第830話 モンブール海賊疑惑
サラが好きな魔法等に打ち込めていた平和な時間が終わりを告げる。
恐れていた、ガーライト王国の私掠船と思われる海賊船が、コルマノン王国の西の端、モンブールの街付近に現れたと言うのである。
この街自体は軍港もある港町でありつつ、アルテーラ王国の手前の街であるため、東でのレーベルク帝国の手前のロワイヤンのように城壁が高く立派な城門がある城塞都市である。
そのためモンブールの街自体を攻められたわけではないが、この付近を航行中の商船が襲われたというのである。
モンブールの街に近い、アルテーラ王国の港町バスキにある水精霊シルビーの祠に捧げられた手紙からの情報である。
急ぎ登城して宰相にその情報を伝えるが、もちろんその情報は未入手のようであった。
「ドラセム卿、さっそくモンブールに行き、詳細を確認して欲しい」
「かしこまりました」
サラは仲間たちと相談し、まずはいつものように冒険パーティーの6人とトリストフたち元暗殺者ギルドの6人で向かうことにした。トリストフたちは諜報活動のためである。
残りの者たちは何かあったときに出動できる心づもりはしておきながら、日帰りならダンジョン攻略や魔の森での狩りは通常通り推奨しておく。
まずは≪転移≫のための拠点やドラセム商会の店舗もあるバスキに飛ぶ。モンブールは以前にアルテーラ王国へ行ったときに通りはしたが、拠点も無いのと、今回連絡をくれたのはバスキの家臣だったのもある。
この港町バスキはアルテーラ王国の第2の規模の都市でもあり、コルマノン王国向けの最前線基地としての軍港もある侯爵領の領都である。以前の盗賊騒ぎのときの報酬額があまりに少なく、冒険者ギルドの職員からもケチと言われていた領主である。
バスキではドラセム商会の職員、そしていつも親密なミケラルド商会の職員、そして冒険者ギルドに聞き込みを行いつつ、トリストフたちには酒場などにおいても情報収集を行う。
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