城壁により持ち堪えていること、北西部が魔物達の発生源と思われることなど、事実と推測をそれぞれ区別して説明する。
「ふむ。ではどうすれば良いと考えるのだ?」
「大人数の軍勢でこれ以上の被害を防ぐための防衛網を構築、その包囲網を縮めて行き、発生源を絶つのが一般的と思われます。皆様を≪転移≫でお運びするお手伝いはさせていただけます。ただ、私たちには上空を移動する能力もありますので、森の焼き払いを許可頂けるのであれば発生源の特定を早めることが出来るのと、アンデッドが昼間に隠れる日陰を減らせることで、街や村への被害を減らせると考えます」
「将兵の運搬は素直に頼もう。広大な森の焼き払いはその後の領民の生活にも影響が心配だ。短絡的な全面焼き払いではなく、一部だけで効率的に実施する方法を考えろ」
ハリー達の表情は無視したホルストフはアウレアスに顔を向けて、
「で、そちらはどれだけの兵を用意できるのだ?街に送り込んだ以外に」
と互いに用意する兵数を話し合い、効率的な包囲網の設置をするための拠点、そして≪転移≫の送り先などの議論を開始している。
「ティアーヌ、一度皆のところに戻って、ドラゴンやワイバーンなど控えにも準備をさせるのと合わせて、効率的な一部分だけの焼き払いについて議論を進めておいて。また帝国軍を≪転移≫させるときに皆を呼ぶから」
「かしこまりました」
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