第825話 神級魔法2

「ドラセム卿、とんでもないことをやってくれたな」

王国第1騎士団長である第2王子から呼び出しを受けて登城すると、いきなりこの発言である。

「なんのことでしょうか?」

「とぼけるな。腕を欠損したから引退していた元騎士団員の腕を再生してくれたそうではないか」

「あぁ、はい」

「宰相から、神級の魔法回復薬を作れるようになったとは聞いていたが、今回は回復薬ではなく魔法であったというのは本当か」

「はい」

「それがどれほどのことか分かっていないようだな。王国第1騎士団は、団員が平民であるゆえに王国のために大怪我をしてもわずかな年金を与えて退役させるしかなかった。事務能力がある奴は内勤にしてやれたのだが、そういう奴は少なくてな。きっと生活に困っているというのも分かっていたのだが。今回の神国での魔物討伐はそれほどでなかったが、以前の帝国との戦争などではたくさん発生していたのだ。報酬は俺が個人的に払うから、治してやって貰えないか」

「かしこまりました」

「本当にいいのか。神級回復薬と違って魔法ならば魔力が回復さえすれば、何度でも治せるのだよな」

「まぁそうですが、報酬はなくて良いですよ。算出が難しいですし」

「では、回復すれば再雇用するから、せめて今後払う予定であった傷病年金だけでも手間代として受け取ってくれ」


サラは自身の練習にもなるので、結局30人近くの大怪我による退役者を回復させることになった。当然、神級魔法は膨大な魔力を消費するので、魔力回復のために神級の魔力回復薬を飲みながら治癒を行う。神級の傷回復薬をそのまま使用するのと変わらないと言われるかもしれないが、サラの≪神回復≫の貴重な練習にはなるので、その手段を続ける。


神級魔法に慣れることができたおかげで、サラは水属性魔法の≪洪水≫もそれっぽいところまで習得できるようになった。水の近くであればそれを使用することで規模も大きくできることも確認できた。

≪神回復≫や≪洪水≫については、後は繰り返しの訓練による習熟となるが、他の神級魔法の習得に弾みがつくきっかけとなった。

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