第861話 獅子身中の虫3
「実はもう一つ悪い噂がありまして。ノイハイム伯爵のところに帝国関係者が出入りしているという話なのです」
「え?敵対する相手じゃないの?」
「それが、いまだに帝国でも皇弟派は政権奪還を狙っているらしく、コルマノン王国側でも宰相のような穏健路線である主流派とは異なる、武闘派と手を組もうとしているとか。ただしそれ自体も噂ですし、単純にノイハイム伯爵と不仲な者が悪意ででっち上げた話である可能性も」
「嫌だね、貴族様のドロドロした話は・・・」
「そういうハリーも新進気鋭の侯爵様の従士長様だからね」
相変わらずリリーに注意されるハリーだが、サラも似たような感想である。
「それでも、もし本当であればまさに獅子身中の虫で、何とかしないとまた辺境の実家あたりが危ない目に合うかも」
宰相に再度面談を申し込み、これらの話を伝える。
「貴族間の噂も入手できるようになったのだな。関心関心。そう、確かに不穏な噂があるのだが、似たような話はたくさんあっていちいち取り上げていたら切りが無いし人手も足らない。もし本当であり、尻尾をつかんだのならドラセム卿に執行人になって貰うとするかな」
「いえ、そのような・・・我々ができる範囲での調査にはご協力させて頂きます」
「まぁ頼んだぞ」
サラは家臣団の皆と相談し、元帝国軍人が中心の第1騎士隊を何組かの冒険者パーティーとして、ターフルダ侯爵領に派遣することにした。連絡が取りやすいように精霊を≪召喚≫できる、悪魔教団の本拠地に居た元幹部である魔術師団員も各パーティーに分散して追加する。
また、トリストフたち元暗殺者メンバも魔術師団員と近衛騎士隊員を適当に混ぜて、王都内でのノイハイム伯爵、ハーフルダ男爵、イトリーザ男爵を中心としたターフルダ侯爵一派の情報収集組と、レーベルク帝国の帝都タウバッハでの皇弟派の情報収集組に分かれる。
ドラセム商会の面々には引き続きのノイハイム伯爵、ハーフルダ男爵、イトリーザ男爵の調査だけでなく、ターフルダ侯爵一派に調査範囲を広げて貰う。
残りの騎士隊は、従士団が急に減ったと思わせないために、代官地の巡回や王都ダンジョンの攻略などに励んでもらう。
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