第809話 不穏噂2
ガーライト王国がアルメルス神国と休戦したことにより、私掠船の襲撃先が無くなっていることを告げる国王アルミーノ。
「もちろん、次の狙い先としてはガーライト王国の東や南を目指すように指示している。新興国が気に入らないらしく、このコリサ大陸には神国以外にもガーライト王国の戦争相手は居るからな」
「でしたら、その私掠という“仕事”にあぶれることは無いということですか?」
「それがなぁ、東や南には既に別の私掠船も居るから“食い扶持”が減るという争いもあるだろうし、慣れた場所から離れるのが嫌な奴もいるだろうなぁ」
「では、隠れて本当の海賊に身をやつした可能性も?」
「それもあり得るが、それはリスクが高いな。このコリサ大陸では顔が知られてしまっているし、寄港できる場所は限られるのに対して、神国との戦争が無くなって余裕が出るのはガーライト王国の本物海軍もアルメルス神国の海軍も、だからな」
「ではどこに?」
「奴らのほとんどであるガレー船では、帆船と違って大陸間の海を渡るのは難しいのだが、もしかすると・・・コルマノン王国などのあるユノワ大陸に行った可能性もあるかもな。言っては何だが、アルテーラ王国以外の海軍は弱っちいからな。海賊をやっても食っていけるとたかをくくって、大陸間の渡海に挑戦した可能性もあるな」
余りありがたい推測でも無いので、王都ワーズに戻り宰相ジョエリー・ヤンクシオにもその旨を報告しておく。
「まずいな。ガーライト王国が言うように、特にコルマノン王国はコリサ大陸と近い上に海軍が弱い。ただ、ドラセム卿のお陰でガレー船を入手したことや今回の神国騒動の立役者であるドラセム卿が居る我が国を狙わない可能性もあるな。レーベルク帝国とアルテーラ王国、一応アルメルス神国にも情報を伝えておいてくれ」
宰相の指示に従い、帝国皇帝アウレリウスや神国教皇アルヴィスに伝えるとそれぞれ「情報に感謝する。警戒するようにする」と返事を貰う。
アルテーラ王国では縁の深い第3王子ダニエーレとそのお付きのエドガルド騎士爵に情報を伝えると「隠れる島々が多いのは確かだが、わざわざ大陸でも海軍が一番強い我が国に来るだろうか。第2王子の海軍閥に伝えると誇りを傷つけたとか面倒なので、第1王子あたりに上手く伝えておく」とのことだった。
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