第800話 侯爵誕生パーティー
神国から帰国しても慌ただしい日々を過ごしている中で、サラの19歳の誕生日になる。
侯爵当主の誕生日であり、盛大なパーティーを開くように家宰のローデットから話を聞いている。
一昨年は内々だけで、昨年はできるだけ知り合いだけで、とパーティーの規模は抑えてきたが、今回は各国にまで名前を高めて来て侯爵になった後の誕生日である、と諦めるように言われる。思い出せば、昨年は友人フェルールの嫁ぎ先に魔物退治に行くきっかけにもなったパーティーであった。
かといって、あまりに自由参加にすると、家臣団への売り込みや国王の意向も無視しての婚姻相手の紹介だけでなく、単に知己を得たいという挨拶だけで切りが無くなることも想定される。新進気鋭の冒険者から成り上がった貴族、今や侯爵であるサラであるので、当然にそういう者が増えるだけでなく、妬みや僻(ひが)みからの嫌がらせもあり得る。
また、侯爵らしい盛大なパーティーを行える屋敷の広さは、王都内には無い。代官地の屋敷は広いが、来賓をそこまで案内するのも気が引ける。
そこで、王都の本宅で呼べる範囲という制約のもと、元々縁があった相手だけ、それでも昨年よりは多くの王侯貴族やミケラルド商会、アッズーラ姉妹や孤児院運営の神殿などに案内状を出す。
始めて貴族になったとき寄親になってくれたヴァーヴ侯爵は王都に居るタイミングでは無かったが、案内を出すことで代理として嫡子が来てくれており、引き立てのお陰で侯爵までなったお礼を伝える。誕生日プレゼントとしての魔法に関する考察本を、領都サイユに住んでいる師匠エミリーに預けられていたお礼もしっかりと伝える。さすがに元の寄親であり、招待が無くても成長株の寄子だったサラの誕生日は忘れていないようである。
魔術学校の同級生でもあったフェルール、ディアリスやアリアンヌたちもそれぞれ本人だけでなく実家や嫁ぎ先が来てくれている。特にフェルールの嫁ぎ先のヴィリアン侯爵、実家のヴェシン伯爵は昨年の魔物退治のお礼もあり、王都に居るタイミングでは無かったのに、この日を目掛けて本人自らが参加して当時のお礼を述べられる。神国騒動でも活躍したドラセム侯爵との縁を深くするという貴族としての企みもあるのであろう。
ちなみに、父や兄たちも美味しい食事をエサに≪転移≫で連れてきたが、想像通り裏に隠れて家族だけ、たまにサラの仲間たちとだけで食事をしている。せっかくそれらしい衣装を用意して着て貰ったのに、まぁ自分も気持ちは理解できると苦笑いのサラであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます