第921話 領主任命2
「ドラセム卿には良い部下がおる。領地運営もきっと上手くやってくれるのであろう」
「宰相閣下、どういうことでしょうか」
「まぁドラセム卿は領地よりも魔導書の閲覧の方が嬉しかったのだと思うのだが、色々とあったのだよ」
「お伺いできるということでしょうか」
「全部とは言わないが、そのために主な家臣達にも来て貰ったのだ」
まず領地は想像しているであろうが、元々ターフルダ侯爵領であった土地である。かなり力を持っていた侯爵であったので、その領地をそのままではなく分割して複数の貴族に統治させる案がもともと有力であった。その方向で領主代行も段取りを進めていた。
しかし、先日の閲兵式でドラセム家の力を知った貴族達が、王都の喉元にあんな巨大な勢力を置いておくのか、更にどんどん力を増しているらしいではないか、となった。そう、ドラセム家の代官地である副都のことである。魔の森を開拓し代官地を広げて行っていることも懸念されたようである。そこで、王都から離れた土地の領主にして、代官地は取り上げるような声が出てきたのだ。
ただ、あれだけ開発が進んだ代官地を取り上げるにも、その対価に相応しい程の領地はなかなか無い。元々のターフルダ侯爵領から得られる収入すら、あの代官地から得られる収入に匹敵しないだろうからな。
そこで、代官地の開発をこれ以上進めない代わりに領地運営に力を注ぐように、というのが落とし所とされた。
「ドラセム卿にとってはあまり喜ぶ褒美でないことは認識の上だが、貴族の義務と思って欲しい。以前に代官地から海まで川を太くして船をと希望して却下になった件、今度は自領内では好きに開発をできるということを励みに頑張って欲しい」
流石に全てが全ては言えないが、と宰相は過去の議論を頭の中で思い出す。
正直、ドラセム卿のことを分かっていない既存価値観の奴ら、領地持ち貴族が一番偉いという固定概念の奴らの発想である。代官地を取り上げると言うことで、他国に行かれたり謀反を起こされたりすることも想像できない奴らである。
今のサラが反逆というのは想像しづらいが、子孫になると分からない。それを食い止めるためには、子供が生まれたら王家と結婚させる案も出た。元々第3王子をサラに婿入りさせることを言っていた奴らの発想である。そんな強制をしたら他国に逃げられると説得したところなのに、懲りない奴等である。
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