第802話 侯爵誕生パーティー3

「あ、騎士団長、抜け駆けは駄目ですよ」

そう言って近寄って来たのは王国魔術師団長ブロワール・レデリクス。こちらは騎士団長より何かと縁があり親しくして貰っているので少しだけホッとする。

「抜け駆けとは心外な。何も話しておらんぞ」

「ならば、ご一緒に、でよろしいでしょうか」

「いったい何事でしょうか?」

「実は、今回の神国騒動で騎士団の活躍した者たちが騎士爵に叙爵されてな。そなたのお陰だ」

「いえ、私は自分勝手に動いただけで。それよりも、おめでとうございます。魔術師団の方でも叙爵、陞爵(しょうしゃく)された方がいらっしゃると、先日お邪魔した折にお伺いましたね」

「何だ、抜け駆けはお前の方か?」

「いえ、私だって何も伝えておりませんよ」

「ですから、何ですか?」

「騎士爵になると決めるものがあっただろう?もう忘れたかな?家名、紋章、そして寄親だ。その寄親にドラセム侯爵を希望するという者が多くてな。受付期限は越えているのだが、寄親側本人の了承は取れていないであろう、きっと」

「はい、まったくの初耳でした」

「法衣でも上級貴族であれば寄親になれるが、無役での寄親というのはほぼ無いらしい」

「で、だ。寄親をする以外に、副団長にならないか?という誘いを騎士団も魔術師団も狙っているのだ」

宰相が、どちらでも許容、と言ったのはこれのことか、とため息が出そうになるが、王子、団長たちの前でそんな失礼なことはできない。


「もしですが、私がどちらかの副団長になると、私の従士団は今までの第2騎士団所属ではなくなるのですよね?」

「前例としては。魔術師団長や副団長は歴代ともそれ程の従士が居ないため、役職付きの間は本人のみ魔術師団に所属でした。団員でも、魔法使いの従士はほぼいないので本人のみ参戦が多いです。寄子も当主が魔法使いなら魔術師団に、そうでなければ第2騎士団で」

「王子が担う近衛騎士団長、第1騎士団長に従士団は居なく、近衛と第1の副団長も王族ばかりのため同様だ。第2騎士団の団長や副団長は従士団も第2騎士団であるな」

「ドラセム家の従士である騎士団や魔術師団が抜けて、第2騎士団長の公爵にご迷惑をおかけするわけにはいかないかと」

「「うぅむ」」

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